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SIDE-A


さっきまで自分の部屋でのっちといたくせに、
私はこうして時間通りゆかちゃんの部屋に来てしまう。


私は一体どうしたいの。
二人の仲を引き裂きたいとか、そういうことじゃない。
第一、二人の仲なんてあって無かったような脆いもので。
じゃあどうしたいの。
きっと答えはふと言ってしまったさっきの独り言の中にある。


『いつまで続けるの…』


それは無意識の独り言。
自分の声で何を言っているのか気づいた。
ゆかちゃんとの関係も、のっちとの関係も。
今では惰性となって受け流すような二つの関係。
特に、こんな関係を求めるゆかちゃんも、
こんな関係に甘える自分も、だんだん許せなくなってきた。
このままじゃ、いけない。
私は、そろそろ決心しなくちゃいけない。








相変わらずゆかちゃんは甘えるように抱き着いて、私の胸に顔を埋めている。
サラサラな髪を撫でながら、私はタイミングを計っていた。


「ねぇ…」
「ん…?」
「あ〜ちゃんはどうしてゆかのこと抱かないの?」


ゆかちゃんが顔を上げて私を見つめる。
縋るような目はあの日ののっちと重なった。


「抱いてくれてもいいのに」


今までの私なら、この言葉でゆかちゃんを抱いてしまっていたかもしれない。
でも今日は違う。


「ゆか、あ〜ちゃんの気持ち知ってるよ」


ゆかちゃんは狡い。
でも自分だって十分狡い。
この関係を利用なんかしてなかったと言えば嘘になる。


「ゆかちゃん、あ〜ちゃんはね…好きだから、抱かないんだよ」
「え…?」
「…もう止めにしよう」


「こんなこと、お互い辛くなるだけだよ」
「そんなこと…」


ゆかちゃんが私に言い返そうとして言葉に詰まる。
ゆかちゃんも、やっぱり辛いんだ。


「ゆかちゃん言ったよね…愛のないエッチは虚しいって」
「…」
「エッチはしてないけど、やってることはゆかちゃんも同じだよ…。」
「あ〜ちゃん…」
「ゆかちゃんはただ、甘えたいだけ。
のっちと向き合わずに、中途半端な関係に甘えたいだけ。」
「あ〜ちゃんは…ゆかが現実から逃げてるって言いたいの?」
「ゆかちゃんだけじゃない。あ〜ちゃんも逃げてる。」


ゆかちゃんの腕を解く。


「大好きなゆかちゃんをのっちにとられるのが嫌だった…
だからゆかちゃんに必要とされるのが嬉しかった。
例えゆかちゃんが振り向いてくれないってわかってても、
その時だけはあ〜ちゃんを見てくれたから。」




「お互い甘えてちゃ、駄目だよ。」


自分にも言い聞かせるように、そう言った。
部屋を出ようと立ち上がると、ゆかちゃんが俯いたまま私を呼び止めた。


「ねぇ」


「のっちの浮気相手、あ〜ちゃんでしょ?」


今にも泣きだしそうな声。
私はそれを背中で聞く。
返事はしなかった。


「ゆかも最低だけど…あ〜ちゃんも最低だね。」


その言葉を聞いて、ドアを閉めた。






部屋を出たのはいつもより大分早かった。
まだ日も変わっていない。
終電まだあるかも。
そう思って私は駅に向かって走った。



もう会えない訳でもない。
後悔もしていない。
ゆかちゃんの最後に言った言葉は明らかに私を批難する言葉で、それは当然のことだと思える。
なのに涙が溢れてくるのは、
まだゆかちゃんの温かさがここに残ってるからかな。







つづく









最終更新:2009年05月25日 22:13