あたし達くらいの年齢は、一般的に見れば恋多き年頃で間違ってないはず。
それはあたし達三人にも勿論当てはまるわけで、仕事が終わって三人で話すのは、恋バナが半分以上。

でも、あたし達三人の間では、あまり深く話はしない。
その上ゆかちゃんは、基本的にはあたしとのっちの抱く疑問に、解答を与えてくれる、恋の先生的存在。


そんなゆかちゃんが、あたしなんかに話があるんじゃ、それは相当だ。


「あ〜ちゃんの好きな人って、どんな人?」
「え?どんな?…う〜ん。まぁ、優しい?」
ゆかちゃんが、少し笑う。
愁いを帯びたその表情は、なんだかすごく大人っぽい。

「じゃあ、結構仲良い人なんだね?」
「…う〜ん。まぁ良いっちゃ良いけど…なんで?」
「優しい。なんて、ある程度付き合いがなきゃ思えないよ。仕事付き合いで、外面優しい、ってのじゃ、好きにはならないし」


あぁ、なるほど。納得しちゃったよ。

ほんとに色々と分かってらっしゃる。
あたしになんか恋の相談しても、なんも意味ないんじゃない?


てか、なんかあたししどろもどろで焦っちゃって。
のっちが好きなんだ、なんて…
隠しておいた方が良いよね?多分。



「ゆかは、今まで結構色んな人とお付き合いしてきたけど、今回はちょっと勝手が違うの」
「うん」
「……女の人をね、好きになっちゃったの。あ〜ちゃんはどう思う?気持ち悪い?ヒク?」
あたしは静かに首を振る。
どう思うもなにも、あたしも一緒だ。
カミングアウトできるなんて、勇気あるな。
だから、あたしだったのかな?小さな頃からの、付き合いだから。
「最初は自分でも信じられなくてね。どうかしてる、って」


その気持ちも、良く分かる。


「いつもなら、自分がおかしくなる前に、ちゃんとブレーキが効くの。今までどんな人に恋をしてもそうだった。冷静に考えて、やめとこうって、簡単に諦めがついてた」


ゆかちゃんは、少しずつ息苦しそうになる。
表情は見えないけど、瞳が僅かに光を揺らし始めた。


「でも今回は無理なの。気付いてからは、どんどん気持ちが溢れてきて…。隠すのは苦しくて辛くて、おかしくなっちゃってる」


その瞳で、強く見つめられた。


「ひとつ聞いてもいい?」
「うん」
「あ〜ちゃんが好きなのって、のっちじゃない?」


心臓が、大きく跳ねた。







最終更新:2009年05月25日 22:51