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サイドN


『辛いなら横になれば?』
うん。とだけ頷いてベッドに体をあずけた。
——かしゆかは?かしゆかはどうするの?


『何かほしいもの、ある?』
ない。とだけ答えて左腕で顔を覆った。
——かしゆかは?かしゆかはあるの?


——ギシッ——


足元のベッドがきしむ音がする。
視界をさえぎっているこの左腕をどかさなくてもわかる。


『もうちょっとだけ・・・いい?』
うん。とだけ頷いて少し体をずらした。
——かしゆかは?かしゆかはここでいいの?


『なんか変・・・かな?』
いや。とだけ答えて両腕で顔を覆った。
——かしゆかは?かしゆかはどうしたいの?


自分の中で何度も何度も
思い返し、考えてみても、
やっぱり『曖昧』な答えしかでないよ。




サイドK


うん。
ない。
うん。
いや。


たったそれだけ。
たったそれだけの返事。


なのに、
なのにどうして
こんなにも胸が焼けるんだろう?


のっちは?のっちはどう?
ベッドの上で、
両腕で顔を覆って動かないでいる。
のっちは?のっちはどう?
少しだけ体をずらしてくれたベッドの足元で、
私は何も出来ずに座っていた。


平行に
平衡している関係が
疎ましく思えた。


いくら時間を重ねても交わらない
私とのっちは平行だったはず。
いくら時間が離れても崩れない
私とのっちの平衡があったはず。


“はず”なんて。
断言できない平行で平衡な関係。
私たちはその時
『曖昧』でしかない時間を過ごしてた。




サイドN


——ギシッ——
距離をつめる音。
距離が近い温度。


——ギシッ——
距離が近い音。
距離を感じない温度。


『のっち。』
少し泣きそうな声。

『のっち?』
少し不安そうな声。

『変?』
顔を覆っていた右腕を引き剥がされた。

『変・・・だよね?』
顔を覆っていた左腕も引き剥がされた。


『のっち?』
まるで“目をあけて”の呪文みたい。

『のっち。』
まるで“こっちを見て”の呪文みたい。


あやつられるように目をあけた。


『どうすればいい?』


あぁ、ほらまた呪文が聞こえた。




サイドK


——ギシッ——
距離をつめる音。
距離が近い温度。


——ギシッ——
距離が近い音。
距離を感じない温度。


『のっち。』
反応がない。

『のっち?』
ぴくりともしない。

『変?』
右腕を掴んで引き剥がす。

『変・・・だよね?』
左腕も引き剥がす。


『のっち?』
目をあけて?少しでいいから。
この感情が嘘だと思わせて?

『のっち。』
こっちを見て?少しでいいから。
“何馬鹿なこと”って
この感情を否定して?


まるで魔法にかかったみたいに
目をあけたのっちを見たら、
“嘘じゃなかった”と
確信にかわる。


『どうすればいい?』


だけどまだ怖いから、
私はあなたに委ねたの。


『どうしようか?』


返ってきたのは『曖昧』な返事。







最終更新:2009年05月25日 23:05