ふわふわ、ゆらゆら、
柔らかくてキレイな、、だけど真っ暗で冷たくて、、でもやっぱり穏やかでやさしい。
そんな空気が漂う不思議な夢を見ていた。
誰かが髪を優しく掬うように梳いてくれている。
そんな風にあたしに触れてくれる人を、あたしは2人知っている。
ゆっくり目を開けると、穏やかに微笑むあ〜ちゃんの顔があった。
ああ、そうか。
たしか図書館であ〜ちゃんを待ってて、、いつの間にか寝ちゃってたんだ。
「待たせてごめんね。実習終わったけぇ」
学科の違うあ〜ちゃんと大学内で会えるのは、学食か週に一回の空き時間くらい。
だから、なるべく予定のない日は一緒に帰ることにしている。
付き合い始めてからは当たり前のこと。
待たされるのなんて大嫌いなのに、あ〜ちゃんだけは特別。
あ〜ちゃんは尽くあたしの中の常識を覆していく。
「キスで起こしてくれても良かったのに」
眠たい目をこじ開けて、わざとイジワルに微笑みかけてみたのは、寝顔を見られてた恥ずかしさから。
そう言えば、彼女の好きな歌にそんなタイトルがあったな、なんて思った。
「ばっ、、」
「ふふ、可愛いーw」
周りに誰もいないのを確認して。
真っ赤になったあ〜ちゃんを引き寄せ、唇を重ねた。
初めてあ〜ちゃんにキスしたのも、こんな図書館の片隅だったっけ?
高校生の頃、委員会の用事で遅くなったあたしをあ〜ちゃんがテスト勉強をしながら図書館で待っていてくれた。
テスト期間中で、いつもみたいに校庭から部活をしている子たちの声も聞こえてこない静かな校舎の一番端。
西日の差し込む図書館で机に伏せて眠ってるあ〜ちゃんの横顔は思わず見とれてしまうほど、キレイで美しかった。
誘われるように、そっと重ねた唇。
ぷるぷるで柔らかくて、惑わされそうなくらい甘くて。
だけど、自分のしてしまった行動に驚いて、慌てて、身体を離した。
キスをすること自体初めてなんかじゃないのに、ひどく身体が熱くなったのを覚えている。
−×−×−×−×−×−
あの時から、だ。
彼女の存在が身体に染み付いて離れなくなったのは。
重なり合った唇。
いつだって、彼女とのキスは優しい。
いっそ、そこから、粘土みたいにどろどろに溶けて一つになってしまえればいいのに。
そして、ろくろの上でくるくる回されて、何時間も灼熱に晒されて中まで固くなれば、朽ちることもなくなるの?
−×−×−×−×−×−
手を繋ぎながら、駅からあ〜ちゃんの家までの道のりを歩く。
ファミレスでごはんを食べながら、だらだらと喋っていたから、辺りはすっかり真っ暗だ。
「新しいワンピース可愛いねw」
今日のあ〜ちゃんは花柄が散りばめられたワンピースに薄いニットのボレロでどこかのお嬢様みたい。
みたい、というか、あながち間違ってもないけれど。
お嬢様、ってわけじゃないけど、育ちの良い子だと思う。
あ〜ちゃんの家族は優しいけど、厳しいところはちゃんと厳しい。
門限は22時。
外泊は月に一回まで。
そんなお年頃の女の子なら反発するような約束。
だけど、あ〜ちゃんもそれに反発するでもなく、嫌々従ってるってわけでもないから、バランスの取れた家族なんだと思う。
なにより、あ〜ちゃんが家族に愛され、愛してることが外から見ててもよく分かる。
だから、それすらも羨ましく思うんだ。
頻繁にお泊りできない代わりにあ〜ちゃんちに泊まればいいよ、って言ってくれるけど、
さすがにそんなに迷惑はかけられないから、あ〜ちゃんちで終電ギリギリまで過ごすか、門限までにあ〜ちゃんを送り届けて帰るって感じ。
「ってか、ゆかちゃんも危ないけぇ」
なんてあ〜ちゃんは言うけど、
「いーの。送るってね、もう少し一緒にいたいって意味と一緒なんだから」
どこかで読んだ少女漫画の受け売りを口にして、あ〜ちゃんの顔を覗き込めば、照れたように少し逸らされたっけ。
まったく、可愛いったらありゃしない。
それに、あ〜ちゃんを日の落ちた時間に一人で出歩かせるわけにはいかないからね。
って、ゆかも十分過保護かも?
今までの付き合いを考えれば、笑っちゃうほど健全。
だけど、それでいいの。
だって、あ〜ちゃんのことは大切にしたい。
あたしにとって一番大切な子だから。
「ねぇ、ゆかちゃん、来週の日曜日空いとる・・・?」
「ん?なんかあったっけ?」
「え、、あ、、なんもないけぇ、、なんでも」
「ふふ、うっそw分かっとるよ、ちゃんとw」
「うぅ、、ゆかちゃん、イジワルじゃ」
「どっか行きたいとこある?」
「ん〜・・・・っと、、」
来週は、付き合って半年の記念日。
こんな大切な日、ゆかが忘れるわけないじゃろ?
「イチゴ狩り!」
そう言って、くしゃっと無邪気に笑う彼女の笑顔に自然と頬が緩むのが分かった。
どうして、こんなにも穏やかな気持ちにさせてくれるんだろう。
あ〜ちゃんといる時だけは、あたしも穏やかで優しい人になれる気がするんだ。
やっぱり、彼女はあたしの世界に色を与えてくれる。
きっと、あ〜ちゃんがいなきゃ、あたしは色のない世界でたくさんのものを見失ってたに違いない。
でもさ、
一番ってなぁに?
だって、あたし、のっちのことも好きで、必要で、大切だよ。
あ〜ちゃんも、のっちも、
二人とも、あたしにとって、ナンバーワンでオンリーワン。
ねぇ、これっておかしいこと?
だけど、
この気持ちだけは、作りものじゃないでしょ?
to be continued...
最終更新:2009年05月25日 23:11