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サイドK


『大丈夫です!』
無理してるのばればれ。
どんだけゆかがのっちのこと見てると思っとるんよ。
だけど、
触れてほしくないかのような珍しい大声に、
本能的に茶化すことを選んだ。


大学一年の冬。
のっちたちにとっては
大変な大学三年の冬。
進級すれば当たり前に四年になる。
どんどん忙しくなる。
多分本当は、
今でも三年生は忙しいんだろうけど。


のっちはいつも隣にいてくれる。
私に合わせて授業もとってくれるし、
バイトの時間も合わせてくれる。
大学でも、
バイトでも、
いつも迎えにきてくれる。のっちは優しくて、
のっちは本当に優しくて、
もう絶対に離れたくなかった。
離れられなかった。




秋ごろに一度だけ、
いつもの時間、いつもの場所、
バイト先にのっちが迎えにこなくて、
珍しく私から迎えに行ったことがあった。
行き違わないように二人で決めた道を歩いて。


角を曲がればのっちのバイト先が見えてくる。
——と、その前の公園でのっちを見つけた。
“なんで?”
不思議に思ったけど、
夜空を見上げる横顔がオレンジ色の街灯に照らされて、
いつか見た“窓から差し込む夕焼けにライトアップされた顔”とリンクして、
また呼吸困難になりそうだった。


『どーしたのー?』
綺麗な横顔に声をかけると、
一瞬驚いて肩がピクッてなった。
『えっ!あ、あれ?ゆか?』
『ふふっw何よ?ゆかだよw』
『うわぁ、、ごめん。
迎え、、間に合わんかったかぁ、、。』
悔しそうに頭をガシガシしてるのっちが可愛くて、
『もぉ!ちゃんと迎えにきてくれなきゃ・・・嫌だよ?』
とびっきりの上目遣いで甘えてみた。




のっちの目が揺れる。
『う、うん。ごめん。』
『・・・どうしたの?』
『ん?』
『なんか・・・変?』
『いや!なんもない、よ?
ごめんね?帰ろ。』
そう言って手をとって歩きだしたのっち。
——何を考えてるの?不安になるよ?


『浮気ですかー?w』
わざとおどけてみせた。
『ふっwまさか。』
うん。大丈夫だ。冷静。


『ちゃんとゆかの側にいてくれなきゃ・・・嫌だよ?』
念には念を、ね?
大丈夫でしょ?
『・・・うん。』
——のっち?何?その、間、、。


不安になった私は後ろから抱きついた。
『嫌だよ。のっちぃ。いなくなんないで・・・。』
のっちの肩がピクッと揺れる。
『ゆかのことだけ・・・好きでいて?』
のっちの体が反転して、
私を強く抱き締めた。
『大丈夫だよ。のっちがゆか以外とか、ありえんもん。
絶対ありえん。』
力強いその言葉と腕に包み込まれ、
安心を与えられた。
まるで子供に言い聞かせるように優しく低い声が響いた。
『だから、、何があっても、、、ゆかが好きだよ。』


その日からのっちは一度も迎えに遅れなかった。
以前より、
もっともっと好きになってくれたんだと、
何も知らない私は、
そんなふうに思ってたんだ。







最終更新:2009年05月30日 22:13