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送信しました、の文字が携帯の画面に浮かんだ。
「…はぁ、」

そよぐ夜の風は生温くて、少し欝陶しいくらいに肌に纏わり付く。
そういえば夏はもう近いんだっけ、なんてぼんやり頭に浮かぶ。


カサカサ、紙切れを広げるとそこには彼女のものだろう携帯の番号とメールアドレス。
それから彼女の名前が可愛らしい字で書かれていた。

「……ゆか、ちゃん」
唇から不意に漏れた彼女の名前はどこか熱を帯びていて、言葉にした自分自身で驚いてしまった。



あのバーでの時間はまるで、夢のようで。ともすれば道で立ちすくむ今も、明日になれば忘れてしまっているかのようで。

でも、彼女は。
彼女だけがやけにリアリティで。

小さく笑って、甘い声で。


「……」
ぎゅ、と携帯を握りしめる。

きっとさっき送ったメールはもう届いているはず。
彼女は、来るんだろうか。
…あたしは、何をしてるの?
彼女に会って、何がしたいの?


分からない。
分からないけど、彼女にもう一度会いたい気がした。
もう一度、あの声を聞いてみたいと思った。


『あのバーの向かいのビルの前で待ってます』


彼女は、本当に来るの?


そよぐ風は生温い。
欝陶しいくらいに、肌に纏わり付く。
「はぁ…」
「待ち合わせしてるのに、溜め息ついてちゃだめでしょ」
「ひゃ!?」
突然背後から聞こえたあの甘い声。

「せっかくラーメン諦めてまで来たのに」

そう言って、彼女はバーでの時と同じように小さく笑った。


  • 続く-






最終更新:2009年05月30日 22:56