サイドK
それはまるで
“ちょっとコンビニ行ってくるね!”
くらいの身軽さで、
だけど
繋いだ手のひらからジンワリ伝わる汗が
本当なんだと教えてくれた。
『もう前にね、誘われてたんだ。一緒に、働こうって、、』
少ない言葉でも、
バイト先に就職が決まったことくらいゆかにはわかる。
『すぐに言いだせなくてごめん。だけど、もう決めたんだ。』
冷静に話すのっちの横顔。
肩は少し震えていて、
手のひらから汗が伝わる。
『そっか。就職決まったんだね?』
こんなわかりきったことしか言えなかった。
『うん。勝手に決めた。ごめん。』
“でももう決めたんだ”
って、その懍とした横顔を見ればわかる。
『そっか。よかった、じゃん!』
声、、裏返っちゃった、、。
あれ?
おかしいな?
なんだろ?
冷たい、、、。
あ、ゆか、、
泣いてるんだ、、。
『ごめん。』
何度も謝るくせに、
“もう決めた”
その揺るぎない決心
『ごめん。』
なら、何度も謝らないでよ。
『違っ!違うんよ。応援してる!
ゆかね、、すっごい嬉しいんよ?
のっちが、うん、、仕事決まって、、
だけどさ、、なんか、、
急に、出ちゃった・・・涙。
なんでだろう、、ね、、、。』
最後の方は声がかすれて
のっちには届かなかったかな?
優しい指先で私の頬を
何度も何度も撫でてくれるのに、
この優しい指先も
“遠いとこにいっちゃうのかぁ”
なんて考えて。
優しく優しく抱き締められても、
このぬくもりも
“どっかいっちゃうのかぁ”
なんて思って、、。
『ゆか?』
低い声が響く。
けれど、この声だって、、、
『大人になるから。』
この声だって、、、
『のっち、大人になるから。
猛スピードでなるから。
ゆか一人くらい片手で支えられるくらい、
大人になるから。』
この声はなくならないで、、。
『だから、、終わりになんて、しないよ?
会えないからって、別れるなんて無理だよ?』
なくしたくない。
うん。ゆかだって無理だよ。
涙が止まらないよ、のっち。
『必ず迎えに来るから。
だから、待ってて、、?
・・・ちがう。
待ってろ。』
うん。
わかってるよ、のっち。
迎えに来るのがあなたの役目なら、
ひたすら待つのが私の役目。
だもんね。
待つ以外に、
他に何をすればいいのか
わかんないもん。
待つよ。
『・・・うん。ずっと待ってる』
それしか答えはないじゃない。
別れるなんて、
もう絶対に無理だもん。
わかってる。
わかってるよ。
わかってるんだよ、のっち。
でも涙は止まんないよ。
だって、
止め方忘れちゃったみたい。
止まんないよ。
確証は?
のっちが必ず戻ってくるって
確証はどこよ、、。
『のっち、、』
『ん?』
『もっと、、ぎゅって、して・・・』
『うん。』
骨がきしむくらいに抱き締めてて。
いっそこのままバラバラになってもいいくらいに、
この腕のぬくもりが
私の体から消えないように、
強く強く
抱き締めてて。
私の心に植えつけて?
そしたら私は
会えない夜だって
毎日毎日水をやるの。
そしたらあなたの横顔みたいに
綺麗な花が咲く?
そしたら心からは離れない?
心からは、
離れないで、のっち、、。
だから今は、
今だけは、、、
強く抱き締めてて。
涙、止まるまで、、。
『のっち、、』
『ん?』
『愛してるよ・・・。』
最終更新:2009年05月30日 23:03