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自分の気持ち伝えただけで満足してちゃ駄目だ。
あ〜ちゃんがのっちのことどう思ってんのか、なんとしても聞き出さんと。

でもさっき電話で「時々は2人で会いたい」って言ってくれたし、今だってゆかちゃんとのことで嫉妬?してくれてたっぽいし。
こんなに身体密着させてくるし…これは脈アリって思ってもいいんだよね?


「あ…のさ?」
「うん?」
「あ〜ちゃんの気持ちまだ聞いてないんじゃけど…」
「気持ち?」
「ぁ…いや、だからあ〜ちゃんはのっちのことどう思ってんのかなって」

のっちの胸に埋めていた顔を上げ、あ〜ちゃんは心底呆れたって表情を見せる。

「それ本気で言っとるん?」
「え?だってまだ聞いとらんけぇ」
「あんたはどんだけ鈍いんよ!」
「へっ?」

俯いて溜め息を吐くあ〜ちゃん。
やばっ、なんかマズいこと言っちゃったかな…。





あ〜ちゃんはしばらく下を向いたまま黙っていた。
また怒らせちゃったのかな。
余りもの怒りからか、髪の間から覗く耳も真っ赤だし…。

「のっち…目、瞑って」
バッと勢いよく顔を上げたかと思うと、おもむろにそう呟くあ〜ちゃん。

「えぇ?な、なんで?」
「いいから瞑るぅ!」
「っひゃい!!」
どんな意図があるのかはわからないけど、とりあえず言われた通りにする。

「あたしがいいって言うまで開けちゃいけんよ」
「うん…」
あ〜ちゃんに強く言われると条件反射みたいに従ってしまうんじゃよね。
ああ…悲しいかな。
ヘタレわんこなのっちは飼い主あ〜ちゃんに尻尾振って機嫌直してもらうしかないんだ。
いや、こんなツンツンあ〜ちゃんも大好きだし、怒られてる時でさえ幸せを感じるんだけども。
…やっぱのっちって変態ドMわんこですか、そうですか。





目を閉じてから数十秒。
依然あ〜ちゃんは黙ったままで。
耳に入ってくるのは電車がホームに到着するというアナウンスとその電車が近付く音だけだ。


いまどんな表情をしているの?
何を考えてるの?
ちゃんと今のっちの前におるよね?
もしや、まさかの放置プレイとか…今来た電車に乗ってっちゃったとか?
ねぇあ〜ちゃん、なんか喋ってくれんと不安じゃよ…。

「あ〜ちゃ、」
微妙な沈黙に堪えきれなくなって、薄く目を開こうとした瞬間…両肩に少しの重みを感じたのとほぼ同時に唇に柔らかい感触。
それと共に鼻腔をくすぐる、甘く、やわらかな香り。
視界を開くと、瞼を閉じたあ〜ちゃんがそこにいて。
それはもう、とても近い距離に。

ああ、やっぱ睫長いよなぁ。
閉じられた瞼から伸びる睫がつくる影が、なんだか儚くて…綺麗。
何時間でも眺めていたいくらい、本当に綺麗だ。

でもあ〜ちゃん。
これいくらなんでも近過ぎじゃない?
てか唇に触れてるこの気持ちよくて柔らかいものはなんだ?


え———


そっと唇が離れる。既に開けていた目をパチクリとさせていたら、ゆっくりと開かれたあ〜ちゃんの視線と重なった。

「あっ。なんでもう目ぇ開けとるんよ!信じられん!!」
最悪じゃわ…とか言いながら顔を真っ赤にして涙目で訴えかけてくる。




ああ、もう。
なんでそんな可愛いんよ。
のっち我慢できんくなるけぇ。

あ〜ちゃんの肩を引き寄せ、ギュッと抱き締めた。

「ちょっ、なにしよん!離しんさい!」

あ〜ちゃんはのっちの腕の中を逃れようとバタバタもがいてる。

「嫌じゃけ、離さん」
「離してってば」
「じゃあもっかいキスしてくれたらいいよ」
「もぉ…あほ!変態!」
「キス強請るんが変態なん?じゃあ自分からキスしてくるあ〜ちゃんだって相当変態じゃない?w」

意地悪く笑うと、「もうほんまに知らんっ!」って下を向いて、また顔を見えなくされてしまった。

「ごめん、調子乗りすぎました」
「……」
「そんな怒らんとこっち向いてよ〜」
「……」

目を合わせてくれたキミは、真っ赤になった頬を膨らませて何ともふてくされたような表情。
怒った顔がこんなに可愛い子って他にいるだろうか?
いや、いないね。
あ〜ちゃんが一番可愛い。
あ、でもゆかちゃんの怒ってる表情もかなり可愛いんじゃよね〜。
い…いや、でもやっぱあ〜ちゃんが一番だな、うん!

「ごめんね?でもさっきのがあ〜ちゃんの気持ちって考えてもいいんだよね?」
「…あ〜ちゃんは好きでもない人にあんなことせん」

うわぁ、なにそれなにそれ!
そんなこと言っちゃっていいん!?
のっちもうウハウハだよ!?
興奮し過ぎて尻尾千切れちゃうよっ!!?
てか自分でもなに言ってるのかわかんなくなってきたよ!!


「のっち」
「はいっ?」
「ニヤニヤせんでよ…キモいから」

もうなんとでも仰ってくらさい。
そりゃこんなデレあ〜ちゃん目の前にしたら口元も緩くなっちゃうって。

予定とはだいぶ変わっちゃったけど、最高にデレなあ〜ちゃん見れてのっち幸せだなぁ。
これもひとえにゆか様仏様のおかげじゃね!





ねぇ、あ〜ちゃん。
のっちはね、なんでも言葉にしないと不安なんよ。
じゃけぇ何度でも言うよ。

「あ〜ちゃん」

しつこいって思われるかもしれんし、馬鹿の一つ覚えみたいに聞こえるかもしれんけど

「可愛い」
「大好きだよ」

これがのっちの気持ちだから。
ちゃんと伝わってるよね?

「…もぅ…知っとるけぇ……ばか」
「へへっ、だよね」

リンゴよりも真っ赤に染まったあ〜ちゃんの頬に両手を添える。
あ〜ちゃんが目を閉じたのを合図に、今度はのっちからキスをした。





(終わり)







最終更新:2009年05月30日 23:07