学祭の翌日。
朝、上履きに履き替える為に自分の下駄箱を開けた。
そしたら一枚の封筒が入ってた。
封を開けると、淡いピンク色の便箋が入っていた。
『西脇先輩へ
今日、学祭の片づけが終わったら、屋上まで来てください』
って、書いてあった。
これを読んですぐに「こりゃ、告白されるな」って思った。
無視するのも悪いから、反省文を書き終えた後、手紙の通り屋上へ向かった。
「西脇先輩、呼び出しちゃってすいません」
手紙を書いた子は、もうすでに屋上の扉の前で待っていた。
「いいんよ。なに、話って?」
あたしは鍵を持ってたけど、開けなかった。
だって、屋上はあたしとのっちの場所だから。
「学祭のライブすごくかっこよかったです!!」
「ほんま?ありがとう」
「・・・で、そのライブ見て、、、先輩の事、、、好きになりました・・・付き合って下さい」
あぁ、やっぱり予感的中。
「ありがとう。気持ちは嬉しいんじゃけど・・・今、好きな人がおるんよ」
あたしは丁重にお断りした。
「あ・・・そうなんですか。分かりました。今の忘れて下さい。すいませんでした!!」
その子は少し涙目になりながら、走り去ってしまった。
ちょっと可哀相な事しちゃったかなって、思ったけどちゃんと自分の気持ちを言ったから平気だよね。
教室に戻ろうと階段を下りたらのっちがいた。
「聞いてたん?」
「・・・はい」
「どっから?」
「たぶん、最初から・・・?」
あーあ、一番聞いてほしくない人に聞かれちゃった。
でもあたしものっちがコクられたとこ、見ちゃったからおあいこかな。
「・・・まっ、いっか。これで、おあいこじゃけぇ」
あたしは思った事を呟いて、屋上の鍵を開けた。
「おあいこって、どういう意味?」
のっちはハノ字眉で訊いてくる。
あたしは壁に寄りかかって座りながら、一昨日の告白の現場を見た事をのっちに告げた。
それを言われてのっちはちょっと気まずそうだった。
「のっち、好きな人おったんじゃね・・・」
「・・・う、ん」
ここは否定してほしかったな。
好きな人がいるって言ったのは、告白を断る手段だったんだって、言ってほしかったな。
本当に、好きな人がいるんだね・・・。
寂しいって、言葉が合うのかな・・・こういう場合。
なんだろ、言葉では上手く言い表せない感情だよ。
のっちに想われてる人が羨ましい。
あたしものっちに想われたい。
でもそれは願っても絶対に叶わないって知ってる。
知ってるから、お願いはしないの。
「そういう、あ〜ちゃんだっているんでしょ?」
「うん。いるよ・・・」
あたしの目の前に。
「なんか、のっちと恋バナするの、初めてじゃない?」
あたしはおどけて言う。
のっちはボソっと「そうだね・・・」 って呟く。
「なんか、変な感じせん?」
あたしはまたおどけて言う。
のっちはまたボソっと「そうだね・・・」 って呟く。
「そろそろ戻らんとね?」
のっちはまたまた「そうだね・・・」ってしか言わなかった。
なんか上の空って感じ。
「のっち、さっきから『そうだね』しか言っとらんw」
あたしが突っ込むと「そうだね・・・あっww」 って、やっと笑ってくれた。
「さっ、戻ろ?」
「うん」
「ねぇ、あ〜ちゃん・・・」
「ん?」
「あ〜ちゃんって、いつも香水つけとるよね?」
「そうだけど・・・あっ、匂いキツかった?」
「ううん。全然キツくないよ」
「そう?」
「うん。なんか、その匂い嗅ぐと落ち着くんだよね」
「そ、そうなん?」
なんか、そんな切なそうな顔して言われると、キュンってなっちゃうんだけど・・・。
「じゃあ、のっちにも貸してあげようか・・・?」
「いいの!!」
のっちの顔がパァって明るくなった。可愛い。
「うん。今持ってるから・・・はい」
あたしはスカートのポケットから香水が入ったアトマイザーを渡した。
「ありがとう!!」
のっちは小さい子供みたいにニコニコしてる。
のっちに好きな人がいても、いいや。
だって最初からわかってたじゃん。
これは叶わぬ恋だって。
永遠の片思いなんだって。
でも叶わぬ恋の方が、ロマンチックでしょ・・・。
永遠の片思いの方が、純粋でしょ・・・。
あたしは前向きに自分にそう言い聞かせた。
のっち・・・あなたに貸した香水は結局、貸したままになっちゃったね。
最終更新:2009年05月30日 23:14