(N)
代々木ライブの打ち上げ。居酒屋。
あ〜ちゃんがスタッフさんと物まね対決。
ほんまに芸達者じゃ。あ〜ちゃんは。
- でもごめんねあ〜ちゃん。いまのっちはそれどころではない。
のっちの彼女が、のっちのすぐ後ろでスタッフさんに口説かれてる・・・。
てかスタッフさん?ゆかちゃんに近づきすぎなんじゃけど。もー、離れて・・・
「やっぱりオレたちパフュームチームはさ・・・」
はぁ?あなた、パフュームじゃないから!
- はっ!いやいや、パフュームのステージを一緒に創り上げてくれた大事な仲間じゃろ!
やばい、のっち、今めっちゃ嫌なやつになっとる気がする・・・
「ゆかちゃんのケータイ、超かっこよくない?ちょっと、見せて」
うわっ来たよ来たよ。お決まりのこの流れ!!!
お前なんかにゆかちゃんのケータイ番号なんか教えんっつーの。
あぁ、また・・・このままここにいたら、どんどん嫌なやつになっていくよ。
こんなんじゃゆかちゃんにも嫌われちゃうよ。てゆーかこんな自分も嫌だ・・・
モヤモヤした気持ちが晴れないよ。あー、どうしよう、スタッフさんがムカついてしょうがない。
別に彼は悪いことしてるわけじゃないのに。のっちとゆかちゃんが付き合ってるの、知らんだろうし。
もしかしたらゆかちゃんも番号くらいなら教えてもいいって思ってるかもしれんし。
ここでのっちが割って入るのってすごいでしゃばりなんかな?
のっちは、ケータイ番号も誰にも教えて欲しくない。
ゆかちゃんの隣に座って欲しくない。できればしゃべって欲しくない。
「ゆかちゃんはのっちの彼女なんだ」って、おっきな声で言いたい。
でもそれって完全に自己中な独占欲なんよね。
わかっとる。わかっとるよ。でも・・・
「見てよ。オレの携帯さ、古くてー」
もう嫌だ、ダメだ聞いてられん。この場にいたらのっちがおかしくなっちゃう。
いつものようにサラッと断れたらいいのに。今言ったら、酷いことを口走ってしまいそう。
最近のっち変なんよ。嫉妬と独占欲でドロドロした気持ちが、ゆかちゃんを汚してる気がする。
ゆかちゃんのこと、イタイくらい好きすぎて。
立ち上がる。ちらっとゆかちゃんを見る。目が合った。
「ゆかちゃんてさ、メールよくする人?オレもー」
ゆかちゃん、のっち、もうどうしたらいいかわからん。ちょっと頭冷やしてくるけぇ・・・
ーーーパタン。
廊下に出ると、ふらふらトイレへの通路を曲がった。
腕を組んで目を瞑る。
ゆかちゃんは、のっちの彼女だけど。のっちだけのゆかちゃんじゃないけぇ、大人にならなきゃいけんのよ。
もうちょっと余裕持たんとゆかちゃんに飽きられちゃうし、呆れられちゃうし、しまいにはきっと嫌われちゃうよ。
「はぁ・・・」
大きなため息が床に落ちた。
モヤモヤウネウネ変な気持ちが心の中を支配する。
頭ではわかってても、気持ちが言うことを聞かんのよ。ゆかちゃんに近づく男の人が全て狼に見えるんよ。
そのとき、カツカツってヒールの音がしたと思ったら、通路の角からゆかちゃんが突然現れた。
迷子の子供みたいな顔。不安で不安でしょうがないって顔。
もしかして・・・のっちのこと、探してたの?
「のっち!なんで助けてくれないん!?ゆかがスタッフさんに口説かれててもいいん!?」
ゆかちゃんの目から涙があふれてる。
「ゆかちゃん?なんで泣いとるん?」
え・・・ちょっとまって、めっちゃ可愛いんですけど。
「のっちがいなくなって不安になっちゃった?」
「ち、違・・・」
ううん、きっと違わない。いや、違ってもいい。とにかくこの女の子が愛しくてしょうがない。
壊れちゃわないように、そっと抱きしめる。
「うぇ・・・うぇぇん。。。」
「のっちはここにいるから安心して?」
好きって気持ちが溢れすぎて止まらなくなる。ギューって抱きしめずにはいられんよ、ゆかちゃん。
「のっち・・・どこも行かんで・・・?ゆかのそばにおって・・・」
ねぇ、止めなくていいかな?ゆかちゃんへの大きすぎる気持ち。ヤキモチ。支配欲、独占欲。
「うん。もうゆかちゃんを一人にせんよ。口説かれたら、速攻でガードするけぇ」
『ガード』とかカッコイイこと言って、ただの束縛だけどいいかな?
「守ってくれないと、ゆか、スタッフさんに番号とか教えちゃうんだから!」
こんな可愛いゆかちゃん、誰にも渡したくないし、見せたくないもん。
皆がいる個室に戻ると、さっきのスタッフさんのそばに、ゆかちゃんと手を繋いで行く。
スタッフさんには悪いけど、ゆかちゃんはのっちのだから。
「すいません、ゆかちゃんはあたしの彼女なんで・・・ケータイの番号とか・・・すいません」
はっきり「彼女」なんて言ったのは初めて。ドキドキして声がちょっと震えたけど。
スタッフさんはギョッとした顔してた。
いいんだ。別に。痛いって思われたって。
その夜ベッドの中でゆかちゃんに、なんであの時出て行っちゃったの?って聞かれた。
「ゆかに呆れちゃった?」
そんなわけない。
「怒っとったん?」
まさか。あり得ん。
「また今度、教えるよー」
おでこにキスで誤魔化す。
だって嫉妬でドロドロした気持ちに耐えられなくなって、
あの場からただ、ただ逃げたなんて。
余裕を見せたあと、かっこ悪くてそんなこと言えん。
「ほんまのっちの考えてることはよくわからん・・・」
いじけたみたいにゆかちゃんがつぶやく。
「のっちはゆかちゃんのことしか考えとらんよ?」
これはホント。これからもずっと。
たぶんのっち、束縛するけど。もう我慢しないって決めたから。
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最終更新:2009年06月17日 10:44