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あたしは

愛しい人に、“飼われて”いる。


罠をかけたのは、彼女。

罠だとわかってかかったのは、あたし。


彼女の中に

その純粋さの中に、

狂気を見つけた瞬間の快感は

今でも鮮明に覚えている。



誰にも惑わされない

誰にも乱されない


そんな彼女が

ゆかのことになると


狂ってくれる。



だから

彼女が仕組んだ罠に、

自ら飛び込んだ。


そして


その狂気の中に、隠しきれない

純粋さに改めて触れ


離れられなくなった。


抱きしめれば、抱きしめ返してくれる。

キスすれば、ちゃんと応えてくれる。

毎晩、おなじベッドで眠る。


でも、なにも、ない。


それ以上のことは、ない。


ゆかが、完全にのっちに支配される前までは


何度もカラダを重ねたけれど・・



そして、今


のっちからは、なにもしてこなくなった。


そう


これが、彼女の仕掛けた、罠、だ。



全てを与えてくれない彼女に

焦れる、あたし。


これが、二人に与えられた

ルール、、、世界。



トントン


誰かが、扉をノックする。


「はい?」

ゆっくりと開かれた扉から見えたのは

あ〜ちゃんの姿だった。


「…久しぶりだね」

「・・・ゆかちゃん?」

「なに?」

「のっちと、、、少し離れたほうが、、いいんじゃない?」

      • 離れ、る?

「どうして?」

小首をかしげて問う。

「だって、、こんな状況、普通じゃないよ」

普通じゃない、か。たしかに・・・

「うん、そうだね」




この沈黙でさえ、あたしには
リアリティを感じられない。


ここに、のっちがいないから。



「・・・なんか、弱みでも握られてる、、の?」

「えっ?」

「だって、、、あ〜ちゃんにはどうしてもわからんのよ。
 なんで、ゆかちゃんが、ここから抜け出すことができないのか」


あぁ、、、、
それで、“弱み”?、か・・・


くすっ


思わず零れる笑い。


のっちは、そんなみるからに卑怯は手段は選ばない。


そう、彼女の流儀に反する、から。


ゆかだって、そう


そんな人なら、お断り、だ。


「まさか、そんなわけないじゃん」

「・・じゃぁ、、、なんでこんなことになってるの?」


あ〜ちゃんの瞳は潤んでいて
今にも、大きな涙が零れ落ちそうになっていた。


      • ごめんね、あ〜ちゃん



「のっちの傍にいたい、から。
 これは全部、ゆかの意思、だよ」

「別に、あ〜ちゃんだって別れなって言ってるわけじゃないんよ!
 なんで、こんな、、、隔離、されて。。る、、よう、な、、って・・」


最後の方は、消え入りそうな声で
聞き取るのがやっとだった。


「これが、のっちの望み、だから」

そして、ゆかの望み、だから。

「・・・やっぱ、出て行くなって言われてるの?」

「んーん。でも、、、ゆかにはわかる、から」

そして


「わかってないのは、、、のっちの、ほう、だよ・・」

あ〜ちゃんの耳には届かないくらいの声で呟いた。

「えっ・・・?」


にこって笑って


「ごめんね、あ〜ちゃん。でも、ゆかはほんと大丈夫だから」


そう言うと、もう何も問うてはこなかった。


リビングに戻ると、ソファに腰掛けたのっちの姿。


ゆっくりと近づいていくと

彼女の頬を涙が伝っていた。


キレイなキレイな、涙。


そっと拭ってあげる。


一瞬ビクッとカラダを震わす。
そして、大きな瞳で、ゆかのことを見上げ

「あ〜ちゃん、、、なんだって?」

そう問う彼女に

「ほんと」の話をしただけ、と答えるあたし。



ぎゅーっと、愛しい“ご主人様”を抱きしめる。



そう


のっちは、わかってない。


あたしは、囚われたから

ここにいるんじゃない。


ここにいるのは

のっちの傍にいるのは

全て、最初から、自分の意思。


だって

のっち?


貴方がいなきゃ

世界はモノクロで


リアリティの欠片も見つけられない。


ほんと、わかってないね。


もう

ずっとずっと


ゆかには、のっちしか

いない、こと。



ねぇ?


そんなに

ゆかの愛情が信じられない?


いつか、逃げ出してしまうとか思ってる?



だからだよ。


だから、あたしは

貴方が創ったこの世界にいるんだよ。



この

小指と小指を結ぶ鎖


ほどけないように結んだのは貴方だけど


真っ赤に染め上げたのは、、ゆかなんだよ?



そのことに


のっち

あなたが気付くまで・・・



罠を仕掛けたのは、ね

あなただけじゃなかったんだよ?



世界を創ったのは、のっち。


導くのは、ゆか。



そう


世界はこの手の中、に。






最終更新:2009年06月17日 11:25