今日、12月23日は、
ゆかの誕生日。
けど三人でのパーティーは明日。
毎年こうするように、私から頼んでる。
誕生日は家族で過ごすことになってたから。
家族とゆっくり過ごした次の日に、
三人で盛大にパーティー。
この流れは毎年恒例になっていた。
けど、何か今年は変な感じ。
なぜか寂しい。
去年と同じように、23日に日付が変わった瞬間、
いっぱいメールをもらったし、
今日の夕食はゆかの大好きなステーキ。
それに大きなケーキも。
明日になれば二人に会えるし、
今年はイブだけじゃなくクリスマス当日も遊ぶ計画を立てていた。
幸せな数日間が始まろうとしているというのに、
なぜか寂しい気分。
「ゆかったら贅沢だよねー」
ハムスターに話しかける。
原因は分かっていた。
好きな人に会いたい病。
のっちに…会いたい…。
「明日会えるんだってば!」
自分に言い聞かせる。
だめだよ、贅沢過ぎ。
こんなんじゃサンタさんに嫌われちゃう。
気晴らしに街に出掛けることにした。
コートを羽織ってマフラー巻いて。
ブーツを履いてハムスター達に行ってきますの挨拶をして。
別に大して用事はなかったけれど、
たくさん人のいる場所に行きたかった。
街はすっかりクリスマス色。
なんかそこら中キラキラしてて、
まるでみんなが私の誕生日をお祝いしてくれてるみたい。
街角に人だかりができていた。
路上ライブをしてる人たちがいるらしい。
その近くを通り過ぎるとき、クリスマスソングが聴こえた。
──きっと君は来ない…
ひとりきりのクリスマス・イブ──
お気に入りの店をまわる。
何か買わないと落ち着かなかった。
クリスマスツリーの可愛い飾りをいくつかと、
あ~ちゃんにはアロマキャンドル、
のっちには漫画をそれぞれ買い足して。
すでにプレゼントは用意してあったんだけどね。
あ~ちゃんには限定品のテディベア。
のっちには前から欲しがってたゲームソフト。
今年は奮発したなぁ。
ゆかサンタの財布はもう空っぽだよ。
街のウキウキした雰囲気をお腹いっぱい満喫して、
私は帰途についた。
あと少しで家につきそうになったとき、
ひらひらと真っ白な雪が降り始めた。
「この一週間はずっと晴れの予報だったのに…」
私は家には帰らず、近くの公園で雪を楽しむことにした。
公園の真ん中にはジャングルジムがある。
一番上の位置から街全体が見渡せる。
夜に登ると、
どこよりも綺麗なイルミネーションを独り占めできる。
クリスマスシーズンは近くの家のイルミネーションも見えて、
夢のような景色になる。
今年は二人をここに連れてきてあげる予定だ。
ふとのっちを思い出す。
誕生日メール第一号はのっちだった。
慌てて打ったのか、件名が「誕生日おめどとう」になっていた。
デコレーションしまくりのあ~ちゃんのメールに対して、
のっちのメールは一見すると殺風景。
けど、最後の一行。
「かっしー、生まれてきてくれてありがとう」
これを読んだ途端に、私は泣いてしまったのだった。
友達の関係を崩したくないがために、
ずっと言葉にはできなかったのっちへの想い。
こんなメールを貰えるのなら、
友達でいられるだけで充分だと思った。
気を紛らわせるために出掛けたのに、
のっちのことばかり考えてしまっている自分に気がついて、
やれやれと私は空を見上げた。
私に向かって雪が降りてくる。
雪の粒がさっきより大きくなったみたい。
雪の降る音が聞こえるような気がした。
雪と共に切ない気持ちも降り積もる。
あぁ…のっちに会いたいよ…
けど…
私は雪の中で歌う。
「きっと君は来ない…」
そのときだった。
「ひとりきりのクリスマス・イブ♪」
はっとして振り向く。
いつも聞いてるあの声を、聞き間違うはずはなかった。
そこにいたのは…
「かっしーにしては、
ずいぶんとシブい選曲じゃねぇ」
「なんでここに…?のっち…」
「でも不思議なことに、
かっしーが歌えばどんな曲も可愛くなる」
「のっちってば…」
「…ここに来る理由なんて一つしかないじゃん」
「え……」
いたずらっぽい笑顔を向けるのっち。
会いたくてたまらなかったはずなのに、
あまりに突然のことでうまく反応できない。
「会って直接、おめでとうって伝えたかったんだ♪」
「……」
「かっしーの家に向かってたら、
ちょうど見かけたからついてきちゃった」
のっちはジャングルジムを見つけると、
するするっとてっぺんまで登る。
「かっしー、見て見て!」
のっちは両手を広げて、両足を開いて、
「クリスマスツリー!」
のっち…そのポーズ、星のつもりなのね…。
私は思わず吹き出す。
私もジャングルジムのてっぺんに登る。
ブーツで登りにくかったけど、
のっちに手伝ってもらったから平気。
昼間買ったクリスマスツリーの飾りを、
二人でジャングルジムに付けた。
世界で一つだけのクリスマスツリーが出来た。
私とのっち、二人だけの、クリスマスツリー。
雪が強くなってきた。
けど、二人寄り添ってるからあったかい。
街を見下ろす。
まだ暗くないから絶景ではないけど、
のっちと二人で見たこの景色は絶対に忘れない。
耳元でのっちが優しく囁く。
「生まれてきてくれて、ありがとう」
気付けば私は、のっちの唇に自分の唇を重ねていた。
驚くかな、と思ったけれど、
のっちはしっかり受け止めてくれた。
「泣いてるの?」
「違う、雪が…」
のっちが私の涙を指で拭い、舐める。
「雪ってしょっぱいんだぁ」
二人は笑う。
幸せの涙だよ。
夕食の時間も近づいていたので、そんなにゆっくりもしていられない。
ジャングルジムの飾り付けを片づけていると、
のっちがコートのポケットから、無造作に二つ折りした紙を取り出した。
「これ、あげる」
「ん、なに?」
それはのっちと私が大好きなバンドの、
年明けライブのチケットだった。
前にライブに行こうって話したこと、覚えててくれたんだ。
「ちょっとちょっと、泣きすぎだよぉ」
思わず涙が出る。
「なんか私がいじめたみたいじゃん」
笑いながらジャングルジムの最後の飾りを取るのっちの背中に、
私は抱きついた。
「かっしー…?」
大好き、大好き、大好き…
心の中で三度念じる。
「のっちが風邪ひかんように、おまじないしといた」
「えへへ、ありがとー」
のっちが振り向く。
「のっちもかっしーのこと、大好きじゃけぇ」
「…!」
「そいじゃ、また明日ね」
呆然とする私を残して、のっちは雪の中を走って帰っていった。
今さっきまで私といたのは、本当にのっち?
まさか…妖精?
けど私の手の中には確かにあのチケットがあって…。
もしかしたら私にだけ、
一足早くサンタさんが贈り物を届けてくれたのかもしれない。
「ありがとう!」
空に向かって大声でそう叫ぶと、家までスキップして帰った。
○yuka's diary○
12月23日
今日は今までで最高の誕生日。
また一つ思い出が、宝物が、増えたよ。
想い続ければ気持ちは伝わるんだね。
これからもこの幸せが続きますように…。
ケーキおいしかったぁ☆☆
最終更新:2008年10月10日 22:45