サイドK


平行に平衡な大きな歯車に、かしゆか、のっち、あ〜ちゃん、、、『Perfume』という名がついているならば、
ずるくて醜い、この小さな歯車にはなんて名前を付けようか?
『愛』違う。
『恋』違う。
色恋沙汰じゃないもの。
ただ何となくよ。ただ何となく、、。
『罪』違う。
『罰』違う。
誰も私たちを叱れやしない。
汚い感情がない人間はいない。
そうね、、。
やっぱりこの歯車の名前は『曖昧』
どこにでも逃げられるから。
いつでも逃げられるから。
だから『曖昧』と名付けましょう。
頭の中の、すみのすみのすみっこにしまっておくわ。
今はど真ん中にあるけれど。
普段はね。
こんな邪魔なもの。
いらないの。
こんな邪魔なもの。


あなたの前でだけ
動きだすこの歯車。
あなたの前でだけ
動かすことにしたこの歯車。




『いいよ。』
と言ったあなたの眉は、いつもみたいに八の字じゃなかった。
きしむベッドの上、膝を抱えたのっちが
ゆっくり立ち上がって
ゆっくり動きだす。
するすると柔軟な体をしなやかに、
まるで踊っているみたいに衣服を捨てる。
半端丈のデニムが目の前にドサッと落とされた。
思わず顔をあげる。
白い体に黒い下着がよく映える。
力任せに腕をひっぱった。
この歯車を止めるブレーキが、
キリキリと音を立て、完全に壊れた。


『途中でやめるとか、、できないよ?』
『いいよ。』
『やだって言っても、、
『いいの。』


悔しい。悔しい。悔しい。


私はずるいから
私はずるいからね?
負けたくないの。
あなたにも
感情に押し潰されそうな自分にも。




サイドN


恐る恐る見つめていた目に力が入る。
負けず嫌いな性格も、プライドが高いことも知ってる。
だから私は挑発する。
いつもみたいに慌てていたら、
この『曖昧』な感情ごと、全て持っていかれそうだから。
私だって負けたくないよ。
勝負しているわけじゃないけれど。
愛でもなければ
恋でもないのに、
抱かれるのは悔しいから。
せめてその時が終わるまで渦に飲まれないように、、。


かしゆかの唇は、私を腐食する。
一気に酸素がなだれ込む。
いや、これは二酸化炭素か。
じゃあ無害か?
いや、彼女のものならそれも有害。
脳ミソはもう自由に動かない。
考える隙もなく、かしゆかの舌が口内に侵入し
私の脳ミソを腐食する。
高熱が出たみたいな毒にうなされ、
苦しい快感は
私の思考を停止させるのには十分すぎる。


もうやめた。
あれこれ考えるのはやめた。
今はただセックスに溺れればいい。
『曖昧』なままでいい。
ただ触れるだけでいい。



サイドK


あなたの熱は私には有害すぎる。
“意味がないなら無害”
だと、どうしても『曖昧』なままにしておきたいのね?
むしろ、、なかったことにしたい、、の?
それは無理。
きっと無理。
あなたも無理。
今からきっと、私の熱にうなされるから。
私の毒を持ってして、快感をあげるから。
私の熱が、あなたにとって有害であればいいのよ。


舌を這わす汗ばんだ首筋。
ひんやりと冷たい唇。
体は火照っているくせに
冷静なふりをしてる。


いつまでもつ?
冷静なふり
どっちが先に投げ出す?



つづく






最終更新:2009年06月17日 11:39