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K-side



「はい次のっちの番よ、はよルーレット回してや」
「よーし…、5か……はい出産!また子供産まれちゃった〜お祝い金五千円よろしく」
「またぁ?アンタどんだけ子沢山になる気なんよ」
「五人目五人目〜今度は女の子にしよっと、うわ!車に乗らん!」


静かな夜、あ〜ちゃんが行ってしまって天気は回復した。あの曇り空が嘘みたいに空には星達が瞬いている。だけど心にぽっかり空いた穴は風通しが良くなるばかり。きっとのっちもそうだろう。
昼まで死んだみたいに落ち込んでいてガツンと叱ろうと思っていたゆかも意気消沈、逆によしよしと頭を撫でて慰めてあげた。見てらんないくらい痛々しい姿だったんだもん。
そんなのっちも体力と精神力が共に限界だったのだろう、ソファーでついにさっきまで爆睡して、目が覚めたと思ったら「腹へった」と呟いて部屋に隠し持っていたカップ麺を二個、ぺろりと平らげた。
そしてあ〜ちゃんの事を深く考えたくないのであろうのっちは、どこから引っ張り出してきたのか懐かしの〇生ゲームをやろうと提案。どうせ暇だし、って事で付き合う事にしたけどやっぱりあ〜ちゃんがいないと盛り上がりに欠けてなんだか寂しい。


「のっちゴール!はーいゆかちゃんの負け〜」
「もー」
「罰ゲーム何にしよっかな〜」


無理に明るく振る舞ってるのは分かるから、ゆかも努めて普段通りに振る舞う。のっちだって辛いんだよね、もうずっと逃げてきたけど、そろそろあ〜ちゃんが限界だから向き合わなきゃいけんよね。


「罰ゲーム、決まりました」
「ん、何よ」
「あ〜ちゃんいない間、ご飯当番ね」
「えーマジでえ?きっつー」
「のっちは洗濯当番で」
「嫌じゃ、アンタにパンツとか洗われるの絶対無理。あ〜ちゃんがパンツ減っとるとか言ってたけど、アレのっち犯人じゃろ」
「…知んない…よ?」
「目が泳いでんだよ」


こんの変態おにぎり犬が、しまいに通報されてもしらんけぇね。あ〜ちゃんが大好きな気持ちは分かるけどそーゆー歪んだのはどうかと思うよ、まじで。


「はい、じゃあそろそろ片付けて寝ましょうか」
「ゆかちゃん、この手は何ですか」
「一緒に寝よ?」
「うわぁ超可愛いっ」
「なに顔赤くしとるんよ気持ち悪い」


とりあえず、あ〜ちゃんにお願いされた以上、このわんこの面倒はゆかが見なくちゃいけない。
だけど、口うるさいお姉さんがいないと悪戯だってしたくなるものだ。


「あ〜ちゃんのベッドで寝よっか」


のっちは一瞬目を見開いた後に、黙って頷いた。


(※微er)







あ〜ちゃんのいないあ〜ちゃんの部屋は、あ〜ちゃんの匂いがした。のっちは変態おにぎりらしく部屋全体をキョロキョロと見渡し、ピンクのベッドに視線は辿り着く。
ゆかはそんな挙動不審おにぎりの手を引いてベッドに誘導してあげる。ゆかがベッドの端にちょこんと腰を下ろすと、ぼけっと突っ立ったままのっちは見下ろしてきた。緊張してるって顔に書いてある。鼻の穴がさっきからピクピクしちゃってますよ、彩乃ちゃん。


「あ〜ちゃんのベッド初めて?」
「うん…」
「あ〜ちゃんと一緒に寝たことは?」
「ある…けど、のっちは一睡も出来んかった」
「あはは、じゃあ、あ〜ちゃんとエッチしたことは?」
「ないよ、知ってるくせに」


のっちはゆかの手を解いて部屋の灯りを消した。夜でも明るいのは輝く星達のせいで、のっちの綺麗な横顔も輝いて見えた。


「変なの、ゆかとはあるのにね」
「…それは」
「忘れたなんて言わせないよ?のっち何回もゆかを抱いてる、ゆか何回ものっちに抱かれてる」
「……」
「あ〜ちゃんも普通にそのこと知ってるよ」
「…もう、その話はいいから」


そう言ってのっちはゆかの横をすり抜けベッドに入った。枕に顔を埋め深く息を吸って…この変態が。


「のっち」
「なん」
「エッチしようか」


静かな空間に自分の声は驚くくらい響いた。部屋の角に置かれた鏡が写し出している姿は、なんとも言えない表情。
そして伸びた手が、ゆかを捕えた。あっという間にのっちの腕の中に収まり、ゆかの波打つ心臓と同じ様にゆるゆると腰を撫でる。


あ〜ちゃんごめんね、君のベッドをこんな事に使用しちゃって。だけど誘ったのはゆかだから、のっちは何も悪くないんよ、責めるならゆかを責めて。
服の中に入ってくるのっちの手は、何のためらいもない。ほら、これでゆかは安心できるの、今もちゃんとのっちはあ〜ちゃんを愛しているんだって事を。
付き合うならゆか、の言葉の意味は、つまりはこういった事。本当に好きな人とは付き合わない方が良いんだよ、触れらんないから。

ゆかが短いキスをすると、のっちは深いキスを返した。お互い服を脱がし合って、裸になるとのっちは急に不安気な表情で「あ〜ちゃんに謝んなきゃ」と呟いた。柔らかい布団が素肌にちくちく針を刺すみたいだ。胸が痛い。
罪悪感はある、だけどあ〜ちゃんなら分かるはずだ。



だってのっちもゆかも、多分人より性欲は強い方だから。




◇A-side◇




「お母さんっ!お母さーん!」
「あ、お姉ちゃん、わざわざ東京から来てくれたんだ」
「ちゃあぽん、お母さんは?お母さんが倒れたって、」


新幹線で昼過ぎに広島に到着、そこから急いでお母さんが運ばれたという病院に駆け込んだ。病室の前にはちゃあぽんが。あ〜ちゃんの顔を見るなり笑顔になったが、一瞬で表情が曇った。


「お母さんなら中にいるよ」
「…ちゃあぽん…お母さんは大丈夫なんよね…?」
「………」


うつむくちゃあぽんに、喉の奥がきゅっと摘まれる様な感覚。まさか、まさか、あの元気でお茶目なお母さんに限って深刻な病気なんて事は…。
ゆっくりと扉を開く。白い壁、白い天井、白いベッドに、…。


「うわ!綾香〜どうしたの何しに来たの」
「ど、どうしたの、って…お母さんが倒れたって聞いて…」
「大福を喉に詰まらせただけよ」
「またかよ!」


てゆうか、まじかこの親、信じられん。


「お父さんは?お父さんはどこよ、お父さんめちゃくちゃ深刻そうに電話してきたけんね、あの演技派が」
「お父さんなら外でタバコ吸って…」
「綾香〜!!」
「ぷぎゃっ!」


猛烈なタックルを食らってあ〜ちゃんはぶっ飛ばされた。このタバコの匂い、お父さんだ。
なんとなく読めた気がする。てか、絶対そうだ。


「お父さん!!!」
「いやぁ、お母さんが倒れたって言ったら綾香が広島に帰ってきてくれるかなと思ったら、予想通り、パパの考えは正しかった」
「間違っとるわ色々と」
「パパに会えなくて寂しかったじゃろ」
「ぶえっつにぃ、毎朝鏡見たらお父さんに会っとる気分じゃわ」
「綾香はパパ似だもんな〜」


それにしてもお母さんもお父さんも意味分からんし。さっきのちゃあぽんの表情はきっと「お姉ちゃんごめんね」の表情だったに違いない。一番下の妹にまで迷惑かけるなんて、ほんまに許せんぞこの両親。
けどとりあえず、1日だけでものっちの顔を見なくて済む。あんな事があった後だけに正直顔を合わせづらいし、あからさまに避けちゃったからのっちもへこんでるだろう。
ゆかちゃんはあ〜ちゃんとの約束だけはちゃんと守ってくれるから、のっちをしっかり世話してくれるだろうし。だからきっと大丈夫、二人の心配はせず今だけは何も考えないようにしよう。


次に会う時はちゃんと笑ってのっちの可愛い顔を真っ直ぐ見ることが出来るように。





◇15:終◇






最終更新:2009年06月17日 12:29