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(※er注意)
K-side




「セックスって気持ち良い?」


のっちの指が少し乱暴に挿入された時、ゆかの真上からそんな声が降ってきた。何を今さら、って鼻で笑って、のっちの髪に指を絡めた。


「気持ち良いよ、多分」
「男とすんのって、どんな感じ?」
「ちょっと痛いかな」
「それが気持ち良いの?ゆかちゃんドMじゃん」


奥まで指を入れても、のっちは動かないまま口だけずっと動かしてる。下手な焦らしはもうそろそろ飽きるよ、のんのん。
だけどそんなのっちの言葉が妙に胸を打つ。セックスって気持ち良いからやるんじゃなかったっけ?あ、あとやらしい気分になんのは嫌いじゃないし。ってそれじゃゆかただの淫乱ド変態じゃん。
だけど男のアレは正直痛い。気持ち良さそうな顔して夢中で腰を振ってるからこっちも気持ちが良いんだと錯覚するだけだろう。だったらなんでするんだろ、する意味無くない?だけどのっちとするのは違う、のっちの指はちょうど良くて気持ち良い。


「ゆかちゃんって、のっち以外の女の子とシた事ある?」
「のっちさっきから質問ばっか」
「だって気になるんだもん」
「無いよ、女の子はのっちだけ」
「そっか」


よく分かんないけどのっちは小さく笑って、ゆっくりと指を動かし始めた。中での動きの滑らかさで、既に濡れているのが分かる。
昔はあんなにオドオドしてたくせに、もうこんなに手慣れちゃって保護者なゆかとしては少し複雑な気分。だけど下手くそなのは前とちっとも変わらない。不器用だから仕方ないか、それでも十分気持ち良いし。


「…、気持ち良い?」
「うん…、もっと、奥、」
「ここ…?」
「あ、うん、そこ…はぁ、」


ゆかが熱い息を漏らしたのを確認すると、のっちはぐっと体重をかけてきた。漏れそうになる声を唇で阻止される。すると何故か涙が溢れた。ゆかの体を離れるとコイツはあ〜ちゃんのベッドに落ちるのだろうと思うと、罪悪感で胸が潰されそうになる。
それでものっちは興奮してる、熱い吐息が唾液と混ざってゆかの口内をぐちゃぐちゃにしてく。息が出来ないくらい苦しくて、唾液も飲み込めない。のっち、苦しいよ。のっち、のっち。


ごくん、と唾液を飲み込んだ瞬間、のっちの唇が離れた。なんで泣いてるの、って声に出さずにのっちは呟いた。ねぇ、のっちもなんで泣いてるの?そう言葉にしたくても出来ない。のっちにしては乱暴な動き。ゆかもうダメ、なんか出そう。
最後にまた唇が重なって、全身がぶるっと震えた。


のっちの顔は最後まで見なかった。のっちは最後までゆかの顔を見なかった。
のっち、あんたは何を考えてゆかを抱いてんのか知らんけど、あ〜ちゃんはゆかの百倍は可愛いよ。ゆかの一万倍綺麗で、ゆかの一億倍のっちを想って抱かれてくれるよ、それくらい意味のある行為なんよ。だから怖いのは分かるけど、ゆかを満たして満たされようとするのは間違いだから。


良い加減、勇気出しんさい。
ゆかも良い加減、勇気出しんさいや。



N-side



さすがに終わった後もそこにはいられなくて、のっちとゆかちゃんは裸のまんま服を抱えてゆかちゃんの部屋に移動した。その頃にはもう流した涙は乾いていて、口の周りを舐めるとしょっぱかった。
ゆかちゃんのベッドに飛び込んだ瞬間、凄く気持ち良くて目を閉じればすぐにでも眠ってしまいそうなのを、目を擦って堪えた。あ〜ちゃんのベッドはあんなに心地悪かったのに、なんでだろ。
きっとのっちの涙はあのフカフカのベッドに吸い込まれた。ゆかちゃんの汗も涙も吸い込まれてしまった。匂いなんかでばれない様に、あ〜ちゃんのお気に入りの香水を振りまくと、不自然なくらいの甘い香りで気分が悪くなりそうで。


「ゆかちゃん…」


ベッドの中で抱き合って、甘えるみたいに胸に顔を埋める。どくん、どくんて聞こえる音が安心出来た。暖かいぬくもりが優しかった。
この行き場の無い気持ちも欲望も全部、笑って受け止めてくれるのはいつもゆかちゃんだった。あの甘い声で、意地悪だけど憎めない言動でいつものっちを惑わすけど、それも長年付き合ってやっと体に染み付いて唯一ののっちの居場所を作り上げてくれた。


のっち達の事を全て知っているのは、ゆかちゃん意外誰もいない。のっち達を救う事は、この人意外には不可能なんだよ。だからって甘えてばっかで、ゆかちゃんの為にしてあげられる事は何もなくて。

いつかゆかちゃんは言っていた「人は幸せになる為に生まれてきた」って。何度も聞き過ぎて右から左にすり抜けてくみたいなフレーズだったけど、ゆかちゃんが言うとリアルに心に響いた。
だって「自分の存在してる意味が分かんない」って中学生の時に泣いていた子が、高校生になって急にそんな事を言いだすんよ、そりゃびっくりするわ。そして挙げ句の果てには「二人の幸せがゆかの幸せ」だとかほざきよった。
だとしたら今あ〜ちゃんとのっちがギクシャクしてるのはゆかちゃんにとっちゃ最悪の不幸なのか。変な純愛ごっこはやめて二人共さっさと良い男を捕まえて結婚でもしちまえってか、そういう事なのですか樫野さん。確かにあ〜ちゃん子供好きだもんね、隣に旦那さんがいて子供がいてあ〜ちゃんが笑ってる光景は簡単に想像がついて、すぐに泣きたくなってしまう。


「のっち、辛いんならやめなよ」
「なにを」
「あ〜ちゃんを好きでいる事、やめたら良い」
「どうやったらやめられる?」
「難しい質問じゃね」
「やめられるんなら、とっくにやめとる」


そうだったね、ってゆかちゃんは微笑んだ、様に感じた。目を閉じているからあくまで気配でそう感じただけ。ゆかちゃんの規則正しい鼓動はこれで何拍目だろう。「生きる意味なんてないから」と言っていたあの日の少女はこんなにも生命を主張しているのに。
だとしたらどうすれば良い、どうすればゆかちゃんを幸せにしてあげられる?このままじゃ幸せどころか希望の光すら見えない。やっぱり道は一つしかない、だとしたらそれは結ばれる事なんだ。


「…ごめん、ゆかちゃん…」
「なん?」
「のっちはゆかちゃんを幸せに出来ないわ」


そう呟くとゆかちゃんの心臓はどくん、と大きく跳ねてみせた。



◇16:終◇





最終更新:2009年06月17日 12:39