side N
売店で最後のコロッケパンを手に取ると、横から別の手が伸びてきた。
「「あっ」」
お互い、顔を合わせしばしの沈黙。
「どうぞ」
「良いんですか?」
争いは好きじゃない。
「はい、どうぞ…」
奪ったり、奪われたり、なんて好きじゃない。
「すいません。ありがとうございます。」
争うぐらいなら、私は諦めるよ。
「なんで、譲っちゃうの?明らかにのっちが先だったのに、、、」
一緒に来ていたゆかちゃんが私の代わりにむくれた。
「良いの、良いの。一番人気の焼きそばパンが買えたから、それでのっちは満足なの」
ゆかちゃんの分の飲み物も買って、売店を出た。
本当はコロッケパンが食べたかったんだけど…
自分の欲より、周りの平和。
平和が一番!
なのに…
ゆかちゃんの事になると抑えられなくなる。
焦って、
戸惑って、、、
こんな必死なのっち、あんまり知られたくないな…。
格好悪いし…。
寒さで、屋上での昼食も厳しくなってきた。
あ〜ちゃんとゆかちゃんのクラスにお邪魔して、売店で一番人気の焼きそばパンを頬張る。
「バッッッカじゃないの!?」
「んぐっ…」
「もっかい言おうか?」
「良いです…」
「バッッッカじゃないの!?」
「もう何も言えないっす」
あ〜ちゃんの厳しい言葉に、焼きそばパンも喉を通らない。
「ゆかちゃんもゆかちゃんよ〜なんでOKちゃうかなぁ」
「え?だって、のっちと映画に行くのには変わりないじゃん」
そうそう、デートなの。
普通のデートなの!
「三人なのに?」
「ん〜…まぁ、オマケだと思えば、、、」
そうそう、オマケなの。
アイツはオマケなの!
「佐藤くん可愛そう」
可愛そう?
「可愛そうじゃないよ!あんな奴」
声張りすぎて、口に入ってた焼きそばが少し飛んだ。
「ちょっと、のっち汚い…」
「すんません…」
「佐藤くんとなんかあったの?」
ゆかちゃん、つぶらな目で見ないで…
「なんもない」
上手く嘘がつけなくなるから。
「目の前でデートに誘われるゆかちゃん見て嫉妬したんじゃろ」
まぁ、強ち嘘ではない。
「…そうれす」
「あ、ごめん」
ゆかちゃんが謝る必要なんてないよ。
のっちが1人で焦ってるだけだから…
◇◆◇◆◇◆◇
「んー…」
「どしたん、のっち」
5時限目は体育。
ゆかちゃんのクラスと合同授業。
種目はバスケ。
よっしゃ!
格好いいのっちを見せちゃうぞ!
…と思ってたのに。
「お腹痛い…」
「焼きそばパンの食べ過ぎじゃ」
あ〜ちゃん、少しぐらい優しくしてよ。
「あっ、男子もバスケなんだ」
体育館の向こう側。
半面を利用して、男子が試合を始めた。
その中に、看板のアイツ…。
ふふっ、お手並み拝見だね。
…
……
「佐藤くん何気に格好いいよね」
「いつもは、ぱっとしないのにねぇ〜」
ゆかちゃんのクラスの子が話してる声が聞こえてしまった。
嫌でも追ってしまう目。
あっ、スリーポイント決めよった…
小さくガッツポーズしたアイツと目があった…
フッ…
鼻で笑いやがった…!
「のっち、見学する?」
ゆかちゃんの優しい気遣いも、今の私は受け取れない。
「ううん、」
ピー!
体育館に笛の音が響いた。
side K
バスケをしているのっちは、本当にさっきまでお腹痛いとか言っていたのかと思う程の動き。
のっちが放つボールは綺麗なアーチを描いて、ゴールに吸い込まれる。
「大本さんって格好いいよね〜」
「向こう側の男子が霞んで見えるもんね」
クラスの子が話してる声が聞こえた。
あー…ゆかの顔、絶対今にやけてる。
(のっちぃ〜格好いいって!まぁ、ゆかは解ってたけどwwのっちぃ〜)
心の中で呼んでみる。
(のっち〜)
でも、君は見てくれないの。
必死で、夢中で、
どうしちゃったの?
ねぇ、こっち向いてよ…。
こっち向いて、クシャって笑ってよ…。
恥ずかしいくらいアピールしてよ…。
でも、君は見てくれない。
続く
最終更新:2009年06月17日 12:42