大学内にある小さなカフェ。
そこでゆかとのっちは休講になって空いてしまった時間を潰していた。
今年もまた梅雨に入って、今日ももちろん雨で。
目の前でのっちはうなだれている。
「去年と一緒じゃ。」
呆れたように言えば、のっちは少しだけ顔を上げて「何が?」と聞いてきた。
「梅雨の時期ののっちが。」
「え?あぁ…だって雨嫌いなんだもん…」
テーブルから上体を起こしたかと思うと、頬杖をつく。
「太陽にさぁ、会えないんだよ?寂しいじゃん…」
ちっちゃい子みたいに口を尖らせて窓の外を見る様はなんだか可愛らしくて。
…むかつく。
「その太陽って…あ〜ちゃんのこと?」
「え、や、そうじゃなくて!」
「あ、そう…じゃああ〜ちゃんに会えんくても寂しくないんじゃね」
「そんな訳ないれしょ!!てか、話すり変わってない!?」
「そうかなー?」
「ゆかちゃーん…」
ちょっといじめてあげれば、のっちに少しだけ活気が戻る。
いや、あ〜ちゃんの名前を出したからかな。
わからんけど。
「あ〜ちゃんってさ…この時期体調崩しやすかったよね」
「うん、確かに。梅雨に入るとねー」
さっきの話と繋がった気がした。
梅雨の時期、太陽に会えない。
梅雨の時期、のっちの太陽は体調を崩す。
そういえば。
あ〜ちゃんとは離れてからもメールはちょくちょくしてるけど、
今朝届いたメールで熱が出たって言ってたっけ。
のっちは伸びをしながら話を続ける。
「去年はなんとか大丈夫みたいだったけど…」
今年はやっぱり熱出ちゃったね。
のっちの言葉がそう続くと思っていたのに。
「今年も大丈夫なのかな?」
「え?」
「『え?』って何?」
「…だって、あ〜ちゃんから今朝、熱出てるってメール来たけど…」
「えー!?」
普通にしてても大きな目を、一層大きく開けて驚いてる。
この驚きっぷりから考えて…。
あ〜ちゃんはこのことをのっちに教えてなかった、と。
ふーん。
なるほどね。
一人納得する中、のっちは半泣きでゆかにすがりついていた。
「なんでぇ?なんで、あ〜ちゃんはのっちにそのこと教えてくれてないのっ?」
「ねぇ、ゆかちゃんなんで?!」
ホントにちっちゃい子みたい。
少しだけ可哀相に感じたから、あほのっちにゆかの考えを教えてあげる。
「あ〜ちゃんの考えることじゃけぇ、
のっちに心配かけたくなかったんじゃろ」
「そ、そうなんかなぁ…」
眉はハの字のままだった。
のっちは鞄の中を漁って、時間割を取り出す。
指で時間割をなぞりながら唸ったかと思うと、
ゆかの顔を見て余計に眉がハの字になった。
たぶんこのコは次の講義をサボる気だ。
サボってあ〜ちゃんの所に飛んで行こうとしてる。
でも、ゆかに怒られるのは嫌。
あのね。
ゆか、そこまで鬼じゃないから。
飲んでいたアイスティーをストローでゆっくり混ぜながらのっちを見る。
「代返、しといてあげるから。」
一瞬動きが止まったのっちだけど、ゆかの言葉の意味を理解して荷物を素早くまとめはじめた。
「ありがとう」
そう言い残してのっちは傘を片手に、この雨の中走って行った。
あ〜ちゃんのことに関して変なとこが弱気で、変なとこが強気なのっち。
「カッコイイとこ、あるじゃん。」
独り言みたいに呟いたけど。
…やっぱりなんかむかつく。
今日のゆかの優しさはのっちのためじゃなくて、
あ〜ちゃんのためなんだからと自分に言い聞かせた。
つづく
最終更新:2009年06月17日 12:44