どれくらいこうしてたんだろう。
静かだな。
時が止まったみたい。
どうせなら、ホントに止まっちゃってほしい。
のっちの心音がきこえる。
心地好い音。安心する。
涙は止まった。
柔らかい、温かい場所。
のっちの腕の中。
ずっとこのままでいたいと欲しがる躰。
裏腹に、頭の中は大分落ち着いてきた。
めんどくさいな。
生きるのって、めんどくさい。
色んなこと考えて…
色んなものに気を使って…
我慢しなきゃいけないこともあるし、したくなくてもしなきゃいけないことだってある。
このまま二人でどっか行っちゃいたいな…
誰もいない、誰も知らない場所。
甘いこと言ってるって、分かってる。
「あ〜ちゃん…」
ねぇ?
なんであたしを抱き締めてくれたの?
そんなの、決まってる。
心配だったから。
心配で追いかけてきたら、子供みたいにあたしが泣いてた。だから…
理由なんて、それだけ。
そうでしょ?
「…落ち着いた?」
分かってる。
そんなことは聞けない。
聞ける立場にいない。
困らせるだけだ。
そもそも、そんなこと聞く度胸はあたしにはない。
離れなきゃ。
離れなきゃ…
「………やだ」
落ち着いたあたしをみて、そっと力が抜けたのっちの腕。
離れたくなくてあたしは腕に力を込め、のっちの肩にしがみついた。
「あ〜ちゃん?」
「今、顔ぐちゃぐちゃだから…見られたくない」
我ながら、めんどくさい。
大体そんなことじゃないでしょうに、素直じゃない。のっちが今どんな顔してるか、想像するまでもない。
「あ〜ちゃんはどんな顔でもかわいいよ?大体のっちはあ〜ちゃんのすっぴんだって何度も見てるから、気にしなくてもいいじゃん」
違うよのっち。
あたしの口が言うことは、真に受けちゃいけない。
女の子なのに、女心がわかってないね。
「のっち…」
「うん?」
「ありがと」
「…うん」
恋してる人間の気分なんて、簡単だ。
相手の采配しだいでどうとでもなる。
のっちと離れてて、話もできなければ、あたしの心は際限なく沈んで行く。
たった一度、抱き締められるだけで、あたしの底はどれだけ浅いんだろう、なんて考えさせられるくらいあっという間に、天辺まで飛び上がる。
永遠に感じられるくらい深く深く沈んだはずのあたしの心は、のっちにかかれば子供の掘った落とし穴に落ちたみたいなもんだ。
さて、離れなきゃ。
いつまでもこうしてはいられない。
馬鹿なあたしが作りだした問題。
しっかりしなきゃ。
どちらにせよ、あたしの気持ちは固まった。
このまま過ごすのは、嫌だ。
しょっぱい涙は沢山だ。
あの時ならただ好きなだけでいられたのに。
自らそうではない状況を生み出してしまった。
今になって決めたあたしの気持ち…
それはゆかちゃんに対する裏切り以外なにものでもない。
だから…
その前に、もう少しだけこうしていたい。
あと一分でもいい。
一秒だけでもいい…
少しでも長く…
今更大事なのは、あたしなんかの気持ちじゃない。
さっきのゆかちゃんの言葉。
気付くのが遅いって言ってた。
ゆかちゃんは気付いてたんだね
一体なにを考えてるの?
ねぇ、のっち。
あたしはあなたが好きで苦しんでたんだよって言ったら、あなたはどう思うの?
最終更新:2009年06月17日 12:46