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あ〜ちゃんがのっちに熱のことを教えてくれなかった理由。
たぶん、ゆかちゃんが言ってた通りだ。
いや、直接本人に聞いた訳じゃないけどさ。
あ〜ちゃんの態度でひしひしと伝わってくるんですよ。


さっきからあ〜ちゃんはのっちから離れたがらない。
ずっとのっちの服の裾を持ってる。
今だってお見舞いに持って来たリンゴを切るために
キッチンに行こうとしたら引き止められた。
フラフラとした足取りであ〜ちゃんは果物ナイフを取ってきて、「ここで切って」とせがまれた。
切ってる間もあ〜ちゃんはずっとのっちの傍にいる。


あ〜ちゃん、可愛い。
もちろんいつも可愛いんだけど、それ以上に可愛く感じる。
ボーッとしてる感じとか、トロンとした目とか、ダルそうな返事とか。
あれ、自分…病人萌え?





「何ニヤニヤしとるんよ」


あ〜ちゃんにつっこまれて、自分の顔の緩みに気がついた。


「い、いや別に」


そう答えてリンゴの皮を剥くことに集中しようとするけど、
あ〜ちゃんがじっと皮剥きの様子を見ているのに気がついてしまった。
…そんなに見られると、緊張するんですけど。


「あっ…」


ほらぁ、手元が狂った。
指先からじわりと血が滲む。


「ごめん、あ〜ちゃん。絆創膏ある?」


そう聞いた途端、急に手首を掴まれた。
そして、あ〜ちゃんは血の出た指をそのまま口に持っていく。


「あ、あ〜ちゃんっ?!」


あ〜ちゃんはのっちの指をくわえて舐めている。
チロチロと舌が動くのがわかって、いかがわしい考えが頭に浮かんでしまう。
これは…ヤバイ。


「消毒じゃ。」


一人テンパッてると、あ〜ちゃんは口から指を離してそう言った。


「そ…うれすよね…」
「のっち、なんでそんな顔紅いん?」
「知らん…わからん…」


落ち着け、のっち。
あ〜ちゃんは今、熱が出てる病人さんなんだから。




「のっちも熱あるん?」


あ〜ちゃんはのっちの気も知らず、おでこ同士をくっつけてくる。
顔が…近い。


「…なんもわからん」


そう言ってフニャっと笑うあ〜ちゃん。
当たり前だよ。
あ〜ちゃんの何の気なしにしてる行動にドキドキしてるのっちは、
熱の出てるあ〜ちゃんぐらい熱くなってるから。


自分の熱を冷ますように、今度はちゃんと集中してリンゴを剥いた。
そんなに大きい訳ではないのに、リンゴ一片を両手で持って食べるあ〜ちゃんはハムスターみたい。
ゆかちゃんもきっと飛びついちゃうぐらい可愛い。


「ごちそうさまでした。」


あ〜ちゃんは小さく手を合わせて軽くのっちに頭を下げると、ベッドに潜った。
のっちはお皿とナイフを片付けようと立ち上がる。


「のっち…何しよん?」
「え…これを片付けようと思って…」
「そんなんせんでええけぇ、こっち来んさい」


あ〜ちゃんは自分の隣に空けた場所をパンパン叩く。
あ〜ちゃんに言われるがまま、持っていたものを置いてその場所に入り込む。




のっち…我慢できるでしょうか。
それだけが心配です。







つづく





最終更新:2009年06月17日 13:07