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こっちに来て半年経った。
慣れない土地も慣れない言葉も、なんとなく受け入れられるようになってきた。

それでもやっぱり日本が恋しくなる。
のっちが恋しくなる。

たまにゆかちゃんからメールがくる。
あたしからのっちの話題は出さないけど、ゆかちゃんはさらりと近況を教えてくれる。
とりあえず元気らしい。
でもいつも独りでいるらしい。
後輩とか寄ってくるけど、ぶっきら棒に接してるらしい。

その光景を想像すると、ちょっと笑えた。
きっと転校当時みたいに「はぁ・・・」しか言ってないんだろうなって。

学校が終わって家路に着くと、家の玄関の近くに人がいた。
遠くからだと、アジア系の女の子ってしかわからない。
ここら辺はあんまりアジア系は少ないからちょっと不思議に思った。

よく見ると、足元には旅行用のバック。
手元にはガイドブックらしい本を持ってる。
もう一度、よく見ると・・・その人は半年振りに見る懐かしい人だった。

なんでここにいるの?
どうして?
もしかして、あたしに会いに来てくれたの?

あたしはビックリして、声を掛けるのが遅くなった。
あたしに気付いたその人が先に声を掛けた。


「・・・あ〜、ちゃん?」
「・・・のっち?」
またあの八重歯が見える笑顔がみれるなんて思ってもみなかった。

「ど、どうして・・・ここにおるん?」
「あー・・・たまたま、こっちに親戚がいるんだよね・・・てのは、嘘で〜w」
半年振りに会うのっちは、どことなくオトナっぽくなってた。
髪も伸びてショートからボブに変わってる。

「ずっとこれ借りたままになってたでしょ?返しに来た」
のっちはバックから、あたしが半年前に貸した香水を取り出した。
「これ返しにわざわざ来たん?」
「・・・うん。じゃ、帰るね」
そう言って、のっちはバックを持ってあたしに背を向けて歩き出した。

え?
ほんとに、香水返すだけのためにここに来たの?
それだけで、ここに来たの?
そんなら郵送で済むじゃん・・・。

あたしは呆気に取られて、遠ざかるのっちの背中を見てるだけ。
ずっと見ていたら、ピタっとのっちが止まってUターンしてこっちにズンズンと戻ってきた。
そしてあたしの目の前で立ち止まった。

「・・・なワケないじゃん」
「え?」
「そんなワケないじゃん!香水返すだけの為に来るわけないじゃん!!」
のっちの顔は真剣だ。
こんな顔初めてみた。

「・・・あ〜ちゃん、酷いよ」
きっと、何も言わないでいなくなった事を言ってるんだよね。
「ご、ごめん・・・」
「・・・あ〜ちゃん、勝手だよ」
「ごめんなさい・・・」

「・・・あ〜ちゃん、ズルイよ」
「え?」
「あたしの気持ち考えてなかったでしょ」
「あっ・・・」
あたしはもうのっちの顔は見れなくなってた。

「自分だけ言い逃げしてさ〜、こっちの事全然お構えなしなんだもん」
「うっ・・・」

「あんね〜、あたしめっちゃ悲しかったし、寂しかったんだよ?かっこ悪いけど、すんげー泣いたし」
「・・・・」
あたしはもう何も言えなかった。

「・・・でも、あの屋上の壁は、嬉しかった。あのメッセージを見つけた時は、心臓バクバクだったよ」
「え・・・」


のっちは人さし指で頬をポリポリ掻きながら、ゆっくりと喋り始めた。
「憶えてるよ・・・。忘れるワケないじゃん。楽譜拾ってあげたよね・・・」
「うん・・・」

「あたしもあ〜ちゃんと一緒にいるとドキドキする。目が合うとドキドキする」
「・・・」

「あたしを見てくれる目が好き」
「・・・」

「いつもいい匂いがするフワフワの髪の毛が好き」
「・・・」

「あたしをよく呼んでくれる声が好き」
「・・・」

「えくぼが出来るクシャっとなった笑顔が好き」
「・・・」

「太陽みたいにいつも元気で明るい所が好き」
「・・・」

「あ〜ちゃんの全部が・・・好き、です」
「・・・」

「迷惑な、ワケないじゃん。だって、あたしの好きな人は、あ〜ちゃんだもん」
「・・・」
「もう会えないって書いてあったけど・・・今、会ってるじゃん。会えるんだよ。だから忘れてなんて悲しい事言わないでよ・・・」

のっちの告白は淡々としてたけど、あたしの心に十分すぎるほど伝わった。
あたしの両目からは大量の涙が溢れ出ている。
これは、きっと嬉し涙。
嬉しすぎて涙が出てきた。

あたしたちは、お互い気付かなかっただけで両思いだったんだね。
のっちはハノ字眉になってて、あたしの涙を拭ってくれてる。


「ほんとに・・・あ〜ちゃんの事・・・好きなん?」
「うん。じゃなかったら、ここまで来ないよ・・・」

「ほんとは、あの壁見た時、すぐにでも駆けつけたかったんだけど、やっぱりちょっと遠いから・・・半年掛かっちゃったんだよね・・・・」
「電話とか、メールがあるじゃろ?」

「うーん、そう思ったけど、あ〜ちゃん教えてくれなかったじゃんw」
「うっ・・・」

「それに中途半端に連絡取っちゃうと、会いたくなっちゃうからさ。半年間、旅費を溜めてた」
「ごめん・・・」

「あ〜ちゃんのせいじゃないよ。引越しは、しょうがない事じゃんw」
「ありがと・・・」

「でね、最初はすんごい遠いからもう会えないって思ってたんだけど・・・同じ地球にいるかぎり、会おうと思えば会えるんだってわかったんよ!」
「アホ・・・」

「えっ!?な、なんでアホなの?」
「アホじゃ!!アホのっち!!あ〜ちゃんの為にそこまでしなくていいけぇ」

「あ〜ちゃんの為でもあるけど、自分の為でもあるからいいの!!」
「アホ・・・」

「あー、また言う〜w超遠恋になっちゃうけど、たまにこうやって会いにくるから」
「え?」

「え?えっ!!あの〜・・・付き合って、くれるんだよ、ね?」
「・・・あ〜ちゃんで、いいの?」

「今更、何を言わせるんだいw?あ〜ちゃんが、いいの!!あたしと・・・つ、付き合って下さい」
「なーんで、肝心な所で噛みよるん・・・全部、台無しじゃけぇ」

「あー・・・もう一度やり直し・・・なんて出来ないよね・・・」
「ふふふ。ごめん、ちょっとイジメすぎたわ。あ〜ちゃんも好きじゃけぇ」

「へへ・・・。あ〜ちゃん、大好き!!ねぇ?ギュってしていい?」
「ええよ?」
のっちは腕を伸ばして、あたしの背中に回した。
文字通りのっちはあたしをギュって抱きしめてくれた。
あたしもそれに応えて、腕を回す。

「・・・実は、ずっとこうやってみたかったんだよねww」
のっちの声が近い。
「あ〜ちゃんもだよww」

「あ〜ちゃん、温かい・・・」
「のっちも温かいよ」
あたしたちはおでこをくっ付けて笑い合った。


のっち・・・同じ学校に転校してきてくれてありがとう。出逢ってくれてありがとう。大好きだよ。これからよろしくね。






最終更新:2009年06月17日 13:10