−n−


ざーーざーー

たんたんたん・・・たんたんたん・・



んー・・・・

重い瞼をゆっくりと持ち上げる。

カラダはまだ、妙にだるい。


      • ざーー・・・ざーー・・・


あ、雨、、か。
どうりで・・・


たんたんたん、、、たんたんたん、、、


窓に打ち付ける、雨音が
雨の激しさを教えてくれる。



季節の変わり目は、体調を崩しやすい。

そんな法則にまんまとはまり、今日は仕事を休んだ。

いつもなら休まないといけないほど崩れるってことはないのに。


不覚。


でもそっか、、、雨、か。


なるほど、、、雨、、、だったのか。


もう、1年、、、、か。


再び、一人だけの生活に戻って1年。


雨が降るたびに、ちょっぴり寂しくなるようになって、、1年。



ざーざー、、ざー、、、

少しずつ遠ざかる雨音。


ネガティブな思考の渦に堕ちてしまう前に

もいちど、眠りに落ちよう。。。



ざー・・・・




ピンポーン


ん?


ピンポーン


誰だろ?

      • あぁ、、、でもいいや、、、ほっとこう

もう思考回路は止まり始めてる。
それに、カラダはもう、鉛のように重くて
とても動けそうにない。


眠りに落ちる瞬間


ガチャリ、と扉が開く音がした気がした。




再び、夢の世界に。


夢の中でも、雨が降っていて、苦笑い。

どこかの店の軒下。

傘を持っていないあたしは、ぼんやりと零れ落ちてくる雨を眺めている。

少し先の店には、傘が売られてるだろう。

わかってるけど、あたしは買いに走ろうとはしない。

面倒だから・・?

んーん、誰かを待ってるんだ。

傘を差し出してくれるのを。

誰か?

んーん、、、、彼女、だ。

彼女が傘を差し出し迎えに来てくれるのを待っている。

来るはずもない彼女、を。

でも、夢の中ののっちは、寂しさを感じてはなかった。




カタン。


えっ?

誰かの気配で目が覚めた。



ぼんやりとした視界。

目を凝らすと飛び込んできたのは

キレイな黒髪と華奢な後姿。


        • ゆか、ちゃん?



一瞬まだ、夢の続きを漂ってるのかと思った。


けど


「ゆかちゃん?」

その言葉に振り返ったのは、間違いなくゆかちゃん。

「あ、ごめん起こしちゃった?」

「んーん・・・・」


さー・・・・さー・・・

窓の外、響く雨音がさっきまでより少し軽い。

なんで?どういうこと?

頭ん中がうまく整理できなくて

ただただ、ゆかちゃんのことを見つめていると


「あ、ごめん、、、合鍵で、、、勝手に入っちゃった…」

あぁ、なるほど

「ごめん」
再び、彼女は呟く。

なにが?

「合鍵、、、、まだ処分してなくて…」

あぁ・・

「・・・いいよ?別に」


でも、、どうして処分しなかったの?

疑問は雨音に吸い込まれて消えた。


「・・調子、、どう?」

「うん、、まだちょっとダルイ・・・」

「そっか・・・」


そう言いながら、長い指で髪を耳にかける。


あ、、、


耳たぶに視線が止まる。


ん?

不思議そうな表情をしたのは一瞬。


「あ、ごめん!」

そう言って、慌てて

ゆかちゃんは、お揃いのピアスを
キレイな黒髪で覆った。


1度だけ、恋人として過ごした彼女の誕生日。

人の目を気にすることなく
身につけられるお揃いのものが欲しいという
彼女の希望を叶えるために買ったピアス。


「・・・いいよ?別に」

「・・・いいの?」


「うん・・・」

悪くは、、、ない。

でも、、、


「そっか、、、別に、、、、いいんだ・・・」


なにが、、いいんだろう?


「ねぇ?」

「なに?」

「看病してくれる人とか、、いないの?」

「…いないよ?」

なんで、こんなことになってんだろう?
再び、自然と落ち始めるまぶた。

「ひとり?」

「ひとり、だよ?」

彼女独特の、甘い声が脳の奥まで響く。


「あれから、ずっと?」

「あれから、、ずっとだよ?」

「気になる人、は?」

「いるよ?」

ずっとずっと

「・・・」

「・・・ゆかちゃんは?」

「誰か、いないの?」

「付き合ってる人は、いないよ?」

「気になる人、は?」

「・・・いるのかな?」

なんで疑問系?

思わず笑みが溺れそうになる・・・けど

カラダは、どんどんベッドに沈み込んでいって・・・

雨の音も、遠ざかっていく。

「・・・あ〜ちゃんが、いる、、、もん、、、ね・・・?」

あぁ、、、意識ももうすぐ、この手から離れるだろう。

「・・・いる、、、けど?」

「さみしく、、ない、、、ね・・・?」

なに言ってんだろ?

「・・・なにが、言いたいの?」

ほんと、だね。

「なにが、言いたいん、、、だ、、、ろ?」



        • さー・・・・・・・・・・


「のっち?」

「ん?」

「・・・なんで、こうなっちゃったんだろうね?」

「・・・・なんで、、、だろう、、、ね?」

すでに、思考回路は停止寸前。

麻痺状態。

この雨のせい?・・・・彼女の、甘い甘い声の、せい?


「さみしい、、よ?」

うん、のっちも・・

「さみしい、、、よ・・・?・・・・・


完全に意識を手放す瞬間


      • だ、、、、き、、、だ、、ょ・・・?」



マ ダ ス キ ダ ヨ ?


そんなコトバと共に



ゆかちゃん特有の、甘く痺れるような香りに


包み込まれたような、気がした。




雨はいつか



きっと、あがる。



あたしは、ずっと



貴方を


待っている。






最終更新:2009年06月17日 13:16