<side a-chan>
急に中田先生に呼び出しくらうなんてアタシら何した!?
と思った。
でも、中田先生がアガッてるってことは、お叱りではなさそう。
楽しみでついついニヤケてしまう。
「え~っと... これ。学園祭で歌って欲しいと思ってるんだけど。」
そう言って差し出された一枚の譜面とCD。中田先生の手汗で端っこが少し湿ってる。
チョコレイト・ディスコ ...?
殴り書きのタイトル。のっちはキョトンとしている。
ゆかちゃんは訳知り顔でニッコリ。絶対知ってたな。
「樫野にはもう話してたんだけど、学園祭の模擬店のやつ。
オレがずっとターンテーブルまわしてるだけって芸が無いし華も無いだろ。
そこで、お前ら3人に盛り上げてもらおうってこと。ちなみにお前ら以外は考えてないから。」
中田先生はかなり恥ずかしそうだ。そこがまた先生らしいんだけど。
「あ~ちゃん、のっち。先生も頑張って曲作ってくれたしさぁ、頑張ってみない?」
ゆかちゃんはやる気満々。あたしは全然オッケーだけど、このヘタレはねぇ...。
「大本。西脇。どうだ?やってくれないか?頼む。」
先生はそう言うと頭を下げた。なんでこんなに必死なんだろう?
横を見ると、さっきまで半分寝ぼけていたのっちの目が据わっていた。
「やります。やらせてください。」
のっちの真っ直ぐなその即答。真剣そのものの眼差し。
その目が、その声があたしの視線を奪って離してくれない。
「西脇。どうだ?」
中田先生の声があたしを現実に連れ戻した。
答えは決まってる。二人に引っ張られて、二人を引っ張って、ここまで来たんだから。
「もちろん!やらせてください!」
中田先生が笑顔になる。こんな表情するんだ。
ゆかちゃんも心底ほっとした顔でこっちを見た。
3人目を見合わせて笑った。幸せな時間に感じる。どうしてこんなに穏やかなんだろう。
中田先生は言葉を続ける。
「それから、時間あったらでいいんだけど、水野先生のところに行ってくれ。フリ付けて貰った。
余裕があったら踊ってもらう。そのかわりっちゃなんだが他の係全部免除する。」
「ぃやったぁ~!!」
三人で飛び跳ねて喜んだ。でも、踊れるんかね?まずは曲を聞かにゃあね。
「じゃあ、また明日。それから樫野。明日朝少し早く来てくれ。完成しそうだから。」
ん?なんだ?
ゆかちゃんは弾けるような笑顔で返す。
「先生、直接渡せば良いのに。」
「無理。だから頼むぞ。また旨ミルクやるから。」
「はーい。お任せくださいっ!」
何の話か知らんけど、入っていけない感じだったから自重した。
先生が教室を出てから、ゆかちゃんのプレイヤーにCDを入れて3人で聞いた。
キラキラした感じのイントロ。楽しげなメロディー。気持ちいいリズム。
そして、なんと言っても歌詞が可愛い。
計算する女の子。期待してる男の子。ときめいてる女の子。気にしないふり男の子。って...
「何て言うかすっごい....先生のキャラに合ってない。歌詞も。」
「中田先生ってこっちのセンスあったんだね!」
「イェイイェイのウォウウォウな感じだねぇ♪」
あたしたちはその日ずーっと学校に残って歌い続けた。
同じフレーズの繰り返しで覚えやすいし、楽しい。きっと来た人みんなですぐに歌える。
「ふぅっ!歌えるようになったね!」
のっちは嬉しそうだ。ヘタレが充実した顔してるのも珍しいね。
「明日は水野先生のところに行ってさっさとダンス覚えちゃおう!」
ゆかちゃんもいつになくノリノリ。 あ そーいえば、
「ねぇ、ゆかちゃん。さっきの中田先生の話って何?」
ゆかちゃんはぱあっと笑うと、
「まだ教えな~い♪お楽しみにっ!」
ま~た小悪魔は大変じゃねぇ。気になるなぁ。
そわそわと時計を見ていたのっちが急に大きい声を出した。
「今日はそろそろ帰らん?お母さん待ってるし。」
あ!もう8時半。こんなに遅くまで残ってるの久しぶりだぁ。
あたしたちはさっさと荷物をまとめて駆け足に校舎を後にした。
帰りも笑顔は絶えなくて。今日はいい一日だった。
オマケ♪
<Mr. Yasutaka Nakata side>
「ぃ良かったぁ~。」
オレは自宅に帰ると安堵した。後はあっちの件。
スーツを脱ぐと、ベランダに出てビールを手に取った。
「おっ、今日は星が多い。明日晴れるか。」
一気に飲み干す。
よっしゃ。オレはまたパソコンに向き合った。このペースなら今日は眠れるかもしれない。
オレ、頑張れ!
最終更新:2008年10月10日 23:09