(K)
「ちょっとのっち!ちゃんとひっくり返しんさい!」
「わわっごめん…」
「不器用〜」
じゅーじゅーと音をたてて丸まっていく
あ〜ちゃんの手前のキレイな形のタコ焼きとは違って
のっちのはなんて言うか…ぐっちゃぐちゃで笑ってしまう
「ふふっ不器用〜」
「ゆかちゃんまで…」
「これはさすがにダメじゃろ。これタコ焼きってよんだらバチ当たるレベルじゃない?」
「ゆかもそう思う」
「た、食べれたらそれでいいのっ!」
和気あいあいとタコ焼き焼いてるけど…
ゆかの頭の中は複雑な思いでいっぱいだった
正直…気が気じゃない
いつあ〜ちゃんに切り出すのか、
どのタイミングで言うのか、
そもそも本当に言うのかな…
"あ〜ちゃんだから大丈夫"
そう思っててもやっぱり、不安は完璧には消えてくれなかった
怖いと思ってしまうのは薄情なのかな…けど…
あ〜ちゃんに嫌われたくないんよ
でも、嫌われるかもって思うのもやっぱ薄情なのかな…
でも、こんな気持ちのままだけど、それでも久しぶりのお泊り会だから楽しみたいのも事実で
…今はとりあえず忘れてタコ焼きに集中しよう
「見て見てあ〜ちゃん!ゆか上手くない?」
「ホンマじゃゆかちゃんじょうずー!」
「ふふっあ〜ちゃんもじょうずー」
2人してのっちを眺める
「のっちは…うん、よし食べよっ」
「えっちょっ…どうせ下手ですよ…」
いじけるのっちを見てゆかとあ〜ちゃんは目を合わせて笑った
「笑いすぎでしょー」
「ごめんごめん。拗ねんで?はい、あげる」
「えっ!こんなキレイなんもらっていいの?」
「喜びすぎじゃろ。いいよ食べんさい」
「あ〜ちゃんは優しいなぁ〜」
熱々のタコ焼きを3人で作って食べる
ただそれだけなのにびっくりするくらい楽しいんはこの3人だからなんよね
おいしーねってあ〜ちゃんが笑う
…この笑顔を曇らせることになったらどうしよ、
「…ちゃん、ゆかちゃん」
「えっあ、」
「何ぼーっとしてんの。早く食べないと冷めるよ?」
「そうだね。いただきます」
だめだ…やっぱり…不安だよ
目の前にいるのっちからはなんの不安も見えてこない
いつもとかわらない、いつもと同じようにニコニコして
のっちは今何を思ってるの?
のっちは不安じゃないの?
のっちは怖くないの?
のっちは
「…て感じなんじゃけど、ってゆかちゃん聞いてる〜?」
「…あ、え、うん、聞いてた聞いてた!」
「ちょっと焦りすぎよ。何どしたん?今日ぼーっとしよるね?」
「…そんなこと、ないと、思う」
「いや、ゆかちゃんにしては珍しいくらい上の空じゃろ。ねぇのっち?」
「う〜ん…そうだね」
のっちはいつものあの顔で笑った
ゆかの大好きな顔で笑った
目が合うと眉をハの字にしてまた笑った
それがなんだか眩しくて、ゆかは顔を伏せてしまった
「やっぱそう思うじゃろ?なんかあったんゆかちゃん」
「…」
黙りこくってしまう
なんて答えたらいいのか分からないよ
…あったよ、あ〜ちゃん
なんかあるんだよ、あ〜ちゃん
「…あ〜ちゃん、ちょっと聞いて欲しい事があるんだけど」
ドクっと心臓が脈を打つのがわかった
その言葉に誘われてのっちを見ると、
真っすぐにあ〜ちゃんを見つめてる
すごい真剣な顔で
何を言おうとしてるのか、すぐに分かった
「…何?どうしたん?」
「うん、あのね」
話しだしたのっちに、ゆかは凍りついたみたいに動けなくなった
でも心臓だけは熱くて、これでもかってほどに…動いてる
「…あのね、へへ」
「ちょっと〜焦らしよるわこの子!何?なんか悪いこと?」
"悪いこと"
なんだかギクっとした
悪いこと…悪い、ことなのかも知れない
あ〜ちゃんにとって悪いことなのかも知れない
…いいことだとは言い切れない
どうしよう、すごく怖いよ…のっち
のっちはじっと動かないし何も言い出さない
その横顔からはやっぱり何を考えているのかはわからない
時間にしては少しの沈黙なのかもしれない
けどゆかは、そんな空気に堪えれなくなって
動かないのっちに、
服のすそを握りしめてるのっちに…
怖くなった
「いや!…悪いことじゃないよ」
聞こえてきた声は力強くて
のっちの言葉はしっかりとはっきりと、響く
視線があ〜ちゃんから流れて、ゆかに…
真っすぐ見つめられたかと思えば、ふっと優しい目になって
「こっち来て」
優しく、自分の隣を指した
…覚悟決めなきゃ
ゆかもしっかりしなくちゃ
何がどうなっても好きなんだもん
悪くない、悪くない…悪くないよねのっち
そっとのっちの横に腰をおろすとまた目が合う、今度は近くで
のっちはまた眉をハの字にして笑った
「ん?ゆかちゃんは知っとるん?」
ゆか達の様子を見てたあ〜ちゃんは不思議そうにしてて
あ〜ちゃんの言葉に、ただ1度、頷いた
「あのね、あ〜ちゃん」
すぅっと小さくのっちは息を吸った
その音を聞いてゆかは、息を止めた
「のっちとゆかちゃんね、…付き合ってるんだ」
シンプルな言葉
それでもそれはゆかに深く刺さった
手にかいた汗が気持ち悪い
"あ〜ちゃんだから大丈夫"
今はこの言葉にすがりつくしかない
最終更新:2009年06月17日 14:05