娘の誕生日にと、パパが開いてくれたパーティー。
嬉しかったけど、正直楽しくない。
パーティーよりも、ゆかが誘った彼女のことばかり気になってしまうから。
色んな人がゆかに声をかけてくるけど、どの人も話したい人ではなくて。
ドンペリ片手に適当に相槌を打って、作った笑顔で本心を隠す。
ただ、目線だけはずっと彼女を追い続けていた。
普段あまり肌を出さない彼女も、今夜はパーティーだからと大人っぽいドレスを着てる。
背中があいてて、ちょっぴりセクシー。
さっきから彼女に話しかけてる欲望丸出しの男が気に食わない。
「なんなの、アイツ…」
そんな不満の声を掻き消すように、流行りの曲が爆音で響き始めた。
一気に盛り上がるフロアと、挑発的に煽るDJ。
周りを取り囲んでいた人たちも、今はただDJのプレイに熱狂してるだけ。
やっと解放された。
一息ついてから、無言で彼女とあの男がいる場所へ向かう。
何を話しているかなんて聞こえないし、興味もない。
やけに距離が近いこの男が気に入らないの。
彼女がこんなに困った顔してるのに、あんたはそれに気づかない訳?
そんな男、
「最低だよ。」
彼女の肩に伸ばしかけた手を掃って、男を睨みつける。男は目が点になって、動かない。
「ゆかちゃん…?」
驚いた顔でゆかを見つめる彼女の手をとる。
「行こっか。」
「行くって…どこに?」
当たり前の彼女の質問にも答えず、人混みをぬってフロアから出る。
彼女の手を引っ張って、自分の部屋へ。
「良いの?ゆかちゃんが主役なのに、パーティー抜けて…」
「ひひっ、大丈夫大丈夫!バレないから!」
「そういう問題?」
「固いこと言わないでよー…別に良いじゃん、楽しくないんだし。
それに…あやちゃんも居心地悪そうだったし。」
「それは…」
ベッドに腰掛けながら、気まずそうに俯く彼女。
ゆかもその隣に腰を下ろす。
「それは…何?」
「…知らない人ばっかりなんだもん。周りにも人が一杯いてゆかちゃんと話せないし。
このドレスだって…恥ずかしい…」
「…ゆかは似合ってると思うけどなー。あやちゃん、凄く綺麗。」
「冗談は…いいよ」
「冗談じゃないよ。本当にそう思ったの。ゆかの目を見て。」
その言葉通り、顔を上げてゆかを見る彼女の目は
明かりも点けない部屋の窓から差し込む月明かりで輝いている。
その輝きに誘われるように、彼女の柔らかい唇に自分のそれを重ねた。
「あやちゃん…大好きだ」
「ふふっ、ゆかちゃん大分酔ってる?」
「んー…そうかもー」
お互いじゃれあいながら、緑色のシーツに身体を沈ませる。
彼女は子猫みたいにゆかに擦り寄って、耳元で囁く。
「私も、好きだよ。」
静かな部屋に僅かに響く重低音が、ゆかの鼓動と重なった。
お願い、DJ。
このまま回し続けて。
その間だけは、ゆかたち二人だけの時間だから。
おわり
最終更新:2009年07月17日 22:25