「あのぉ、、すみません、今日は一人なんです」
そう言って、きれいに手入れされた墓前の前に跪く。
初めてここを訪れたのは、先月初め。
その1ヶ月ほど前、
ゆかちゃんが
「のっち?紹介したい人がいるの」
そう言った。
「・・紹介したい、人?」
あまりにわけがわかんなくって、一瞬
頭ん中がフリーズした。
「うん、、、てか、、、会って欲しい人、かな…
いや、“会う”も、、なんか違うか・・」
目を見開いたまま、口をパクパクしてるのっちに
ゆかちゃんは、ただ曖昧に微笑んで
「んとね、、、のっちと出会う前まで
ゆかが、一番大切に想っていた人、に・・・ね」
そう、呟いた。
ゆかちゃんが、好きで好きで
仕方なかった人。
ゆかちゃんをおいて、
いなくなっちゃった、人。
昔、あ〜ちゃんからちょこっとだけ
話を聞いたことがある。
ゆかちゃんの、トクベツ。
きっと今でも、トクベツ、だ。
「えぇっと、、、あのぉ・・・・
今日のっちが、ここに来たのは
お願いというか、報告というか、、、
ま、そんな感じなんだけど・・
変だよね、この状況。
でもさ、ゆかちゃんが
のっちに彼を紹介してくれたんだから
だとしたら、のっちだって
ちゃんと、しなきゃ、、、ね?
*****
はぁ、、、ふぅ・・・・
大きく深呼吸。
「なになに、どしたの?緊張してるの?」
繋いだ指先は熱が篭り、じっとりしてる。
「そりゃ、、、まぁ・・・・」
ふふ、、そだよねぇ・・・
そう呟いた、ゆかちゃんの表情はやっぱり曖昧。
ただの“墓参り”じゃん。
そう思う自分がいるのも確か。
けれど
ただの“墓参り”じゃないのは、確か。
ある意味、
彼女の父親に会うより、緊張、だよね・・・?
「ねぇ・・・?」
「ん?」
無意識に投げかけた、問い。
「どんな人、だったの?」
ゆかちゃんは、、ただ
「んー・・・よくわかんない…
でも、一緒にいる心地は、とてもよかった、、、な…」
と。
「そっか・・・」
とだけ答えた、自分。
*****
「あのぉ、、、ですね・・・
ふわっと、風が吹きぬける。
落ち着け、自分。
「・・・嫉妬、、、してます、やっぱ」
なに言ってんだか、のっち・・・
もうすでに、比べようなんてないのに。
あなたが、もし
いなくなっていなかったら・・
のっちは、ゆかちゃんとは出会えてなかったんだ、きっと。
のっちにとって、ゆかちゃんは
もうすでに、トクベツすぎて
いるのが当たり前で、
いないことなんて、考えられなくって・・
人の死、を望むような
そんなヤツじゃないって
そうじゃないって、思うけれど・・・思いたいけれど・・・
んー・・・
「あぁ、、、びっくり、、しましたか?」
のっちは、先生より
ずっと子ども、で・・
実年齢がどうこうより
ただただ、幼いってこと、で。
しかも、同性。
あなたが生きていたのなら
ふさわしいのは
どっち、だったのだろうか?
「でも・・・譲れないんです」
うん。
現実、
あなたはいなくって
のっちは、ゆかちゃんと出会って
一瞬で堕とされて
いようが、いまいが
過去だろうが、未来だろうが
関係、ない。
ゆかちゃんの、そばにいるのは
のっちでありたい。
「たぶん、、、頼りないと思います。
キレイごとだけじゃ、どうにもならない関係だってことも
ちゃんとわかってる、、、つもり、です。
まだまだ、未熟で、、、ヘタレ、です」
けど
「ちゃんと、大切にします。
誰よりも、大切なんです。
ちっぽけな力だけど、全力で守ります」
*****
「彼女が、のっちだよ?
ゆかの、今、一番大切な人」
そう、無機質な石に、ゆかちゃんは語りかける。
「あ、ども・・」
のっちは、言葉が続かなかった。
それでも、ぎゅっと繋がれた指先が
とても、愛しかった。
その後も、彼女は
彼に、いろいろと話かけていた。
なんとなくしか、記憶には残ってない。
緊張してたのも、ある。
それ以上に
うまく、感情をコントロールできなかった。
あぁ、、、これは本気の嫉妬、だなぁ・・
なんて
ぼんやりと、そんなふうに思う自分がどっかにいた。
帰り道、思わず洩れた問い。
「ねぇ、、、彼が生きてたら、、、のっちたちはどうなってなんだろ?」
無神経な問い。
それでも、ゆかちゃんは
「・・・生きてたら、、か・・・想像つかないな・・」
「うん・・」
「でも、、、昔はよく考えてた、な・・
のっちに出会うまで、は」
「・・・」
絡み合う指先が、より一層強くなるのを感じた。
「ねぇ、、のっちと彼、、、、
言葉はうまく、続かなかった。
どっちのほうが・・?なんて
だって、そんなの愚問、だ。
「ゆかが、今、好きなのは、のっち。
そして、これから先も一緒にいたいと思うのも、のっち。
のっちだけ、、、だよ?」
愚問は、彼女の甘い甘い声に一蹴された。
ちっさいな・・・自分。
ごめんね、先生・・・
「うん、のっちも・・」
*****
答えはいたって、シンプルだった。
あの瞬間から
のっちには、ゆかちゃん、だけ。
囚われたのは
サクラではなく、彼女、に。
すみません。
のっちはヘタレだけど
世界一、宇宙一
誰よりも、ゆかちゃんを愛しちゃってるんです。
だから・・・
「つれていきます、ね?」
瞬間
再び
風が、、彼が
吹き抜けた気がした。
まいったなぁ・・・わかってますって・・・・
ふりかえると
どこまでも続く、大海原。
まぶしいな。
ねぇ。あの先にあるのは
のっちたちの未来なのかな?
なら、いいのにな。
それはきっと
最高に、幸せ。
最終更新:2009年07月17日 22:30