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「お姉ちゃん。これ、どこに入れればいい?」
「あー、それはそこでいいけぇ」

「んじゃ、この夏服は?」
「それはこっち」

「この本は?あっ、なんか出てきたよ。写真?」
「ん?・・・あっ!!」

「誰この人?大学の友達?綺麗な人じゃん。てか、お姉ちゃんすごい楽しそうに写ってるww」
「もー、ちゃあぽん勝手に見んでよ」

「えー、それが引越しを手伝ってあげてる人に言う言葉?w」
「はいはい。感謝してるけぇ。だからそれ早く返して〜」

ここは大学の4年間住んでいたアパートのワンルーム。
この春、無事卒業して4月から晴れて新社会人。
ここよりも会社の近くのアパートに引っ越す為、今はその作業中。
手伝ってくれてるのは妹のちゃあぽん。
そのちゃあぽんが手に持っているのは、彼女と一緒に写ってる唯一の写真。

そう言えば、そんな写真撮ったけ。
写真だけど、彼女の顔を見たのは久しぶり。
いつぶりかな?
覚えてないや・・・てか、思い出したくないや・・・。

「ちゃあぽん、ありがとう。もう、お姉ちゃんだけで大丈夫じゃけぇ」
「そう?んじゃ、帰るわ。なんかあったら携帯に連絡ちょうだいね」
ちゃあぽんが出てって、部屋にダンボールとあたししかいなくなった。



もう一度、あの写真を見る。
照れ笑いの彼女が写ってる。
ちゃあぽんの言うとおり、彼女の隣にすごく楽しそうに笑ってる自分がいる。
なんでこんな楽しそうだったんだっけ?
あぁ、思い出した。
これ撮ったの大学1年の冬だったような・・・。
彼女が使い捨てカメラを出してきて、勝手にあたしを撮ってて、最後の一枚を一緒に写ったんだ。

この写真のせいで、あの頃の封印していた記憶が段々甦ってきてしまった。
あの奇妙な3ヶ月間の同居生活。
すごく楽しかった切なかった哀しかった・・・あの奇妙な3ヶ月間の同居生活。

この写真だけを置いて突然消えた彼女。
勝手に上がり込んで何も言わないで突然消えた彼女。

あたしにあんな事を言ったまま突然消えた彼女。
あたしにあんな事をしたまま突然消えた彼女。

あたしにとって一年で一番大事な日に突然消えた彼女。
あたしとの約束を守らずに突然消えた彼女。
あたしの心をかき乱したまま突然消えた彼女。

あたしの中にまだ消えてなかった彼女。

彼女が消えたのは3年前。
彼女が消えて3年経つ。
あたしが彼女に初めて会ったのは3年前。
あたしが彼女を待って3年経つ。

どうして消えたのかは彼女本人しかわからない。
どうしてあたしも彼女を待っているのかわからない。

彼女を待ってても・・・もう、どうしようもないのに。
彼女を待ってても・・・もう、どうにもならないのに。

結局待っても待っても連絡も何も来なかった。
明後日にはあたしもこの部屋を出て行く。
彼女との唯一の接点のこのワンルームを、出て行かなければならない。



この物語は3年前にさかのぼる。
そしてこれは、あたしの物語でもあるし、彼女の物語でもある。
いや、むしろ突然あたしの目の前から消えた彼女の・・・のっちの物語。






最終更新:2009年07月17日 22:38