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シェイカーを振る引き締まった二の腕。
その一見筋肉質そうな二の腕の触感が案外ぷにぷにしてて気持ちいい、ということを、どれだけの人が知っているのだろうか。


例えば、あの子たち。

さっきから、少し離れたテーブルでその二の腕の持ち主であるのっちを見ては、
カッコイーだの、クールで素敵だの、あの瞳に見つめられたいだの、キャーキャー騒いでる。


そんな上辺の情報だけでしか彼女を知らないあの子たちでも、切に望めば、それを知ることができるのだろうか。
それとも、あの子たちがどんなに望んだところで彼女のことを1ミリだって知ることはできないのだろうか。


だけど、
そもそも、あたしはどれくらい、彼女のことを知ってると言えるの?




「おかわりぃー」


空いたロンググラスを差し出せば、カウンター越しの彼女が少し眉をひそめた。

なによ、いつもみたいに八の字にしてればいいのに。
のっちのくせにあたしに文句があるっての?


「ちょっと飲みすぎじゃ」
「なにぃ?」
「・・っこえぇぇー」
「お・か・わ・り、って言ってんのぉ」


まぁ、どうせ、

あの子たちも、その内寄ってきた男の子を適当に選りすぐって偶然お持ち帰りされるふりをするんでしょ?

「えー、そんなつもりじゃなかったのにぃ」ってね。
あの頃のあたしみたいに、さ。

そのための、大きく空いた胸元と、穿いてる意味がないようなスカート丈なんでしょ?


それに、
あの子たちよりは確実に、あたしはのっちのことを知ってるの。


「なんか、ゆかちゃん、ご機嫌ななめ?」


まさか。
今、最高にご機嫌じゃない?




◇◆◇◆◇◆◇◆◇




あたしたちの間で、あ〜ちゃんという存在が明確になった今でも、あたしたちの関係は変わらずだった。


それ以外の詮索はせず、お互いに対する態度も変わらなかった。

のっちは、時には強引だけど、優しすぎるくらい優しくて。
あたしは、そんなのっちに今も甘え続けている。


そんな笑っちゃうくらい変わらないあたしたち。



「ほら、ゆかちゃん、ちゃんと掴まって」
「ふぁ〜い」


帰り道。
歩くのがダルイとごねるあたしをしょうがないなぁ、と眉を八の字にしながら、のっちがおんぶしてくれた。


やたらと大きい自分のカバンを邪魔そうに持ちながら、背中にはあたしを乗せてゆっくり歩き出す。


「ねぇねぇ、のっちって、なんでいつもしょんな大きな荷物持ってりゅん?」
「あー・・・バイトの制服と、レッスン着が入ってるからかも」
「れっしゅんぎ?」
「そ、レッスン着」


ふわふわとした浮遊感に身を委ねれば。
酔いと相俟って気分もふわふわしてきて、なんだか心地いい。


「LSGだぁ!!」
「えるえすじぃ?」
「L・S・G!!!L・S・G!!!にゃははは!!」
「もぉ、ゆかちゃん酔いすぎ。意味わっかんねぇw」


あたしたちのケラケラ笑う声が誰もいない夜道に響く。


ふと、空を見上げれば、酔った頭にも月の明かりはキレイで。
目の前の街のカラフルな電飾とは対比的な、遥か遠い夜空に柔らかい光がぽっかり浮かんでいた。


「ねぇ、のっちぃ、」


こんな夜があるから、暗闇も嫌いにはなれないんだ。


「しゅきぃ」
「うん。のっちもだよ」


いつもより甘えたくなるのは、
きっと、この酔いのせい。


「のんのん、だぁいしゅき〜」
「はいはい、のんのんも大好きですよー」




だけど、
いつもより感傷的になってしまうのは、


「でもね、」


きっと、この柔らかすぎる月明かりのせいだね。


「ゆか、あ〜ちゃんのこともすきなの」
「うん。知ってる」


いつもより気持ちが不安定なのも、
きっと、月がキレイに輝きすぎるせいなの。


「すき、、だよ、、」
「うん。のっちもすき」


「すき」


目の前が霞んで見えるは、
きっと、この広い背中の持ち主が優しすぎるからだね。


「ごめんね、のっち・・」


一人を愛せない、
ズルイあたしを許して。


「ねぇ、のっちはどこにも行かないよね・・?」


これからもずっと、そばにいて。
あたしを甘やかし続けてよ。


そんなの、ただのエゴでしかないって、分かってるけど。
いつか変化は訪れるものだとは分かってるけど。


「・・・うん。大丈夫、だよ」


首に回した腕にぎゅーっと力を込めてより密着すると、いつかと同じさわやかで少しスパイシーなあの香りがした。
伸びた後ろ髪の少し跳ねかけた毛先に頬を擽られながら、そのまま首筋に顔を埋めたら、その香りが一層強くなる。


「ゆかちゃん?」
「・・・・・んぅ、、」
「ふふ、おやすみ」


ポンポンと背中を叩く一定のリズムにあやされて、心地いい眠気に誘われるまま身を預けた。




「ねぇ、ゆかちゃん、、」



ぼそぼそと呟かれたのっちの言葉は意識を夢の世界に移してしまったあたしの耳にはもう届いてこなかった。



「のっちはさ、辛い恋をするのには慣れてるんだ」

「でも、ゆかちゃんの辛い顔は見たくないから。。」

「ごめんね、ゆかちゃん」

「ごめん・・・・」




to be continued...






最終更新:2009年07月17日 22:43