<side nocchi>
学園祭10日前。
「のっち、おはよっ。」
下駄箱で朝からゆかちゃんに遭遇。ラッキー。いつもながら髪の毛サラサラでいいねぇ。
「おはよー!あれ?あ~ちゃんは?」
「うん、それなんだけど。」
そう言うとゆかちゃんは素早くあたしの制服のリボンを引っ張って体を寄せた。
いい匂いだぁ... うっとりしちゃうよ。
「のっち、あんたあ~ちゃんに何したん?不機嫌っぽいよ。」
耳元で囁くゆかちゃんの声は、いつもの甘さの中に刺を含んでいた。なんか怖いんですけども。
...って あたし何もしとらんよねぇ?昨日も上機嫌で別れたし。
「何もしとらんよ? あたしの所為っぽかったん?」
「いや、分かんないけど。あれはのっちの事考えてるときの顔じゃった。」
えぇっ!?こういうときのゆかちゃんのカンはまず外れてない。何したんよ、あたし!
ゆかちゃんはあたしを離すと、さっきまでのふわふわな声に戻っていた。
「じゃあ、後で教室でねぇ。」
「あぁ、うん...」
思い当たるところが無い。何だ?
その時ケータイがポケットの中で震えた。一件のメール。
「なんだ、クーポンか。レンタル新作半額じゃ!ラッキー!」
ん?メール? 昨日あ~ちゃんとメールしてたよね。昨日のメールの内容確認。
8時半頃からやりとりが始まって...11時であたしが寝て...
ヤバい。最後返信してない。最後の内容なんだっけ?急いで最後のメールを開く。
「のっちアタシの事嫌いになったん?」
はぃ!? 寝ぼけてたからその前後の内容が思い出せない。
しかもなぜかそれの前のメールがすべて消去されていた。
これに返信しないってヤバすぎる。
あたしは教室に駆け込んで、ダッシュでゆかちゃんのところに行った。
「のっち、心当たり見つけた?」
既に笑顔がコワい。悪魔の微笑になってる。
あたしは事の一部始終を説明した。
「はぁ... 本物のアホじゃね。どーやったらそんな深刻な話忘れるん?」
ゆかちゃんは本気であきれてるみたい。そりゃそうか。
「後であ~ちゃんに謝りんさい。許してくれると思うけど... 前後の話が分からんからねぇ。」
そして噂をすればなんとやら。あ~ちゃん登場。あたしを睨みつけるようにして横を通過。
最高の笑顔で振り返ってくれた、と思ったら、
「ゆかちゃんおはよっ!」
無視ですか。
「あ~ちゃんおはよ~。」
ゆかちゃんもまたフツーに笑顔で返しちゃう。
「ゆかちゃん、ヒドい。のっちの味方してよ。」
「悪いのはアンタじゃろ。後でなんとかあ~ちゃんに言ってみるけぇ我慢しなさい。」
流石!
「ありがと!やっぱゆかちゃんはいい人だねぇ。」
あたしがゆかちゃんの所を離れて自分の席に着くと、早速ゆかちゃんはあ~ちゃんの所に行った。
なにか話してる。どんどんゆかちゃんの表情が曇っていく。何だ!?
二人の会話は終わったみたいだけど、こっちを見るゆかちゃんの笑顔がコワい。
とりあえずホームルームが終わって、あたしはゆかちゃんのところへ。
ゆかちゃんの冷たい目があたしを見据える。
「のっち、あんた昨日のメールの内容ホントに覚えてないん?」
「うん、ホントに覚えてない。」
ゆかちゃんからここでトドメの一撃。
「あんた、サイテーじゃ。」
なっ... 本気で凹んだ。でもこのまま引き下がるワケにも行かない。
「あたしが何したのか教えてください。お願いします。」
本気でビックリしてる。あたしは知らずにあ~ちゃんを傷つけたかもしれない。
答えを待っていると、ゆかちゃんはゆっくりと話し始めてくれた。
「のっちは昨日あ~ちゃんとダンスの話しとったんよ。学園祭の。
そこからあたしの話になったって。忙しそうだとか、保健室通ってるとか。
それで、あ~ちゃんがふざけて、あ~ちゃんとあたしが同時に具合悪くなったらどっちを
先に保健室に運ぶかってメールしたら、即答であたしって送ったって。
んで、のっちが最後に見たメールに続いたみたい。
のっちが寝ちゃったこととかは一応説明しといたけぇ、あとは自分で何とかしんさい。」
あたし、なんて事を。バカだ。ある意味本音だけど、絶対に二人とも一緒に助けるのに。
「ゆかちゃん、ありがと。」
あたしは走り出していた。移動教室で、体育館から教室に向かおうとするあ~ちゃん。
廊下を人目を気にせずに走り抜けた。後ろから腕を掴んで強引に引き寄せる。
「ちょっ、 何すんのよ!?」
じたばた暴れるあ~ちゃんを思い切り引っ張って、トイレに連れ込んだ。
少し息を整えて、あ~ちゃんの目をきちんと見る。
あ~ちゃんの視線は揺れている。絶対にあたしの目を見ないようにしてるのがわかった。
「で、何よ?」
あたしは勢い良く頭を下げた。出来る限り深く、少しでも届くように。
「ごめん!あ~ちゃんの事すごい傷つけた。無責任にメール返してゴメン。
もし二人が一緒に倒れたらいっぺんに二人とも担いで助ける。二人とも同じぐらい大切じゃ。
嫌いになんてなるワケないじゃん。大好きだから。許して...」
しばらくしてあ~ちゃんはやっとあたしを見た。穏やかな、菩薩みたいな目で。
その瞬間あたしは下げた頭に優しい温もりを感じた。あ~ちゃんの手の温度。
「許す。」
そっと上を見ると、半分泣き笑い状態のあ~ちゃんの顔。
「ありがと。」
あたしとあ~ちゃんは顔を見合わせて笑った。最高にキラキラした笑顔で。
「しっかし、まぁ、ホントに手のかかるコ達じゃね。」
樫野有香にしてみれば、自分がネタになっていたのは気になるが、子供のケンカみたいな物。
二人ともまだまだじゃね。
制服を綺麗に畳むと、二人のところへ向かった。
帰りのホームルーム。
「さっ!終わったら水野先生にしごかれに行くよ!」
元気のいい、いつものあ~ちゃん。
「その前にちゃんと提出するものしなきゃ。」
ゆかちゃんはやっぱりしっかりしてる。
二人の後についていくのがやっぱり一番しっくりくる。あたしのポジションはここ。
いい位置にいるとつくづく思います。幸せモンだなぁ、あたし。
って... ん?プリントって...
「あぁ!プリントが!弁当のドレッシングでメチャメチャになっとる!」
あ~ちゃん爆笑、ゆかちゃん苦笑。
「やっぱりのっちはオチ担当じゃ。」
「そうそう、もーちょっとしっかりしてもらわにゃ。」
「先生に謝ってくる!」
あたしは猛ダッシュで中田先生に謝りに行った。
冷めた中田先生の反応。沸く教室。やっぱりあたしはオチ担当なのか。
大本彩乃。まだまだ成長が必要そうです。学園祭までにもーちょっとレベル上げ頑張ります!
最終更新:2008年10月10日 23:27