《現在》
サイドN
二人で見上げた満天の星空も全部嘘じゃなかったのに、なんでこんなふうになっちゃったんだろうな。
ねぇあ〜ちゃん、覚えてる?のっちはずーっと覚えてる。
綺麗だね。って言って、夜空を見上げるあ〜ちゃんのことも、
少し寒いかな。って言って、肩を震わすあ〜ちゃんのことも、のっちはずーっと覚えてるんよ。
『くだらないことはよぉ覚えとるくせして、肝心なことは忘れよるん?』
あ〜ちゃん、ごめん。やっぱりのっちなんも覚えてないや。
綺麗だね。って言って夜空を見上げたあとに寂しそうに呟いた一言も、
少し寒いかな。って言ったあと、震わせたのは肩だけじゃなかったことも。
ごめん、やっぱりのっちなんも覚えてないや。
でもさ、あ〜ちゃん。そんなのはお互い様じゃんか。
『ずっと傍におるけぇ、大丈夫よ』
一番肝心なこと、忘れてるじゃんか。
好きって感情は肝心じゃなかったのかな?
だって、どんなに時間がたったところで、あ〜ちゃんのこと好きって気持ちは忘れそうにないもん。
肝心なこと忘れちゃうのっちだから、それまで肝心じゃなかったってことだったのかな?
でも、ちがうよ。ちがうよ、あ〜ちゃん。
そこを飛び越えるほどだったからだよ。のっちは変わらないんよ。今も昔もこれからだって。
忘れなくちゃと思えば思うほど、心の奥の奥にきざみこまれてることに気付くんだよ。
それだけ想いが強かった。そうでしょ?そうゆうことだよ、あ〜ちゃん。
二人で見上げた満天の星空も全部嘘じゃなかった。
のっちの気持ちも二人で見た星空も、変えることなんて、それを無かったことになんて出来ないけど、
あ〜ちゃんがいなけりゃ夜空に星すら出ないじゃんか。
そうか、そうか。変わったものは、この空だ。
あ〜ちゃんがいなけりゃ星すら出ない、ただの暗闇じゃんか。
《過去》
サイドN
『うん、、うん、、うん、わかった。』
『うん、ごめんね。』
『うん、大丈夫。じゃ、また、、ね?』
『ん。』
電話越しに聞こえるこの人の声は、別れ話をしてるのにいつもと変わらないままで、安易に表情まで想像できた。
どーしてだろ?これがあ〜ちゃんが相手だと、途端に何もわからなくなる自分がいるってゆーのに。
『おーい?あ、や、の、ちゃーん?』
ボーっとしていた頭に普段は呼ばれもしない呼び方をされ、急に少し寂しくなる。
『あ、うん。じゃ、バイバイ。』
電話越しに聞こえるその人の小さな含み笑い。
『うん。じゃ、またね。』
その人は最後まで半分ふざけて、半分まじめで、だけどそれを隠すように笑いながら、こう言い残す。
『またね。』
それって終わりの挨拶じゃなくない?
あ〜ちゃん、なんかのっちって中途半端じゃない?
だけど許してくれるでしょ?あ〜ちゃんへの気持ちは超中途半端じゃないよ。
のっちってさ、昔からあ〜ちゃんのすぐ隣にいたくせにあんまり理解してなかったのは、多分あ〜ちゃんはどこへも行かないって自負してたんだろうな。
だからあ〜ちゃんのこと最近になって気付くことや知ることだってあるよ。
でもそのくらいがちょうどいいよね?そのほうが楽しいもん。
こんなのっちだからさ、あ〜ちゃんのこと“好き”って自覚したのも遅くって、多分どっかで気付いていたんだろうけど、
“どこへも行かないなら、自分のものにしなくてもいい”って思っててさ。
だからかなんだかわからないけど、高校生くらいになって急に友達が増えちゃって、なんだかやたらとモテちゃった時にはさすがに焦ったよ、のっちも。
多分そのころなんだろな、自覚したのは。
でもやっぱりのっちって中途半端でさ、全然まったく煮え切らないヤツだからさ、こんなに時間がかかっちゃったよ。ごめんね。
だけどあ〜ちゃん。そんなところも全部ひっくるめてのっちを好きでいてね?
のっちは何でも許すから。
最終更新:2009年07月17日 23:45