学校が終わって家に帰ると、2人と1人の時間が始まる。
のっちは家に入れば、そこからはのっちワールド。
ゆか達が入れる扉は、見当たらない。
「うん、うん」
日課になりつつある、あやちゃんとの長電話。
電話に出たその瞬間から、二人を繋ぐアンテナは、あやちゃんの作り出す五線譜に変わる。
「ほうなんじゃ、すごいね」
止まる事を知らないマシンガントーク。
呆れるのが普通かもしれない。
けど、あやちゃんの柔らかい甘い声、ゆかは聴いてるだけでも幸せじゃけぇね。
フワフワのベッドに仰向けに転がり、真っ白な天井を見上げる。
映写機で映し出されるみたいに、あやちゃんの百面相が浮かんでは消える。
すごく幸せな…時間。
「あ、もうこんな時間じゃね」
あやちゃんがサラリと言い放つ、ある意味凶器な言葉。
時間、ゆかは時間が嫌だ。
あやちゃんとゆかを切り離すのは、いつも時間だから。
「…切ろっか?」
映し出せなくなった映写機、白い天井も眩しいだけ。 <挿絵1>
「こっちからかけたんに…ごめん」
「平気よぉ、明日ね」
…あんなにしっかり繋がっていたアンテナは、プツンと簡単に切れてしまった。
見えない電波で繋がるだけじゃ嫌。
あやちゃんのところまで今すぐ走り出したい。
そして、あの綺麗な手をしっかり繋ぎ止めるの。
電波と違って、簡単には切れないから。
…なんてね。
「…ご飯食べよ」
無理なんよ。
ゆかの好きとあやちゃんの好き、似ている様で全然違うから。
だから、ごまかしてるんよ。
ゆかの気持ちも、きっとlike。
実は大きな勘違いだった…、そんなふうにこの気持ちがなくなればいいのに。
…ご飯を食べていても、ぉフロに入っていても、脳内から最高の甘い笑顔が消えることはないけれど。
自分の顔が曇っているのが、わかる。
あと十数時間で、また会えるのに。
なんでこんなに寂しい?
見えない何かが、あやちゃんを連れていってしまうから?
違う。
知ってるあの子が、あやちゃんにベタベタするから?
違う。
違う違う、全部違う。
ゆかの気持ちのせいなんだ。
本当は、本当はね――――
「まだ9時…かぁ」
まだ朝にならんの?
素敵な朝が来て二人で過ごしたら、当たり前の幸せがくる。
なのに、ゆかはこんなに焦ってる。
おかしいでしょ?
朝が来ればいつも通り、あやちゃんと一緒にいれるのに。
朝になって、あやちゃんの笑顔で初めて1日が始まって。
ふわふわなあやちゃんの隣では、ゆかはおだやかで優しい人になれる。
…そこで初めて天秤が平行になるんよ。
それから…
あやちゃんを独り占めするには、柔らかで綺麗なスタイルでキラキラ。
これが必要で…、そんなゆかをあやちゃんは誉めてくれる。
その優しい手が、おでこを撫でるの。
<挿絵2>
ああ
だめだ。
人工の夢いっぱい、違和感だらけ。
描いたものは素晴らしい新世界。
でも、自分を隠してアンテナも届かない。
それでも恋をしたいから、テレパシー信じて。
…君に伝わる、ずっとそう信じてるだけ
だって、
この気持ちだけは作りものじゃないでしょ
「say love me girl…♪」
――――loveなんよ、恋をしてるんよ、本当はね。
最終更新:2008年10月10日 23:32