これは彼女と二度目に会った話。
のっちと初めて会った日から3日が経った。
あたしはのっちと会った事を、大学の友達にもゆかちゃんにも言わなかった。
別に隠す事じゃないけど、なんとなく言えなかった。
てか、あんな出会い方を言うのが恥ずかしかった。
みんなの情報によると、のっちはあまり大学に来ない。
来たとしても午後から、ふらっと現れる程度。
で、必ず隣には彼女らしい子が付いているらしい。
でもその彼女は見る度に違う子。
じゃあ、あの時キスしてた子は一応のっちの彼女だったのかな?
うーん・・・やっぱりそういう話を聞くと、益々あたしはのっちと違う世界の人間だって思った。
ま、別にのっちと、どうこうなるって決まったワケじゃないけど。
「あ〜ちゃん、お昼どうする?」
「あっそうだ!今日お弁当じゃないんよ。学食に行くけぇ」
「んじゃ、うちらお弁当だから先食券買ってきなよ。外の席で食べるから場所取っとくね」
「ありがとう」
あたしはみんなより一足先に急いで食堂に向かう。
食券販売機は長い行列。
あたしもそこに並ぶ。
並びながら、何食べようかなって考える。
そうだ、久々にカレーでも食べようかな?
そう思ったら順番が来た。
カレーを買う為にお金を入れる。
ジャラジャラジャラ・・・。
あっ、しまった・・・。
30円足りん。
ヤバイ、そうだ!1000円札入れよう。
あ・・・お札中止のランプが付いとる・・・。
ヤバイ、後ろの人の早くしろって無言のプレッシャーが怖い・・・。
えぇ・・・どうしよう。
早く、みんな来ないかな。
携帯で呼ぼうかな・・・。
あたしが販売機の前でアタフタしてると、横から誰かが30円を入れてくれて、カレーのボタンを押した。
その人はちゃっかり自分の分のカレーも買っている。
「あっ!!」
その人の顔を見たら思わず、声が出てしまった。
30円を入れてくれた人は、のっちだった。
のっちはあたしをチラっと見て、また口角をニュって上げて笑った。
そして何も言わずに、食券を持って食堂の奥へと行ってしまった。
あたしはお礼をいう為にのっちの後を追う。
「あの・・・」
のっちは無視。
「あの!!」
今度は強めに。
「ん?えっ?あたしに言ってたの?」
ケロっとした返事。
「あの・・・30円ありがとう。今、こまかいのないから、後で返します」
「30円くらい、いいよ」
初めて会った時とだいぶ雰囲気が違う感じ。
イヤラしい雰囲気じゃなくて、優しい雰囲気だ。
「えっ、でも・・・」
「あっ・・・」
のっちはあたしの肩越しに何かを見て、気まずい顔つきになった。
「じゃ、30円の代わりに一緒にご飯食べてくれない?」
「は?」
「お願い。今だけでいいから!」
「えぇ・・・」
そう言ってのっちは自分のカレーのトレイとあたしのカレートレイを持って、隅っこの一番目立たない席に座った。
「いただきます!!」
のっちはおいしそうにカレーを食べる。
その姿は少年のようで、可愛かった。
これを見るとみんながのっちにハマるのが、ほんの少しだけわかる気がしたような気がした。
とりあえずあたしもおなかが空いてるから、目の前のカレーを食べ出した。
二口目のカレーを食べようとした時、あたしの背後からのっちを呼ぶ声が聞こえた。
その声に反応して振り向くと、明らかにあたしに対して敵意むき出しの女の子が立っていた。
「のっち!!何で昨日携帯出なかったの?あたしずっと鳴らしてたんだけど!!」
その子はまずあたしをすごく睨みつけて、次にすごい剣幕でのっちに噛み付いた。
のっちはそんな事全然気にしてない感じで、おいしそうにカレーを食べてる。
ヤバイ・・・これって修羅場?
「のっち!!聞いてるの!!」
その子はバンって、大きな音を立ててテーブルを叩いた。
「聞いとるけど・・・ごめん、誰だっけ?」
のっちのその言葉を聞いて、ちょっと引いた。
それはあまりにも冷たくて酷い言葉だったから。
「最低!!!死んじゃえ!!」
言われたその子は目を潤ませ、あたしの飲んでた水をのっちに浴びせた。
水を掛けられたのっちはすごく冷静で、自分の鞄からタオルを出して濡れてる箇所を拭いている。
あたしはその一部始終を一番よく見える特等席で見てしまった為、呆気に取られてしまった。
「うーん、最低なのはわかるけど、さすがに『死んじゃえ』は言い過ぎだと思わん?w」
のっちは苦笑しながら言う。
なんだ、この人・・・自分がしてる事が最低なの自覚してるんだ・・・。
だったらなんでそんな事ばっかしてるんだろ?
「ごめんね、あ〜ちゃん。今、新しい水持ってくるからね」
のっちは眉をハノ字にしてあたしに新しい水を持ってきてくれた。
ん?この人、今あたしの事、あ〜ちゃんって呼んだ?
「ねぇ・・・今、あ〜ちゃんって呼んだ?」
「うん。呼んだけど?何で?」
あっけらかんとしてる、のっち。
「なんで、あたしのあだ名知っとるの?」
「だって、みんなにそう呼ばれてるじゃんw」
「えっ、あ〜ちゃんの友達知っとるの?」
「ううん。知らん。けど、たまにここ来ると、あ〜ちゃんたち見かけるからさ。それで覚えてたんだ」
「じゃあ、あの時もあ〜ちゃんの事知ってたん?」
「あの時?」
「3日前じゃけぇ」
「3日前??」
のっちは本気で覚えてなさそうな顔をしている。
「自販機の裏で、、、キ、キスしとったじゃろ・・・」
あたしは声のトーンを小さくして訊く。
「ああ!!あれね!」
「・・・で、知ってたん?」
問い詰めると、のっちはまたニュって笑っただけ。
答えてくれなかった。
みんなこの笑顔でハマって、落ちて、誤魔化されて、泣かされるのかと思った。
あたしはそうなりたくないから、答えないなら別にそれでもいいやと思った。
「ねぇ、あ〜ちゃん」
「なに?」
「実はあたし、友達いないんだよね」
「ふーん、そうなんじゃ・・・」
そりゃそうじゃ、最低な事ばっかりしてるんだもん。
友達なんて作れないでしょ。
「物は相談なんですが・・・」
何よ、改まっちゃって。
「あ〜ちゃん、あたしの友達になってくれませんか?」
「は?」
いきなり何を言っているの?この人は・・・。
「あっ、やっぱ嫌?」
シュンとするのっち。
ヤバイ、悔しいけどまた可愛いって思っちゃった。
「い、嫌じゃないけど、突然だったからビックリしただけ・・・」
「んじゃ、なってくれるの?」
今度はキラキラした瞳で見てくる。
「ええ、よ・・・」
「マジっすか!!ありがとう!!嬉しいな〜」
最後はニコニコした笑顔で見てきた。
この時、なんでOKの返事をしたんだろう。
この時、NOって言っとけば、無駄に傷つかずにすんだのに。
バカだね・・・今頃気付くなんて。
でも、やっぱり断れなかった。
よくわからないけど、断れなかった。
なんでだろ・・・見えない引力があたしとのっちを引き寄せてたのかな?
なんて・・・本当はそんな素敵で運命的じゃなかったけどね・・・。
最終更新:2009年07月17日 23:54