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目が覚めると家にいた。
あれ?どうやって帰ってきたんだろう…。昨日のことがよく思い出せない。
確か、実家帰って、怒られて、ハコ行ったけどやってなくて、帰ろうとしたけど…。
あ!そうか、夢見てたんだ!記憶が曖昧って事は夢なんだよ。にしても、悪い夢だった。
起き上がろうとすると、ソファーの端から誰かの頭が見えた。
誰!?ま、まさか、泥棒!?っつか、なんで、泥棒がソファーで寝てんの!?
ヤバイ、どうしよう、警察呼ばないと…。
っつか、悪い夢見て、泥棒に入られて、最悪の目覚めだよ…。
そうこう思っていると、泥棒が起きた!
ヤバイ!殺される!誰か助けて!
そう思い布団に隠れると
「のっち、起きたの?」
その声は…あ〜ちゃん!まさか、あ〜ちゃんが泥棒だったの!?って、そんな訳ないだろ…。
っつか、なんで、あ〜ちゃんがいるの?
布団から顔を出すと
「良かった…。のっち、大丈夫?」
「…。」
声を出そうとしても、声が出ない。なんで!?
…あ、でも、さっきから喉痛いし、体だるいし、熱っぽいし。風邪引いてるよ…。
「なんか、具合悪そうだね…。熱測ってみよ?」
黙って頷いて、熱測っていると
「のっち、昨日何かあった?」
心配そうな顔で聞くあ〜ちゃん。
昨日かぁ…。やっぱ、夢じゃなかったんだ…。恐らく、あ〜ちゃんは私を家まで連れて来てくれたんだ…。
夢じゃないとわかった途端、気分が落ち込んだ…。
私が何も答えられないでいると、体温計の音が鳴った。
「…あ、体温計見せて。…うわっ、39度あるよ!」
まじで…あぁ、もう最悪だ…。
「とりあえず、風邪治そうか。のっち、おなか空いてる?」
こんな最悪な状況でも人間っておなか空くんだね。腹ペコのっちだよ…。
また、黙って頷くと
「じゃ、おかゆ作るから少し寝ててね。」
状況を知ってか知らずか、あ〜ちゃんは優しい。
こんな私だけど、その優しさに甘えてもいいのかな…。



二、三日して風邪は直ぐ治った。
あ〜ちゃんがずっと看病してくれてたお陰だ。
「あ〜ちゃん、ありがとね。」
「ううん。風邪治って良かったよ。」
「うん…。」
正直、風邪は治っても気分は晴れなかった。
あのまま、雨に打たれて消えて無くなってしまいたいと思ってしまった。
「ねぇ、のっち…。」
「ん?」
「あの日、何があったの?」
「…。」
その事は…、言えないよ。
「のっちの事、心配だよ…。」
私みたいな人間、心配しなくていいよ…。
「あ〜ちゃんには、関係ないよ…。」
「関係ないなんて、悲しい事言わないでよ!」
「…。」
「一人で考え込まないでよ!のっちが辛いのなんてイヤなの!…のっちの為なら、あ〜ちゃん何でもするから…。」
泣いてるあ〜ちゃんを見て、悲しくなった。
私はあ〜ちゃんに悲しい想いをさせて…。
自分が情けなくて泣けてきた…。
「のっち、一人で悩まないで…。」
あ〜ちゃんに抱き締められて、余計泣けてきた…。
「あ〜ちゃんが側にいるから…。」
こんな私の側に居てくれるの?
「ずっと、側に居る。」
…辛いよ。私を…、助けてよ…。
「…のっちが辛いの、あ〜ちゃんが救ってあげる…。」
私はあ〜ちゃんにしがみ付いて泣いた。嗚咽まじりに今までの事を話した。あ〜ちゃんは泣きながら話を聞いてくれた。
暖かい腕の中。今まで冷え切っていた身体の全細胞に暖かい血が通い始めた。
君の腕の中、私はとても素直になれた。
「のっち、話してくれてありがとう。…大丈夫だよ、絶対分かってもらえる。諦めちゃダメだよ。絶対、上手くいくよ…。」
あ〜ちゃんの言葉は、いや、あ〜ちゃんの存在が私を安心させた。
あ〜ちゃん、私もう少し頑張ってみようと思う。




つづく





最終更新:2009年07月22日 21:41