のっちと一緒にカレーを食べてる場合じゃない。
早くみんなの所に行かなきゃ。
そう思ってあたしは立ち上がり食堂全体を見渡す。
「どうしたん?」
急に席を立ったあたしを不思議そうに見つめるのっち。
「友達の所に戻らないと・・・」
「えぇ〜、別にいいじゃん。あたしと一緒にお昼食べようよ」
「そうもいかないんよ・・・」
「なんで?」
「なんでって、こっちも色々付き合いがあるけぇ」
「ふーん、なんかめんどくさいんだね」
のっちはサラっと言ってカレーを食べる。
めんどくさいって・・・あんたがめんどくさくしたんじゃろ!!
キーーー!!絶対、みんなに「なんで、のっちと一緒にいたの?」って言われる。
「そんな気を使う友達だったら捨てちゃえば?」
のっちはすごい事をまたサラっと言った。
友達を捨てるって発想は、どっから来るんよ・・・。
「は?あんた、自分がなに言ったかわかっとんの?」
「んー?」
また笑顔で誤魔化した。
「もう、あ〜ちゃん行くけぇ!!」
あたしは鞄を手に取る。
「え!?マジで?」
さすがののっちも慌てた様子。
「あ〜ちゃん、あたしも友達でしょ?あたしより、そっちの友達取るの?」
なんなん・・・。
のっちの考えてる事がさっぱりわからん。
なんでそんな事言うの?
なに?あたしを単に困らせたいの?
そんな質問されても、あたしはどう答えたらいいのよ?
「・・・しょうがないじゃろ。だったら、のっちも一緒に来ればいいけぇ」
「ヤダ・・・」
めんどくさいのはどっちよ。
「あたしの友達はあ〜ちゃんだけだもん。行かないでよ・・・」
あっ・・・これか。
みんなこうやって甘えられて、のっちの罠に掛かっちゃうんだ。
ふん、あたしは簡単には掛からんよ。
♪〜。
この音はあたしの携帯の着信音。
急いで携帯を取ると、友達からのメールだった。
『あ〜ちゃん、どこにいるの?うちら、もう席取ってあるよ』
よかった、あたしがのっちといるのをみんな知らない。
「じゃ、行くけぇ・・・」
「わかった〜」
へ?な、なに?
今さっきまで、駄々こねてたよね?
別に引き止めて欲しいとは思わなかったけど、急に態度があっさりになったから拍子抜けしちゃった。
ほんと、なんなん?のっちって、わけ分からん。
あたしは適当な理由で遅くなったって言って、友達と合流した。
みんなと一緒にまたお昼を再開。
みんなの会話を聞いて愛想笑いをする自分がいる。
輪を乱さないために、精一杯空気を読んでる自分がいる。
そこには、みんなといて疲れてる自分がいた。
『そんな気を使う友達だったら捨てちゃえば?』
のっちがサラリといったこの言葉が、頭から離れなくなっていた。
午後の授業が全て終わりみんなにバイバイを言って、ひとりっきりになった。
教室にはあたしひとりで、それがとっても楽だった。
あたしは大きくため息をついた。
「そーんな、でかいため息つくと、幸せ逃げちゃうよw」
声の方向を振り向くと、一番後ろの席にいつの間にか、のっちがふんぞり返って座ってる。
「・・・いつからいたん?」
「あ〜ちゃんがため息をつくちょっと前〜」
のっちは何故かニヤニヤしてる。
「なに?あんた、ストーカー?」
「ひどっwさっき友達になってくれるって言ってくれたじゃんww」
「そうだっけ?覚えとらん」
「え〜、マジっすか!?ちゃんとこの耳で聞いたもんw」
「じゃ、空耳じゃけぇ」
「あっ、そっか!!空耳だったのか〜。って、コラw」
あれ?のっちと喋ってると気を使わなくていい。
あれ?のっちと喋ってると愛想笑いしなくていい。
あれ?のっちと喋ってると空気を読まなくていい。
あれ・・・のっちと喋ってると、楽しいのは、気のせい?
「ねぇ、あ〜ちゃん・・・。一緒に帰ろうよ」
「なんで?」
「なんでって、友達だから?w」
「なんで、あ〜ちゃんなん?」
「へ?」
「可愛い子なら、そこら辺にいっぱいいるじゃろ・・・。なんで、あ〜ちゃんと友達になろうとしたん?」
「あ〜ちゃんだから!」
は?なにそれ?答えになってないし・・・。
それになんでそんなに子供みたいな純粋な顔で答えるのよ。
「意味わからん。もう、帰る」
「えぇ、ちょっと待ってよ。一緒に帰ろうよー」
「ヤダ!!」
「あ〜ちゃぁぁぁん!!!ww」
この時は、まだのっちの事が全然わからなかった。
この時は、いつかのっちの事をわかるだろうと思ってた。
結局3年経った今も、やっぱりのっちの事はわからないまま。
いつかわかるだろうって思ったのがバカだった。
一瞬でもわかりたいと思ったのが、虚しかった。
きっとのっちの事は一生わからないまま。
わからなかったから・・・だから彼女は、あたしの前から消えちゃったんでしょ?
最終更新:2009年07月22日 21:50