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いつもより早めに収録が終わり、のっちの家にそのまま向かう。
あ〜ちゃんがまた寂しそうな顔をしたのを見逃さなかった。
再びくだらない優越感を得て、溜め息が出る。


「で…話聞かせてよ。」


のっちが二人分の紅茶をこちらに運んできた。


「何か悩み事?」


私は渇いた唇を潤すように、紅茶に少し口をつける。


「…あ〜ちゃんが関係してんのかな。振り向いて欲しいってことは。」


のっちもまた紅茶に口をつける。次に話すのは私の番だ。


「コンプレックスなんよ。」
「コンプレックス…?」
「あ〜ちゃんと一緒にいると、自分の全てにコンプレックス感じんの。あ〜ちゃんはゆかの持ってないもの全部持ってる。
ゆかはあ〜ちゃんみたいに素直じゃない。優しくない。歌だって上手くない。人を引き付ける才能もない。」
「うーん…その気持ちわからなくはないよ。のっちだって、あ〜ちゃんのことが羨ましく感じる時あるもん。」
「のっちは辛くないの?」
「んー…のっちはあ〜ちゃんのそこに惹かれたんだけどね。」


少しはにかんで答えるのっち。


「やっぱり、のっちってあ〜ちゃんのこと好きだったんだ。」
「『やっぱり』って…気づいてたの?」
「気づくも何も…」


鋭いんだか、抜けてるんだか…。



「…でもゆかちゃんのことだって羨ましく感じる時あるよ。
頭良いなぁとか、髪サラサラで良いなぁとか…ゆかちゃんにだって魅力はあるんだから。」


普通の人が言ったら気を遣った言葉としか思えない言葉も、のっちが言うと素直に受け取れる。
のっちも彼女に負けないくらい、真っ直ぐだ。


「ありがと…」


素直な気持ちを口に出したのは、久しぶりな気がする。


「ん、いやいや…」


のっちの締まりのない笑顔に、少しは癒された。









つづく





最終更新:2009年07月22日 22:12