アットウィキロゴ
Side K
今私に触れて口付けをしてくるのは、何度かその行為をしたことがあるその人ではない。

いつも元気に笑って、私たちに笑顔をくれるこの子が。
まるで天使のように笑うこの子が。
子供のような泣き顔をするこの子が…。

『いけないこと、しよっか…。』

突然、私を押し倒してそう言った。

何かの悪戯かと思って、笑ってやり過ごそうとしたけど、彼女の表情は微笑んでいて、でも、その瞳の奥は違っていた。
何かを強く欲しているように据えられていた。

私の部屋に遊びに来て、いつもと何一つ変わらない状況で、何がそうさせたのか分からない。

ただ、その瞳に奪われてしまった私は、全力の抵抗をすることはなかった。



Side A
いつから、こんな気持ちになったのか自分でも自覚が無い。

今までも、二人がお揃いの指輪をしていたことなんて、何度だって見たことがあるのに。
だから、もしかして付き合っちゃってるのかな?なんて思ったこともある。

もちろん、大好きな二人がそうなって幸せなら、あたしも幸せだ。
その時になれば、ちゃんと二人から言ってくれると思って聞くことは無かった。

ある日、新しいお揃いの指輪をしてきた二人。
それだけなら、いつもと変わらなかったけど。

違っていたのは、二人の雰囲気。
けして、大きく変わったわけではないけど、以前にも増してやわらかいというか、お互いの気持ちが通じたような、落ち着いた雰囲気。

予想していたのに、自分の中から沸きあがってきた想いは予想と反したものだった。

もしかしたら、この時から、あたしの中で何かが崩れ始めたのかもしれない。

あたしに何かあれば、いつだって一番に心配してくれて、力をくれる二人。
そして、大好きだと言ってくれた二人。
それは、変わらないけど…。



きっと心のどこかで、二人の一番が自分なんだと、思い込んでいたのかもしれない。
なにより、一番でいたかったんだ。

二人から愛されたいなんて、なんて欲張りなんだろう…。


ゆかちゃんの部屋に訪れたあたしに、彼女の…のっちの話をしてくるゆかちゃん。
少し前なら、全然気にならなかったその話も、今はあたしの中を掻き乱していく。

気付けばあたしの体は勝手に動いて、ベットに座って話していたゆかちゃんを押し倒していた。

「ねぇ…、いけないこと、しよっか…。」

その言葉を冗談ととったゆかちゃんは
「もう〜、どうしたんよ?変なこと言ってぇ。」
笑ってこの状況を抜け出そうとするゆかちゃんを、何も言わずに見下ろす。

ゆかちゃんが欲しい……。

今、その目に映るのはのっちじゃなくてあたしだけ。
あたしのことを、考えてよ。

「あ〜ちゃん?」
あたしの名を呼ぶその唇を塞ごうとすると、抵抗をみせるゆかちゃん。
「…だめっ。」

でもその抵抗は、本気のものではない。
そんなに力を入れなくても押さえつけられるから。



少しだけ強引に唇を奪い、舌まで奪いにいく。
「んっぅ、んぁ…。」
そこから漏れてきた声は、とても色っぽい、普段の声とは違うゆかちゃんの声。

この声をすでに知っているのっちに、かるい嫉妬を覚えつつ。
その声に誘われるまま、ゆかちゃんの服を乱し、肌へと触れていく。
そして、耳元に唇を寄せて、こんなことを聞いてみた。
「のっちは、どんな風にしてくれるん?」

その質問にひどく驚いたようで
「な、んで。あ〜ちゃん、知って…?」
「そんなん、見とったら分かる。」
「そぅ…なんだ…。じゃあ、なんでこんなコト。」
訴えるような目。それはそうだ。

でも、それには答えず、行為を続けていく。
指先から足の先まで。のっちが触れたであろうすべてに触れて、唇を這わせていく。
その度吐き出される吐息が、さらに思考をマヒさせる。

次、どんな風に触れられても、あたしを思い出してくれるように。
そのきれいな肌に刻み付けていく。

途中、目に入った例の指輪。
「…指輪…外しちゃうよ?」
もちろん、首を横に振ってそれは許してくれなかった。



「…冗談じゃよ。」
あたしとしても、外さない方が良い。
自分のしていることの、重さを確認しなくちゃいけないから。

そして、すでに熱くなりきっている、ゆかちゃんの中へと進もうとすると。
「…そ、こ、だめぇ…。」
「なんで?」
「やっ、ぱり…こんな、だめ…。」

のっちのことが気になるの?
「ふ〜ん…。でも、ココ。こんなんじゃよ?良いの?止めちゃって。」
わざと音が聞こえるように指を動かす。

「はぅっ。…ん、あっ。」
素直に反応してくる。

「それに…。」
「っ!!!」
そのまま、ゆかちゃんの中へと進めていき。

「好きじゃろ?…イケナイ カンケイ…。」
「んんっっっ!」
耳元で囁くと、ビクッと反応して中まで伝わってくる。
「のっちにはヒミツにしとくけぇ。今は…あ〜ちゃんをいっぱい感じて?」

秘密。その言葉がスイッチになったようで、一際大きな声を上げだしたゆかちゃん。



優しく、そして激しく。ゆかちゃんを攻めあげて、絶頂へと導いていく。
「ゆかちゃん…好き。」
その言葉と同時に、大きく体を揺らし達したゆかちゃんの顔を覗き込む。
「はぁ…はぁ…ゆか、も、好きっ。」
熱にほだされた表情で、まるで次をねだるように言ってくる。



堕ちた…。
でも、まだまだ…、あたしは堕ちはじめたばかり…。

あたしは欲しかった言葉をくれたゆかちゃんに、優しいキスを落とす。

視界の端でチラつく指輪が、妙な冷静さを保たせていた。


Side K
『…指輪…外しちゃうよ?』
途中でそう聞いてきたあ〜ちゃんに、横に首を振ってダメだと答える。
『冗談じゃよ。』
そう言って、無理やり外されることは無かった。

これは、のっちとの約束だから。約束を忘れないために、外されては困るの。
あ〜ちゃんとのこの行為が、すでに裏切りになってしまうけど。

だって、私達は……。


—つづく—





最終更新:2009年07月22日 22:30