<side kashiyuka>
学園祭7日前。
今日のあたしは保健室にまた行かなきゃいけない。
やっと中田先生が仕上げたからね。すごい必死じゃったけぇ、報われなきゃ可哀想じゃ。
実は、今回の学園祭。あたしは大半の係から外された。
三年後半にもなって、生徒会もバトンタッチしたのに、なぜか働き続けていたあたし。
後輩は、最後の学園祭くらい自分のクラスで思いっきり楽しんで欲しいと言ってくれた。
だから今回の学園祭であたしがする仕事は、模擬店の統率をとること、そして執筆活動。
のはずだった。
「樫野、ちょっといい?」
ちょうど一週間くらい前、中田先生が顔を真っ赤にしてあたしに頼み事をした。
ホントならのっちとあ~ちゃんの動向を常にチェックしなくちゃいけない。(ネタ探し)
だから、本当は中田先生の仕事を請け負うのはイヤだったんだけど、状況が変わった。
どうやら、こしじま先生が... うん。やっぱ分かるけど言わにゃい。
とにかく、あたしは先生のお手伝いをすることにした。旨ミルクついてくるしね。
昼休み。保健室。
中田先生から受け取った大きめの封筒。薄っぺらだけど、先生の本気が込められてる。
保健室のドアをノックした。
「失礼します。樫野です。」
しばらく沈黙。あれ、今日は職員室にいるのかな?
「はいはーい、待って待って!」
こしじま先生のハスキーだけど明るいトーンの声が響く。
「こんにちは~。」
「やっほー。かしゆかちゃんまた来たの。今日は何?」
「かしゆかちゃんって... なんで急に。 あぁ、すいません、また中田先生の用事です。」
こしじま先生は小さく笑った。女のあたしから見てもすごく可愛い仕草。
「ん?西脇さんがかしゆかって言ってたから言ってみた。で、中田クンまたなんかあるの?」
「これ渡して欲しいって。」
あたしは封筒を渡した。こしじま先生は受け取るとすぐに開封した。
中に入っていたのは、数枚の紙と、CD-R。
「なんだコレ。 っとstarry sky... あぁ、約束の曲か。学園祭の。」
「はい。学園祭のうちのクラスの模擬店のゲストヴォーカルで歌っていただく曲です。」
「うん。大丈夫そう。同じフレーズの繰り返しみたいだね。あ、CDプレイヤー持ってない?」
あたしは自分のポーチから愛用のCDプレーヤーを抜いて先生に渡した。
先生は手持ちのイヤホンを繋ぐと、自然な感じであたしに片方よこした。
「ほら、聞いてみ。」
「はい。」
イントロはキツめのビート感。というかイントロ長い。こういう音楽に慣れてないあたしにしたら
結構辛い。やっとメロディーが入る。歌パートは中田先生の声で入ってる。
英詩?歌詞がすこし聞き取り辛いけど。歌パートの後のメロディーの疾走感が気持ちいい。
しばらくして2回目の歌パート。今度こそキチンと歌詞を聞こう。
ちゃんとは聞き取れないと思うけど。
I sing for you, I think of you. I remember where I lost my mind,
remember when you catch my eyes.
あたしは英語が得意。歌詞は聞き取れた。この文章の意味が簡単に分かるくらいは勉強してる。
それでも最初は意味が分からなかった。言葉の意味が中田先生のイメージと結びつかなくて。
中田先生はどれほど強い想いでこの曲を作ったの?
これはある意味こしじま先生に対するメッセージとも取れる。
なんてこと書いてるんだ、中田先生。日本語でやったら結構恥ずかしいだろうな。
その後も、ずっと泣かされる歌詞の連続。なぜだか、のっちとあ~ちゃんの事を思い出した。
そして、最後の歌詞。
Come for me... starry sky.
わたしのところに来て、こんなにも星が綺麗なんだから。 か。
先生らしい。適当な理由でごまかす感じが。だけどそれは何故だかあたしにも通じる物を感じた。
二人に対するあたしの想いにも似てるその言葉。涙が溢れそうになった。
こしじま先生はどうも歌詞の意味をよく理解していないみたいだった。
「ねぇ、かしゆかちゃん。意味分かった?あたし全然ダメなんだけど。後で中田クンに聞くわ。」
「ふふっ。次の授業あるんで、もう行きますね。」
声が震えて、うまく舌が回らない
「うん。あと一週間よろしくね。」
「はい、失礼しました。」
あたしは、こしじま先生に涙目見られるのもなんか嫌だったから、走って教室に戻った。
教室の窓からふと外を見た。快晴。きっと今夜は星が沢山出るだろう。
あたしは今更ながら思う。いつだって、誤算になるのは自分の感情だ。
気づかないフリをしてもいつしかそのフリが自分に通用しなくなる。
二人の事が大好きなんだよ。だけど、それをうまく表せないから、そのままにしてる。
あたしは斜めから二人に恋をしたから、だから想いが二人に伝わる必要は無い。
それでもいいから、二人の側にいたい。
今回の学園祭であたしはもしかしたらボロを出すかもしれない。
それがもとになって何かが起きてしまう事もあるのかもしれない。
自分をごまかしきれなくなってきてるからね。
だから神様、もしあたしがウソをつききれなくなっても怒らないでください。
あたしから二人を引き離さないでください。それだけがあたしの今のお願いです。
学園祭まであと一週間。何かが起こる予感がしていた。
最終更新:2008年10月10日 23:41