Side N
あ〜ちゃんと出会ってから一ヶ月。
そろそろ、夏休みも終る。
相変わらず、まともに会話も出来ないけど。
あたしが話しかければ、簡単な返事をちゃんと返してくれる。
たとえバイトが休みでも図書館へ行く。
二人だって毎日来るわけじゃないけど、来てるなら会いたいし。
特に何をするわけじゃないけど、側にいる。
その甲斐あってか、以前よりあ〜ちゃんの、あたしに対する警戒心が薄れた気がする。
だって、今日はゆかちゃんは来れないとかで、あ〜ちゃん一人。
でも、一応「居ても良い?」って聞いたけど、追い返さずにいてくれたから。
Side A
今日は、ゆかちゃん一緒に行けないって言われて…。
でも、今日中に課題を終らせたいあたしは、一人で図書館に来た。
彼女は、あたし達が来る度に必ず側へやってくる。
そして、ほとんどゆかちゃんと話しているけど、最低限の返事しかしないあたしにも、必ず話しかけてくる。
そんなことされたら、どうがんばったってその存在はあたしの中に入ってくるに決まってる。
あたしの想いとは関係なく、彼女との距離は近づいていた。
いつもはゆかちゃんが座る席に彼女がいる。
なんだけど…。
今はテーブルに伏せて眠っている。
もう、なんなのよ?人が課題してるのに目の前で寝るなんて。
もうちょっと、気を遣ってくれても良いんじゃない?
それでも、彼女の寝顔がキレイで、ついつい手を止めて見惚れてしまう。
なんでこんなにキレイなんだろう?
ふと彼女の顔に掛かる髪が気になって、その髪を指ですくう。
と、眠りが浅かったのか、彼女の瞼がゆっくり開かれていく。
一瞬だけど、それはまるでスローモーションみたいに。
彼女が顔を上げたら目が合う。分かっていても目を逸らせない。
そして彼女と…
視線がぶつかる。
彼女が笑って。
「あ〜ちゃん、笑ってるw」
「え?」
伏せたままの彼女の言葉で、自分の顔に触れて、そこでようやく自分が笑ってい
るのに気付く。
いつから?
「へへw笑ってるあ〜ちゃん一番好きw」
無邪気に笑う顔は彼に似ていて、
だけど、笑顔も言葉も、間違いなく彼女のもの。
トクン…
あたしの中で、小さな始まりの音が聞こえた気がした…。
—つづく—
最終更新:2009年07月22日 22:44