Side K
次の日の仕事で、のっちと顔を合わせるのが申し訳なかった。
あ〜ちゃんはというと、今までと変わらない。あのキラキラした表情で笑っている。
昨日の事は本当にあったんだろうか?と思うほど普通だった。
でも、隣に座ったとき、あ〜ちゃんの手が私の腕に触れてきて。
指先に移動してきたあ〜ちゃんの指が、ほんの少しだけ絡められて、すぐに離れていった。
それだけで昨日の感触を思い出して、思わず見たあ〜ちゃんの表情が、それが現実だったことを証明していた。
あ〜ちゃんに触れられた部分から、熱が体中に広がっていく。
反対側には、のっちも居るというのに…。
「私、ちょっとトイレ行ってくるね。」
まだ、雑誌の取材が始まるまで時間がある。その間に冷ましておかなきゃ。
蛇口から流れる水に手を差し出し、冷ましていく。
そして、その手を顔に当てて、顔を冷やしていく。
はぁ〜、気持ちぃ。ほどよく冷めていく頬。
そこへ、誰かがやってきた。
Side A
「あ〜、ゆかちゃん居た居たw」
そろそろインタビューが始まるというスタッフさんの声に、あたしはゆかちゃんを呼びに来た。
「あぁ、あ〜ちゃん。」
「そろそろ始めるって。」
「うん。今行くぅ。あ〜ちゃんトイレ?」
「ぃんや?呼び来ただけ…。」
呼びに?…違う。
さっきゆかちゃんに触れた時に、あたしは急に確認したくなったの。
「うそ。ゆかちゃんとこ来たんよ…。」
どれだけ、覚えてくれてるのか。
Side K
「うそ。ゆかちゃんとこ来たんよ…。」
さっき呼び来ただけって言いながら近づいてきたあ〜ちゃんに、後ろから抱きしめられてそう言われた。
せっかく冷ました体温が、一気に浮上していく。
「あ〜ちゃんwこんなとこで何言って…」
お腹に回された腕を解こうと腕をつかみながら、鏡越しにあ〜ちゃんの顔を見るとあ〜ちゃんもこっちを見ていて…。
また、あの瞳をしていて、一瞬で捕まってしまった私。
動きが止まった私の腕を、逆にあ〜ちゃんに掴まれて個室へと引っ張られた。
またもやあ〜ちゃんの突然の行動に、訳が分からなくなる。
鍵をかけられて、横の仕切りに押しやられ逃げ場がなくなった。
やばい。なんとか抜け出さなくちゃ。
「ぇっと、そろそろ始まるんじゃろ?」
「うん。そうじゃよ?」
私の指先に絡まるあ〜ちゃんの柔らかな指先。
まずい…。
「こんなことしとる場合じゃぁ…。」
「…こんなことするあ〜ちゃんは嫌い?」
少し不安そうな表情で、繋がれてる手と反対の指先が、首筋と鎖骨あたりを撫でてくる。
昨日の感触を…。
「嫌いな訳っ…。」
思い出しちゃう。
「…なら、良かったぁ。」
嫌いだったら、即効で振り払って逃げるよ?
ふっと笑って今度は、じかにお腹へと触れて、上へと移動してくる。
「んっ。あ〜ちゃn…。」
私の胸にたどり着く直前で、トイレの戸が開けられる音がして、さすがにあ〜ちゃんの手の動きが止まった。
誰か分からないけど、助かった…。
「おーい。ゆかちゃ〜ん?あ〜ちゃ〜ん?おらんのぉ?」
あ。のっちだ。
そう思った途端に、首筋にくすぐったい感触がして、小さく声が漏れた。
「ぅn!」
ばっと見たあ〜ちゃんは小さく舌を覗かせて、にへっと笑っていた。
「ゆかちゃん?」
私の声に気づいたのっちが、二人がいる個室に近づいてくる。
その間にも、さっき私の胸を目指していたあ〜ちゃんの手が、腰やら背中で動いていて
答えるにも、普通に答えられそうにない。
返事をしない私にもう一度声を掛けてくるのっち。
「答えて?」
耳元であ〜ちゃんが囁く。
私はぷるぷると首を横に振って、答えるのを拒む。
そうしたら、ふ〜んて表情をしてまた耳元へ顔を寄せてくる。
「あたしが答えようか?」
なんてコトを言ってくるんよ!そんな事してバレたら…。
それだけは避けたいから、必死にのっちに答える。
「な、なに?」
「やっと返事してくれた〜。大丈夫?調子悪いん?」
ドアのすぐ向こうでのっちが聞いてくる。
「ぃやぁ〜、昨日、アイス、食べすぎたんが、いけんかったかなぁ…。」
私が適当な返事をしている間にも、耳に息を吹きかけられたり、淵を舐められて
変な声が出ないようにするのに必死だった。
「あぁ、そっか、じゃあ、そろそろ時間なんけど、あんま無理せんでよ?」
「もうちょっとしたら、戻るけぇ…。大丈夫。」
「ん、分かった。あっ、でさぁ、あ〜ちゃん知らん?」
「え。」
「ゆかちゃん呼んでくる言うて、出てったまま戻ってこんのよ。」
私が至近距離にいる本人に目を向けると、相変わらずとぼけた顔を返してきて、
またすぐ耳元へと顔を寄せてくる。
「返事は?」
や、やばいっ。
「あ、あ〜ちゃんなら、呼び来て出てった、よ?」
ここに居るんですけど。とは言えず…。
「え!マジで?もー、あ〜ちゃんどこ行ったんよぉw。あ〜、じゃあ、あたしあ
〜ちゃん探しに行ってくるわぁ。」
あ〜ちゃん何処じゃぁwって叫びながら出て行ったのっち。
ふぅ〜、助かっ…。
「ふふ。ゆかちゃん、昨日より敏感じゃね?体ぴくっ、ぴくって…。」
…ってない。
のっちが居なくなったのに、尚も囁いてくるあ〜ちゃん。
それだけでゾクゾクしてしまう自分がなんとも…。
「あ〜ちゃん、ほら、のっちも探しとったし。仕事もどらんと…。」
さすがに仕事をすっぽかすわけにはいけんから、ゆるりと体を離すあ〜ちゃん。
でも、ぶぅーってまだ不服そうな顔をしてる。
そして、俯いたまま、ずっと繋がれていた手を両手でムニムニしだして、例の指輪に触れてきた。
その、私の手を自分の口元までもってきて、指輪へと口付けるあ〜ちゃん。そして
「ゆかちゃんから、キスして欲しいな〜。」
上目遣いでおねだりされる。
のっちの顔がチラついたけど、それは一瞬で…。
言われるまま、私はあ〜ちゃんへと唇を重ねた。
Side A
鍵を掛けたトイレの個室で、少しずつ触れながらゆかちゃんの反応を確かめていく。
それと一緒にゆかちゃんの指に自分の指を絡ませて、指輪を確認する。
きゅっと目を閉じて、昨日より敏感に反応してくるゆかちゃん。
そんなゆかちゃんに少しの興奮を覚える。
直にゆかちゃんの綺麗な肌に触れて、我慢できずにその胸へと手をのばす途中で誰かが入ってきた。
誰かと思ったらあたしたちを呼ぶのっちの声が聞こえて。
瞬間的にあたしは、ゆかちゃんの首筋を舌でなぞっていた。
何するの?って顔であたしを見るゆかちゃんに、ちろっと舌を覗かせたまま笑ってみせる。
小さく声を漏らしたゆかちゃんの声に気づき、のっちが二人の居る個室に近づいてくる。
あたしは気にしないまま、ゆかちゃんへと触れていく。
答えないゆかちゃんをまたのっちが呼ぶ。
でも、声を我慢しているゆかちゃんは答えられなくて、
「答えて?」
分かっているのにそんなことを言ってしまう。
もちろん、ゆかちゃんはムリムリと首を振ってくる。
うろたえるゆかちゃんが可愛くて
「あたしが答えようか?」
なんて、意地悪なことばかり言ってしまう。そんな自分に自分で驚いている。
さすがに、あたしが答えるのは嫌らしく…。まぁ、当然だけど。
必死に答えるゆかちゃん。
もちろん、あたしはゆかちゃんへ触れるのを止めない。
時々ぴくっと反応して言葉が途切れそうになる。
ふふ。がんばって?ゆかちゃん…。
のっちがあ〜ちゃん知らない?って聞いてくるとあたしの顔を確認してくるゆかちゃん。
でもあたしは、知りません?て顔でまたゆかちゃんに囁きに行く。
また慌てだすゆかちゃん。
ゆかちゃんの返事を聞いて、のっちはあたしを探しに叫びながらトイレを出て行った。
ほっと安心してるゆかちゃん。
でも、あたしはまたゆかちゃんに囁きかける。
だけど「仕事もどらんと。」っていう言葉に、さすがにすっぽかす訳にはいかないので、しぶしぶ体を離す。
そして、ずっと指を絡めていたゆかちゃんの右手を、両手で握ってそこで光る指輪を撫でてみる。
まぁ、ゆかちゃんが覚えててくれたのも確認できたし、いっか。
だけど、何か物足りなくて、あたしはゆかちゃんの手を口元までもってきて、指輪に口付ける。
そして、ゆかちゃんにキスのおねだりをしていた。
少し困った顔をしたけど、まもなくゆかちゃんの唇があたしへと注がれた。
しかも、予想していたより深いキスで…。
ゆかちゃんが求めてくれた。そう思うと嬉しくなった。
もっと、堕ちてしまったとしても…。
—つづく—
最終更新:2009年07月22日 22:46