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本日は、来週に控えたライブのリハーサル。
もうすぐそこまで、近づいてきてるってことで
朝から晩まで、ずっとスタジオに篭りっきりだ。


この時期、彼女はとてもナーバスになる。
当たり前って言えば、当たり前、、か。
そして、決まって“わがままモード”が発動。
でも、その“わがまま”は、一つの壁を越えるのに必要なものだって
もう、何度目かのそれで、のっちにはわかってる。
だから、、、とは言え、、、、、



「のっちぃー、コーヒー買ってきて!」
「のっちぃー、ピノ買ってきて!」
「のっちぃー、タオル持ってきて!」
「のっちぃー、・・・なんか、むかつく…」

のっち、のっち、のっち、、、、、


ひっきりなしに、のっちを呼び立てる彼女。


おかげで、のっちは朝からまともに、リハーサルを見れてない。


はぁ・・・・
ため息交じりで、本日二度目のピノを片手にスタジオを目指す。


「のっちっ」
ん?振り向くと、、、あっ
「あ〜ちゃん。お疲れさま〜」

相変わらず、ふわふわきらきらで可愛らしい。
あ〜ちゃんは、スタイリストさんで、ゆかちゃんも、そして事務所もお気に入り。
ライブはもちろん、そのほかの撮影でもよくお世話になっている。
ほんと、ゆかちゃんの魅力をよくわかっていて、場面に合わせて最高のコーディネイトをしてくれる。
そして、のっちの数少ない友達の一人。




「あぁ、今日は衣装の最終チェックだっけ?」
「うんまぁねぇ、ちょっと変更したい部分もあるし」
「いつもいつも、お世話になってます」
ペコリと頭を下げる。
「なんよ、そんな改まって、キモチ悪い」
うわっ、ひっでぇ…
「いやいや、ほんと。いつもいい仕事してくれてるから感謝だなぁって」
「当たり前じゃろ!?あ〜ちゃんの仕事に間違いはないっ!」
ははっ、はい。ほんとその通りです。

「それにしても、この前の撮影のとき、忙しかったん?」
「えっ?」
「いや、スタジオでちらっと姿見かけただけだったから」
「あぁ、、、、いやぁ、、なんか、控え室に入れてもらえんかったんよね」
そう言うと、あ〜ちゃんは、急ににやにやして
「あぁ、やっぱり〜なるほどねぇw」
て。・・・えっ?どゆこと?
「あ〜ちゃん、なんか知ってるん?」
「んーんwただ、ゆかちゃんも年頃の女の子だってこと〜」
はぁ・・・ますます、わからん。
「それにしても、ゆかちゃん、調子どうなん?」
「ん?」
「さっき、ちょこっと話したけど、なんか様子変だったよ」
確かに、今日の彼女は、いつもと様子が違う。
疲れてる?・・・んーん、それだけじゃない気がする。


そうこう話してるうちに、スタジオに到着。
ドアを開ける。迎えられた第一声が
「大本さん!かしゆかさんが、戻ってこないんですけど!?」



          • はっ?


「えっ、どういうことですか?」



スタッフさんの話によると、ふらっとスタジオを出て行ったまま
もう半時間近く戻ってこないと、いう。

ケイタイに連絡を入れる。
でない。


おっと・・・さて、どうしよう・・・


「…すみません。1時間だけ時間をください。必ず、戻ってきますので」
そう言って、頭を深々と下げた。


「ここは、マネージャーさんに任せて、あたしたちは
 あたしたちにできることを、彼女抜きでできることを続けましょう」
あ〜ちゃんがフォローしてくれる。

ありがとう。
そう、視線を送り、スタジオを後にした。


さて、と。
ない脳みそをフル回転させて、彼女を想う。


あちこち、探して回るものの、どこにも姿は見つけられない。

ふと、天を仰ぐ。


        • 屋上、かな?


重い扉を開けると、抜けるような青空。


「…ゆか、ちゃん?」

反応はない。けど、いる気がした。
んー・・・仕方ない・・

「・・・ゆか?いるんでしょ?」



ふらっと、人影が動き、彼女が姿を現す。

潤んだ瞳からは、今にも、涙が溢れ出そう。
なんだか、迷子になった子猫を思い出させて、きゅんとなる。


「…どうしたの?」
「・・・」


何も、コトバを発せず、俯く彼女。
このままじゃ、スタジオに戻れない。
けどこんなとこじゃ、誰に見られるか、わからない。


そっと手を引き、人目のつかないとこに。


ぎゅっと、手は繋いだまま
「どうしたの?」
さっきと同じコトバを紡ぐ。

「すっごく、不安なの…」
「うん」
「久々のワンマンじゃけぇ…」
「うん」
「楽しみなんだよ?…」
「うん」
「けど、、、、ほんとに、ゆかは、、、
「ゆかは…?」
「・・・」


ぽんぽんと、頭を撫でる。


「自信がないけぇ・・・受け入れてもらえるんだろうかって…」
あぁ、、、ちょっぴり路線変更して、初めてのライブ、だ。
「ハコもどんどん大きくなって、、、嬉しいのに、なのに不安で…」


「みんな、待ってるよ。ちゃんと待ってくれてる」
あぁ、こんなときに、コトバの応用力のない自分に嫌気が差す。
「大丈夫。かしゆかがかしゆかであるかぎり・・・
 ゆかちゃんが、自分に正直であるあかぎり、その想いはちゃんと伝わるよ?」
のっちとお揃いのような、垂れた眉。
「伝わらんとおかしいでしょ?こんなに、素敵な想いが」
伏せられた瞳。

「・・・ねぇ?」
「ん?」
「ぎゅっとしてよ…」
「え、、、でも、ここじゃ・・・



再び、絡まる視線。不安に揺らぐ、それ。
四の五の言ってらんないでしょ?


華奢なカラダを抱き寄せる。

「大丈夫、うん、、大丈夫だから…
 だから、今、できること精一杯しよ?」
「・・・・・うん」

抱きしめるよりも強い力で、抱きしめられる。


「…のっち?」
「はい?」
「のっちは、いなくならない、、よね?」
「もちろん…」


彼女の傷の深さ、
自分の無力さを、知る。


できることは、ほんと
そのコトバ通り、傍にいること、だけ。


「…ごめんね。も少し、このままで、、」
「はい・・・」



せめて、その涙が
乾くまで、、、
のっちにできるのは、ただ抱きしめること、だけ。



一時の宿り木だとしてもいいんだ。
キミの笑顔が曇ってしまわないためなら。





最終更新:2009年07月22日 22:48