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昨日は散々だった。
飲み会で気持ち悪くなって吐いて、帰り道コケて怪我して、そして二日酔い。

うぅ・・・今日学校が休みでよかった。
あっ、でも午後からバイトだ・・・。
それまで寝てようかな。
でも洗濯しなきゃいけないし、掃除もしなきゃ、買い物もしなちゃ・・・今、冷蔵庫の中身ほとんどないもんな・・・。

「よし!!!」
あたしは気合を入れて布団から出た。
顔を洗って歯を磨いて、寝癖を整えて、パジャマから部屋着に着替えた所でチャイムが鳴った。

覗き穴から見ても、誰もいない。
あたしは怖くなって、チェーンをしたまま恐る恐る開けた。

「おはよう!!」
ドアの隙間から見えたのは、何故かダンボールを持ったのっちの姿。
足元には大きなバック。
のっちのおはようって声が大きくて頭に響く。

「な、なに?こんな朝から・・・」
あたしは二日酔いだからローテンション。

「んー、訳は話すから・・・とりあえず、入れて?」
のっちは朝っぱらから満面の笑み。

あたしは渋々チェーンを外して入れてあげた。
のっちは重たそうにダンボールとバックを持って、ズカズカと部屋に上がった。

「てか、なに?その荷物?まるで夜逃げみたいじゃん」
「でへへ」
のっちは笑って答える。

「あの〜、実はお願いがあってきたんれすけど・・・」
「またー、今度は何よ?しかも、噛みよるし・・・」

「二、三日だけでいいから泊まらせてくれませんか?」
「は?なんで?」

「うーんと、ちょいとトラブっちゃってねぇ〜、アパートに戻れなくなっちゃったんだよね。でへへ」
「なんで?まさか借金取りとか?」

「違う違う。そんな危ない事じゃないからwなんて言うんですか?その・・・色恋沙汰ってやつ?w」
「あー・・・」
呆れて続く言葉が見当たらない。
それって自業自得じゃん。
なんでそれをあたしが助けてあげないといけないの?
あたしは全然関係ないじゃん。

「他の所行きんさいよ・・・。あ〜ちゃんち狭いもん」
「ほかに行く場所がないから、あ〜ちゃん頼ってきたんだけど・・・やっぱ、、、ダメっすか?」
そんなシュンとして、すがるような瞳であたしを見つめないでよ。

「んー、しゃーない、お金掛かるけど・・・ネットカフェか漫喫に泊まるか・・・」
のっちは座ってた腰を上げて、呟いた。
「・・・・に、二、三日だけだったら、いいよ」
のっちが出て行こうとするから、咄嗟に引き止めてしまった。



「マジで!?うはっ、やっぱあ〜ちゃんだな!!良かった〜助かった〜ありがとね」
のっちはキラキラした笑顔。
あたしはのっちの笑顔に弱い。
だからOKしてしまった。

「三日経ったら、ちゃんと出てってよ?」
「はい!!大丈夫です!!」
ふざけて敬礼のポーズをとるのっち。
無邪気すぎるじゃろ・・・。

「で、その荷物は何よ?」
「あー、急いで出てきたから必要最低限の物しか持ってこれなかったんだよねw」
ダンボールから出てきたのは、PSP、PC、ipodとヘッドホンとCDが10枚とDVDが5枚。
バックには衣類がぐちゃぐちゃに入ってた。

「別にゲーム機は必要じゃないじゃろ?」
「ダメダメ!!これがないと、あたし死んじゃうもんw」

「のっち、ゲーム好きなん?」
「うん、大好き!!ゲームも好きだし、音楽も好きだし、あ〜ちゃんも好きだよww」

「さ、最後は余計じゃ・・・」
「でへへ」
これは完全にのっちのペースになってる。
それがすごくムカつく。
のっちが簡単にあたしの事を好きって言ってくるのがムカつく。
それに過剰に反応しちゃう自分にもムカつく。

「あ〜ちゃんこれからスーパーに出かけるじゃけど・・・」
「そうなの?じゃ、あたしも一緒に行っていい?歯ブラシとか買いたいし」
「えっ?一緒に?」
「うん。えっ?一緒に行っちゃダメなん?」
断る理由が咄嗟に思いつかない。
のっちといると頭の回転が鈍るから嫌だ。

仕方なくあたしはのっちと近くのスーパーに行く事に。
買い物カゴを乗せたカートは、のっちが押してくれた。

「ねーねー、お昼どうする?」
のっちは、まるで小さい子供の様にかなりはしゃいでる。
「えー、どうしよ・・・」
「あっ!!あたしカレー作るよ!!タダで泊まらせてもらうのは、悪いからさ」
のっちにも悪いって気持ちがあったんだ。

「カレェー?」
「あ〜ちゃん、カレー嫌いなん?この間食べてたじゃん・・・」
「カレーは好きじゃけど、のっちの作るカレーは不味そう」
「えー!?それってヒドくね?wあたし、カレーだけは自信あるんですけど!」
「ふーん、そうなん?」
「じゃあ、昼はのっち特製カレーね!!」
そうのっちが自信満々に言うと、野菜コーナーに向かって、ニンジン、じゃがいも、たまねぎ、ナスをカゴの中にボンボン入れていった。



のっちが作ったカレーは思いのほか美味しかった。
美味しかったけど、本人には言わなかった。
言うと調子乗りそうで、それが嫌だったから言わなかった。

「のっち、この後どうするん?」
あたしの部屋なのにすでに自分の部屋のように、くつろいでるのっちに話しかける。

「どうするって何が?」
「あ〜ちゃん、これからバイトなんよ・・・。ずっとここにおるん?」

「えー!!あ〜ちゃん、バイトしてるん?なにしとるの?」
のっちは寝転がっていた体をガバっと起して、キラキラした顔であたしを見つめてくる。
「ケーキ屋・・・じゃけど」
「ケーキ屋さん!!うはwめっちゃ、あ〜ちゃんにピッタリのバイトじゃん!!ケーキ余ったらもらえるの?」

「いつもじゃないけど、たまにならあるけぇ」
「ウッソー!!いいな〜、ケーキ食べたい!!今日もらってこれる?」
なんて図々しい人・・・。
「わからんけど、店長さんに聞いてみるけぇ」
その図々しいお願いに、すんなりと受けてしまうあたしもアホだ。

「ケーキ屋さんってことは、この時期忙しいんじゃないの?」
そういえば、もうすぐクリスマス。
「うーん、今はそうでもないけど、もうちょっとするとそうなるみたい」

「そのケーキ屋さんってどこにあるん?あ〜ちゃんがバイトしてるトコ見てみたいなw」
「絶対教えん」
「えー、どうしてよぉ。いいじゃん、減るもんじゃないんだから〜w」
のっちに絶対バイト先には来させない。

だってそこにはゆかちゃんもいるから。
ゆかちゃんにのっちを会わせる訳にはいかない。

ふたりが会ったらきっと大変な事が起こると思う。

絶対にゆかちゃんはのっちにハマっちゃう。
ゆかちゃんは危険な事が大好きな困った子だから。

絶対にのっちはゆかちゃんに目を付ける。
のっちは可愛い子には目がないから。

のっちにハマったら、ゆかちゃんも他の子と同じように涙を流すに違いない。
そんな事はさせたくない。
親友のゆかちゃんを辛い目に合わせたくなんかない。

「ぜっーーーーたいに教えんから!!あと付いてきたらすぐに出てってもらうからね!!」
「・・・はい」
きっとあたしはすごい剣幕だったんだろうか、のっちは素直に返事した。



———
「はぁ・・・」
「ん?どしたん?あ〜ちゃんため息なんて付いて?幸せ逃げちゃうゾ?」
「いや・・・ちょっと、ね。昨日から色んな事がありすぎて、頭と体が付いていってない状態?」
「なにそれ?大丈夫?バイト早退する?」
ゆかちゃんは優しいな。
こんな優しいゆかちゃんに辛い思いはさせられないよ。

「ううん。大丈夫じゃけぇ。バイト代稼がないと、仕送りだけじゃやってけんし」
「それは同感ですww」

「今日は暇じゃね〜」
「うん。あっ、今日久々にあ〜ちゃんち行ってええ?」
「えっ!!きょ、今日?この後?」

「うん。バイト7時には終わるけぇ。一緒にご飯作って食べようよ」
なんともタイミングが悪いお誘いなんでしょ。
今、ゆかちゃんがうちに来たら、のっちと鉢合わせになっちゃう。

「あっ?ダメ?・・・もしかして、あ〜ちゃん彼氏出来た?」
「で、出来とらんよ!!」

「そう?だって、いつもなら即OKって言ってくれるじゃろ?返事困ってるから、彼氏でも出来たんかな〜?って思ったんよ」
「彼氏はいないけど・・・今日はちょっとダメなんよ。へ、部屋が散かっとるけん」

「あ〜ちゃん・・・ゆかには嘘言ってもダメだよwwすぐわかっちゃんだから」
「えっ?なんで?」

「あ〜ちゃん、嘘つく時必ず目が泳いでるんだもんw嘘つくの下手すぎじゃww」
「えっ、ほんま?・・・ごめん」

「まっ、彼氏がいないのが嘘か、部屋が散かってるのが嘘かはわからんけど、今回はスルーしてあげるけぇ。感謝しんさいww」
「はい・・・」

「話せる時期になったら、教えてね」
「うん。ごめんね、ゆかちゃん」

ゆかちゃんはそれから本当に何も訊いてこなかった。
ほんと優しいな、ゆかちゃんは。
でもこれはゆかちゃんには話せないよ。
話したってきっと良い事なんてないから。



その為にも、のっちには早く出て行ってもらわなきゃ。
バイトを終えてアパートの扉の前に着くと、カレーのいい匂いがした。
きっと、のっちがお昼の残った分を食べてるんだろうと思った。

「あっ、おかえり〜」
半年以上ひとり暮らしだったから、久々におかえりって言われた。
「あっ、ただいま・・・」
ただいまを言うのも、半年以上言ってない。

なんかこういうのいいな。

「バイトお疲れ様。今、カレーうどん作ったトコなんよ。一緒に食べよ?」
「また、カレーなん?」
あたしは別に嫌じゃなかったけど、何故か悪態をついてしまった。

「ダメ?一応、お昼は普通のカレーだったから、夕飯はうどんに変えてみたんれすけど・・・」
「ぷっ、、、のっち、噛み噛みw」
「あっ!バカにしてんのか!コラw」



結局のっちは三日経っても四日経ってもあたしのワンルームに居候のまま。
この日からのっちとの奇妙な同居生活が始まった。

たった3ヶ月だけだったけど、濃厚なあの3ヶ月。
忘れられない体験をしたあの3ヶ月。
忘れたい体験をしたあの3ヶ月。
もう戻れないあの3ヶ月。
もう一度やり直したいあの3ヶ月。

のっちとあたしのあの3ヶ月。

あの奇妙な3ヶ月間の同居生活の話をしないと、この物語は終われない。





最終更新:2009年08月01日 20:42