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のっちがうちに来て5日経った。
のっちは一向に自分のアパートに戻る気配はない。

「のっち、いつまで寝てるん?」
今日は授業が無い日。
バイトも休み。
あたしは朝早く起きて、部屋の掃除をしたいのに、お客さん用の薄い布団で寝てるのっちが邪魔でそれが出来ない状態。
寝てるのっちを掃除機でつつく。

「うぅぅ・・・。もうちょい、寝かしてくらさい。今、帰ってきたばっかりなんです・・・」
微かに聞こえる声で訴えるのっち。
「そんなん、知らんけぇ。夜遊びしとるのがいけないんじゃろ?」
この5日間、のっちは必ず夜になると出て行って、朝方帰ってくる超夜行性の行動をしていた。

あたしは無理やりのっちの下にある敷布団を引っ張る。
必然的にのっちは起きるはめになった。

「ひー、さぶい。眠い。ひどいよ、あ〜ちゃん。休みの日くらい寝かせてよ」
「なに、一丁前にお父さんみたいなセリフ言っとるん?今日はいい天気だから布団干すんよ!」
「はい、はーい、わかりました」
のっちは欠伸まじりに返事。
目は半分しか開いてない。
服は昨日と同じ。
酒と煙草の混じった香りがする。

「ねぇ、いつまでうちにおるん?もう約束の三日過ぎたんじゃけど・・・。まだ、帰れないの?」
「んー・・・・」
のっちはほんとうに眠そうで、頭をカリカリ掻いて生返事するだけ。

「あたしがいると迷惑?」
そんなトロンとした瞳で上目遣いでそんな事言わないでよ。

「め、迷惑とかじゃなくて・・・その、あの・・・」
ほら、ちゃんと答えられなくなっちゃうじゃない。



「家賃と光熱費を半分出すから、もうちょいここに置いてもらっていい?」
「・・・お、お金出してくれるならいいけど、なんで帰らないの?帰れないの?」
「んんー?大丈夫、だいじょーぶww変な心配せんでええよ?」
のっちは誤魔化すのが上手い。
話の核心を訪ねるといつもはぐらかす。
今もそうだ。

あたしにはまだ心を開いてくれてないの?
5日も泊めてあげてるのに?
のっちが何を考えてるのか、何を思っているのかわからないよ。

夜もどこにいるのか、何をしているのかわからない。
きっとお酒飲んで、イヤラしい事してるんだろうとは思うけど。
だったら、その人たちの所で寝泊りすればいいじゃない。

なんで、あたしの所なの?
知り合って日が浅いのに。

そんなあたしもどうかしてる。
知り合って日が浅いのに、ほいほい5日も泊まらせちゃってる。

ほんと、どうかしてる。

日に日にあたしの中で、のっちの存在が大きくなってきてる。
のっちの事を思うと、胸がキュンとなる。
のっちが他の人とキスしてるって思うと、胸が痛くなる。
のっちが他の人と抱き合ってると思うと、胸が裂けそうになる。



のっちといるとあたしがあたしでなくなる感覚に陥る。

恋は何度かした事はあったけど、恋に落ちたのは初めてだった。
こんなにひとりの人間にハマった事は、生まれて初めてだった。

でもあたしはとんでもない事をしでかした。
落ちた相手を間違えた。
一番最悪な相手だ。

あたしの理想の人とは間逆のタイプでしかも女の子だ。
そして相当チャラくてたらしだ。


こんな恋はすぐ止めようって思ったけど、止めれない。
だって、気付いたらもう落ちちゃってたから。

パラシュートが使えない危険な恋。

この恋は絶対に安全着陸しない。
地面に叩きつけられるだけ。
粉々に砕けてしまうだけ。

あたしがのっちにそういう態度を示したら、あっという間に彼女の中のその他大勢の一人になってしまう。
そんな惨めな思いはしたくない。
でも傍にはいたい。
惨めになりたくないけど、傍にいたい。
こんな矛盾してる気持ちがあたしの心をグルグルと支配している。

もうのっちの事を考えると、どうしようもなくなる。

何を考えてるんだかわからない人を、好きになるなんて思ってもみなかった。
理由なんてない。
気付いたら好きになっていた。

のっちを好きになっていた。



今思うと、好きになった時すでに結末が見えていたんだよね。
でもこの時は、まだ微かな一握りの希望を期待してたの。
あたしがのっちを変えれるんだって、変な自信があったの。





最終更新:2009年08月01日 21:06