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狂おしいほどの、この愛は狂気にすら成りえるから。


心の奥底に密めたはずのこの想いを溢れさせてしまえば、
きっとそれは破裂して、すべてを崩してしまうから。



*****



どれほどの時間、そこに立ち尽くしていたのだろう。


たまたま出くわしてしまったのは、運命のイタズラ?



あ〜ちゃんが告白されていた。

そんなの、日常茶飯事。
そんなの、中学の頃から嫌でもよく目にして来たし、本人から聞きもした。

だからこそ、彼女がいつも丁寧な対応をしつつ、しっかり断っていることも知ってる。
それに、彼女は軽々しく言い寄って来たような男に簡単に心を許すような人じゃない、と根拠はないけど確かな安心感も抱いていた。


そう、問題は。
あっさりフラれた男が、彼女に無理矢理キスをしたことだ。


あたしがそれに対して苛立ちを覚えていい立場じゃないのは分かってる。

だけど、どうせ大してあ〜ちゃんのことを知らずに、軽い気持ちで言い寄って来たような奴に彼女の唇が奪われた、なんて。

過去の自分を棚に上げても、怒りを抑えることは困難だ。


あたしの中に黒い感情が溢れそうになる。


逃げなきゃ。
今すぐ。
ここから。
逃げなきゃ。


会わなきゃ。

会って、
中和しなきゃ。


崩れちゃう、
から。


会わなきゃ。
のっ


「あっ、ゆかちゃん!一緒に帰ろ?」


崩れちゃう、
のに。



*****



そして、今。

どうしてこんなことになったの?


壁際まで追い詰められた彼女は怯えた瞳をしている。


ああ、そうだ。
帰り道、彼女が「晩ごはん作ってあげるよ」なんて言って、うちに来るから。

自らあたしのテリトリーに入ってくるから。

無邪気に、さっきの彼の話なんてするから。



「ゆ、か、、ちゃん?」
「ねぇ、、」


零れた自分の声は、思ったよりも冷たい空気を纏っていた。



あたしの想いは叶うはずなんてなくて。
どんなに想い続けたって、あなたはいつか、あたしじゃない誰かのものになっちゃうんでしょ?


さっきみたいに、
どこの誰とも知らないような奴にあっさり奪われてしまうなら。


だったら、いっそ、その前に。

あたしが汚してしまえばいい。


「ヤラせてよ」


そして、嫌われてしまえばいい。
全部、終わらせてしまえばいい。


「初めて。でしょ?」


だって、あなたが唯一付き合ってた前の彼。
あなたと別れたあとも童貞だったもの。


「一回さ、破ってみたかったんだよね」


わざとえげつない言葉を選んで。


「処女膜、ってやつ」


愛なんて、そこにはないように振舞って。


「痛いのも、そのうちよくなるから」


だけど、強引に、深く、深く、口づけた唇には狂おしいほどの愛を込めて。



さぁ、はやく。
逃げなよ。


(今更。)
(逃がさないよ。)


忘れなよ。
あたしの存在ごと。


(刻み込めばいい。)
(身体だけでも。)


消して。
全部。
あなたの中から。


(憎みなよ。)
(残るでしょ?)
(あなたの中に。)



冷たいベッドに彼女を突き飛ばした。
抵抗しない彼女の身体がスプリングの波に揺れる。


あぁ、
あたし、最低のことしてる。。


崩すのが怖いから、
壊すなんて。




最後まで、彼女は抵抗も拒絶もしなかった。

ただ必死に固く瞳を閉じて、洩れる声を堪えるその表情が、
ただただあたしの欲情を煽った。




一方的な行為が終わったあとに、あたしの中に残ったのは罪悪感だけ。



何度、
愛してもいない人を抱いても、
愛してもいない人に抱かれても、

後悔なんてしたことなかった。


なのに、
本当に愛してる人をこんなカタチで手にして、、


今は後悔したくても、

そんな資格すらない、なんて。


笑える話だね?



ベッドから降りて、一人頭を抱えてみても、自分の愚かさに消えてしまいたくなる。


「なん、で、、抵抗せんかったの?」


所詮は同じ女同士、力の差なんて大してないようなものなのだから、本気で逃げようとすれば逃げられたはずなのに。


「初めては好きな人とがいい、って思ってたから」
「だったらっ!」

「すき、だから」



え?


・・・いま、
・・・なんて?


「ゆかちゃんのこと、好きだったから」


ぁ、


くずれ、タ



この瞬間、世界が変わった。


そう、
いつだって、あたしの世界を変えるのはあ〜ちゃんだ。


いとも簡単にあたしの世界を豹変させるんだ。



「ずっと好きだから」


白いシーツに身を包んで、ベッドから降りてきた彼女は、
そのままふわりと、こんなあたしを抱きしめてくれた彼女は、


まるで、本当に、天使かと思ったんだ。


「すきだよ」
「ゆかも、、ずっと・・・ずっとずっと、、すき、だった・・・」


恐る恐る抱きしめ返したあ〜ちゃんの肩はひどく震えていて。

あたしたちはバカみたいに泣きながら「すき」を繰り返した。




この時、誓ったんだ。


二度を彼女を傷つけない。
あたしが彼女を守るんだ。


って、


確かに
誓ったんだ。





−×−×−×−×−×−




ホントは、ね。

崩してしまいたかったの。
崩して欲しかったの。



だって、そうでもしない限り、


あなたは私に触れようとしないでしょ?


私のものにはならないでしょ?




continued on 01





最終更新:2009年08月01日 21:11