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ゆかちゃんが個人撮影のために居なくなった楽屋。二人で写真のチェックをしていると、
彼女は三人がまさしくアイドル的笑顔で写っている写真を手に取り、溜め息をついた。


「あ〜ちゃんが溜め息なんて珍しいね」
「え?今溜め息ついてた?」
「うん。ついとったよ」
「うーわ、最悪じゃ…」


彼女の視線の先を見る。


「溜め息の原因は…ゆかちゃん?」
「別にそういう訳じゃ…」


言葉を濁しても、視線の先は変わらない。


「最近うちらさ、ゆかちゃんとあんま喋らんよね」
「…うん」


最近ゆかちゃんと話す回数が減っていってるのは確か。
仕事中はいつもみたいに話すんだけど。
でも一言二言の会話があるだけのっちはマシな方。
仕事以外で彼女と話してる姿をまったく見かけなくなった。


「ゆかちゃんも色々あるんだって、きっと。
あんまり人と話したくない気分なんじゃないの?」
「色々って何なんよ」
「え…っと、まぁ、色々は色々だよ…プライベートな問題?みたいな」
「…のっちに聞いたあ〜ちゃんが間違いだったわ」


彼女はそう言って再び写真に目を戻す。
そんなに寂しそうな顔しないでよ。
のっちよりゆかちゃんの方が大切みたいじゃん。


「あ、この写真のあ〜ちゃん、カワイイ!貰っちゃお!!」


彼女の前をわざと遮って、彼女の個人写真を選び取る。
ねぇ、そんな顔しないで笑ってよ。


「ふふっ、またカメラマンさんに怒られても知らんよ」


彼女は口元だけ、笑っていた。
写真の中の彼女より、笑顔を作るのが下手だった。









「大丈夫。あ〜ちゃんの気持ち、皆わかってくれると思うよ」


あるラジオの収録で彼女が泣いた。
彼女が日に日に情緒不安定になっているのは手に取るようにわかっていたから。
いつかこうなっちゃうな、とも予想はついていた。
前にもあったよね。
確かうちらの名前がだんだん有名になり始めた頃。
ゆかちゃんとのっちは正直浮かれてたけど、彼女は違った。
得体の知らない大きな力がうちらを動かしだしていることを、敏感に感じとっていた。
彼女は毎日不安と戦っていたんだって、今ならわかる。
今ののっちなら何だってわかるよ。
彼女にかけた言葉はただの慰めの言葉。
本音を言えば、彼女の気持ちを皆にわかってもらいたくない。
のっちだけがわかれば、良いと思ってる。
今悩んでることだってわかるよ。
はっきりとは言わなかったけど、ゆかちゃんのことだよね?
どうしたら、のっちは役に立てる?どうしたら、彼女を救える?


ふと彼女から目を離し、ゆかちゃんの方を見る。
丁度メールを打ち終わったのか、思いきり携帯を閉じたかと思うと荷物をまとめ始めた。


「もっさん、今日この仕事最後だよね。もう帰っていい?」


そう言うゆかちゃんの顔は、無表情で怖かった。







だから心配だったんだよ。
ゆかちゃんが彼女の家に行くって車の中で聞いた時。
そんな状態の彼女とゆかちゃんを二人きりにしても良いのかどうか、心配でならなかった。


「大丈夫?」


ゆかちゃんに対してなのか、自分自身に対してなのかわからない、この一言のメールを送った。






返信はいつまで待っても来なかったけど。










つづく





最終更新:2009年08月01日 21:25