Side A
ゆかちゃんと一緒にカレーを持って、彼女が待つリビングへ戻り、カレーをテーブルに置いていくと。
グスッ…
ん?音がした方を見てみると、彼女の目から光るものが。
「お!大本さん大丈夫?」
「あれ?のっち泣いてるの?」
ゆかちゃんも彼女の顔を覗きこんでいる。
「な、泣いて、ないょ…。」
強がってそうは言うけど、涙と鼻水が…。
「あっそ?じゃあコレはいらないかな〜?」
ゆかちゃんはティシューの箱を掲げて彼女から遠ざけていく。
また意地悪してるし。
「いる!いるいる!」
左手で鼻を隠しながら、右手を必死に手を伸ばしてる彼女。
「ぇえ?だって泣いてないんでしょ?」
「ぅ…。な、泣いてるよw泣いてるから頂戴!」
「え〜wどうしよっかな〜♪」
何か楽しんでるゆかちゃん。さすがにちょっと可哀想になってきて
「ゆかちゃんそれくらいにしてあげなよぅ。」
「えー、しょうがないな〜、あ〜ちゃんがそう言うなら…ハイ。」
と言って、ティシューの箱をのっちの前に差し出す。
そこから2、3枚取って、思いっきり鼻をかむ彼女。
「あwwやっぱ、あ〜ちゃんは優しいな〜。」
「何それ?それじゃあ私が酷いみたいじゃんよ。…てか何で泣いたのよ?」
うんうん、そうそう。
「ん、え。だってさ?こんなにさ、豪華にしてもらってさ。しかもあ〜ちゃんがあたしなんかの為にとか思ったらさ。嬉しくって嬉しくってw」
「そんな、あたし大したことしてないよぅ。」
泣いちゃうくらい喜んで貰えるなんて、ホントはあたしも嬉しい。
誰かが喜ぶ顔って、こんなにわくわく嬉しい事なんだなって思い出した。
「大したことあるって!だって、あたしあ〜ちゃんに迷惑ばっかり掛けるでしょ?勝手に側に居続けてるし。その、もしかしたらあたしが知らないうちに嫌な思いさせてたりとかぁさ…?」
「確かに、そういうこともあるけど…。」
「でしょ?」
「でも、大本さんは…。」
「ん?」
「その…。」
「ともだち…だから…。」
まるで鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔の彼女。
「ぅえ??何々?あ〜ちゃんもっかい言って?」
「と、友達だから!だから、ぁの…あたしものっちって呼んで良い?」
ホント、ぱぁっていう表現がピッタリなくらい笑顔になっていく。
「もぉ、もちろんだよwあ〜ちゃん!」
「ほぁw」
よっぽど嬉しいのか、何の前触れなく彼女…のっちが抱きついてきて、変な声が出てしまった。
「コラのっち!私のあ〜ちゃんから離れろぉ!」
のっちからあたしを引き離そうとするゆかちゃん。私のってw
「ちょっとくらい良いじゃぁんwね〜、あ〜ちゃん?」
申し訳ないけど…。
「ごめんなさぃ。あたしも離れて欲しいかも。」
急に抱きつかれたから、すごいドキドキしてるんだもん。
「ぅわ!ご、ごめん!」
あたふたしてパッと離れていくのっち。
「へっへ〜。調子乗りすぎ〜。」
なんて言いながら、今度はゆかちゃんがぎゅっとしてくる。
「あははw」
あれ?そういえば、ゆかちゃんに抱き付かれても、別に普通だ…。
…ぁあ。いっつもの事だから慣れてるのかw
これでドキドキしてたら身がもたないもんね?
「のっち。落ち込んでないでさ。食べよ?せっかく作ったのに冷めちゃうよ。」
「うん!もう全部食べちゃうよ!」
「へへwありがとう。ほら、ゆかちゃんも。」
「はぁ〜い。」
のっちになかなか言い出せないあたしの為に、ゆかちゃんが提案してくれたのっちの誕生日のお祝い。
それで、ようやく伝える事ができた気持ち。
『友達』って、そんなの宣言してなるものじゃないのかもしれないけど。
でも、あたしたちには、きっと必要だったんだと思うの。
だってほら、喜んでくれるあなたの笑顔がその証拠。
これからどうなっていくかは分からないけど…。
これからもヨロシクね?のっち。
Side K
のっちが泣いた。
あ〜ちゃんから『友達』って言われて嬉しくて泣いてた。
滅多に泣かないんだけど…。それほど嬉しかったわけね。
あ〜ちゃんが笑った。
のっちに『友達』って伝えて喜んだのっちを見て笑ってる。
あの人が亡くなって半年…。
あ〜ちゃんの、その瞳に小さく見え隠れする光。
のっちちゃんと見つけた?
お願い
もう少し…
もう少しだから
のっち、あ〜ちゃんの光を取り戻して?
—つづく—
最終更新:2009年08月01日 22:30