砂浜が…
太陽が…
海が…
ゆかを呼んでいる。
「う〜み〜!」
新しく買った水着に小さ目のパーカーを羽織り、そのまま、波打ち際まで。
波が遠慮がちにゆか足を撫でた。
「のっち!海!」
振り返れば、白い砂浜にパラソルを立ててるのっち。
「はいw海です」
相変わらず、のっちは暑そうな執事服のまま。
ジャケットは流石に着てないものの、Yシャツにベストを羽織って、シャツの袖と、スーツパンツの裾を捲ってる。
「そこまで着崩すんなら、着替えてくれば良いのに」
「いえ!ひつじですから!」
「…生真面目」
「はい?何か言いました?」
「のっち、浮き輪ふくらまして」
「はいw」
いそいそと、パラソルの下に帰って行く姿はどことなく浮かれているように見えた。
のっちが浮き輪をふくらませている間、砂でお城でも造ってみる。
幼かったあの時のようにバケツやスコップなんて持ってないけど、きっとあの頃より上手く造れる。
てか、高校生にまでなって海でハシャぐってどうなの?
アリ?ナシ?
チラッと見たのっちは一生懸命浮き輪をふくらませている。
目があったかと思えば、浮き輪の空気口を口にくわえたまま、クシャっと笑った。
爽やかに笑っちゃって…。
誰かに見られたらどうするのよ。なんて、辺りを見回してみる。
久しぶりに来た海岸は、プライベートビーチと言っても良いほど人が居ない。
まぁ、前からそんなに人気のある海岸では無かったけど、小さいし。
「ゆかお嬢様っ」
すっぽりと頭から浮き輪を通され、斜め上。
のっちが得意げに笑ってた。
「出来ました」
さも、褒めて下さいと言わんばかり。
「よし!行こう」
でも、そう簡単に褒めてなんかあげない。
「あれ?」
その代わり、のっちの腕を掴んで海まで全力疾走。
「ゆかお嬢様っ!?」
波打ち際で足を止めて、それでも勢い付いたのっちは急には止まれず。
ゆかは腕を振って、離した。
…バシャン
見事に海にダイブ。
「お、お嬢様っ!」
「ふふふっ、、あはははっ」
「お嬢様!」
荒々しく水しぶきをあげてのっちが近付いてくる。
あれ?怒った?
「ご、ごめ!わぁっ!」
ふわりと抱えられて、
「え?ちょっと!のっち!」
「とりゃっ」
ヒョイッと投げられた。
あっ、空。
と思った次の瞬間には、キラキラ光る海面と浮き輪の影
コポコポッ…
ゆかからの空気が登っていく。
それを追いかけて、ゆかも登る。
「ぷはぁっ」
浮き輪の中から顔を出すとのっちがしてやったりの顔。
「何すんのよw」
「ゆかお嬢様が仕掛けたことですよw」
「執事のくせに〜」
砂浜にでも押し倒してやろうかと、思った。
思ったけど…
「お嬢様っ!」
気付いたら、海の中だった。
side N
必死だった。
ゆかお嬢様が波に飲み込まれて、姿を消した。
「お嬢様!ゆかお嬢様!」
side K
波に飲み込まれて、でもそんなに焦っては無かった。
助けてくれる。
のっちなら助けてくれる。
ほら、
誰かに腕を引かれてる。
誰かが抱きかかえてくれてる。
ううん、誰かじゃない。
のっちが、だよね?
「ぷはぁ」
「ばぁはっw」
ほら、やっぱり。
少し高い位置でのっちに抱えられて、私は嬉しくなった。
「あははっびっくりした〜w」
「コッチがビックリですよ!」
のっちを見下ろして、のっちの顔に張り付いた髪をはらってあげる。
「ありがとうw」
「…はい///」
「帰ろっか」
「はい」
沈みそうな太陽を背にして、
頭の上から足の先までずぶ濡れにして、
手を繋いで、帰ろう。
帰って、シャワーを浴びよう。
明日は何が起こるかな。
避暑地二日目終了。
最終更新:2009年08月01日 22:34