Side N
あ〜ちゃんがあたしを『友達』だって言ってくれた。
しかも大本さんじゃなくてのっちって…。
あ〜、どうしよう?幸せなんですけど。
それから、あたしが大好きなあ〜ちゃんの笑顔。
今日は最高の誕生日だぁ。
Side A
二人とも美味しいって言いながら食べてくれて、がんばって作って良かった。
あとのっちは、ゆかちゃんが二十歳のお祝いにって買って来た缶ビールを一本飲んでいた。
「ビール美味しい?」
「ん〜、まだこの美味さは分からない…。」
そう言いながら、ちびちびとしっかり飲み干してしまったんだよね。
だから、ご飯食べ終わる頃には、酔っ払っちゃったみたいで、うにゃうにゃ言いながら床に寝転がっていた。
「ちょっと、のっち寝るなら布団敷いてあげるから、そっちで寝なさい。」
ゆかちゃんがのっちの肩を揺らして起こそうとしている。
「うぇ?まら寝ないよぅwニヘヘヘェw」
「…なにその笑い。大丈夫?」
「らぁいじょうぶれすよ〜らぁw」
う〜ん。完璧に酔ってるみたい。
「ゆかちゃん、のっちはしばらく放っといた方が良いかも。」
「うん、なんかそんな気がする…。」
「ふふ。じゃあ、ゆかちゃん先にお風呂入ってきたら?あたし片付けしとくから。」
「ん、分かった。そいじゃ、お皿だけ持っていくよ。」
「うん、ありがと。」
ゆかちゃんと二人でお皿を流しに持ってきて、テーブルの上を片付ける。
「ヨシっと。それじゃ、先にいってくるね。」
ゆかちゃんを見送ってあたしは洗い物の前に、水を入れたコップをテーブルに置く。
「のっち?お水、ココに置いておくからね?」
「う。ありがとぉぅ。」
相変わらず楽しそうにヘラヘラと笑っている。
何考えてるんだろう?
まぁ、吐きそうとかじゃないなら良いかぁ。
あたしが洗い物を始めてしばらくすると、いつもみたいに後ろから抱き付いてくる人物。
またゆかちゃんだな?
でも、お風呂上がるの早いような…。
それに、あたしのお腹に回された手にはコップがあって。
「ゆかちゃん、のっちのお水飲んじゃったの?」
その質問に返ってきた声はゆかちゃんじゃなくて…。
「ぁ、お水ありがとw」
のっちの声と共に、流しにトンと置かれたコップ。
え?のっち?
そう思った途端に、あたしの心臓が一度大きく跳ねて、手元が滑りそうになる。
あ、れ?なに、今の?
なんか、変だ。
「ごめん、のっち。今洗い中だから。」
のっちに離れてもらおうとそう言うけど、のっちは気にせずにあたしの肩に頭をもたれてくる。
「まだ、酔ってるの?」
「んん?ん〜…良く分かんなぃ。でもまだ、ふわふわして気分が良いから、たぶん酔ってるw」
顔を上げてまた、へらっと笑ってくる。
…やっぱり変だ。
妙にドキドキする。
これじゃあ、まるで…。
「あ〜ちゃん…。」
あたしの耳元に顔を寄せるようにして、のっちの抱きしめる力が少しだけ強くなって。
「あ〜ちゃん、大好き…。」
優しく響くのっちの声が、胸の奥まで入ってきて心に触れる。
洗い物をしていたあたしの動きが、完璧に止まってしまった。
すすぐ為に出した水の流れる音だけが響く。
のっちはあたしの気持ちを知っているから、答えが欲しいわけじゃないと思う。
きっと、気分が良くて言いたくなったとか、その程度だと思う。
あたしだって、彼を好きな気持ちに変わりはない。
なのに…。
「あwやばぁいw」
いつもののっちの声でハッとして、また洗い物の泡を落としだす。
「どうしたの?」
「これだとまたゆかちゃんに『あ〜ちゃんから離れろ』って怒られるよぉ。」
あははって笑ってあたしから離れるのっち。
「ちゅうことで、あたし向こう戻っとくわ。」
振り返らずにいたけど、後ろから「おっとw」なんて言いながら、ふらついているみたいで大丈夫かな?
……。
あたし…。
すすぎ終った水を止めて、あたしもリビングへ戻る。
のっちは床に胡座をかいて、ソファーを背におっ掛かって寝ていた。
あたしはのっちと向かい合って、その前にぺたっと座り。
そのまま、のっちの寝顔を眺める。
『あ〜ちゃん、大好き…。』
さっきののっちの声が耳から離れない。
そして、胸がギュッとなる…。
「はぁ…。」
変なんじゃない。
この感情を
あたしは知っている
知ってるよ
でも、いつから?
彼を
想う時と同じなんて…
あたしは洋服の上から、胸元の指輪を軽く握って。
反対の手でそっと、一度だけのっちの頬を撫でる。
のっちは『友達』。
やっと、さっきそう伝えたばかりなのに。
彼を『好き』な気持ちのまま
あたしはのっちを
『好き』になってしまった…
でもこんな…
こんなのっ
良い、訳、ないよ…
—つづく—
最終更新:2009年08月01日 22:42