言葉が溶けだす瞬間を見ただろうか。
言っても伝わることなんて限られてる。
この気持ちに、というか思考と行動に、愛だ恋だと名前がついたところで、変わるものなんかなにひとつない。
そんなこと理解してるから、決着がついてるから、せがまれても口にすることなんかあまりなかったのに。
のっちがゆかの中に侵入した。彼女の身体の一部が、まるでするりと飲み込まれた。
それに押し出されるように、好きだ、なんて口走ったら。
のっちはにやついた。動かす指は、ゆかの身体のゆかの知らないところへたどり着く。
それ以外では表しようがなかったから、言葉は仕方なくなによりも強かった、まるで鉄のように。
なのにその鉄はどろりと溶けて、のっちの中へ下ってった。言葉が、溶けた。瞬間、そう理解した。
この不思議な、今までに味わったことのないような感じは、そうとしか形容ができなかった。
言葉が溶けて、ゆかの身体から力が抜けたころ。
どさり、とのっちがゆかに覆いかぶさって、それから動かなくなった。
飲み込まれた鉄は彼女の中で固まって、誰も見えない重りになった。
耳元で幸せそうな笑い声が聞こえる。愛しい背中に手をまわす。
生涯で一度、言葉が心を超えたとき。
end
最終更新:2009年08月01日 22:53