やりたかったことが、現在進行形ですべて現実になっている今。
あたしの隣にいつもゆかちゃんとのっちがいることを時々疑問に思うときもある。
でもその疑問は瞬間にして当然のことと化す。
きっかけは、あたし。
あまり人前に立つことが好きじゃないゆかちゃんと、
人と関わるのが苦手なのっちをこのユニットに誘い込んだのはあたしだ。
そして事務所もあたしに自己プロデュースを求めた。
このユニットの方向性とか、デフォルメしたキャラ作り。
セットリストもあたしが最初に考えて、後で二人と修正を加えていく。
あたしがきっかけで作り上げたユニットだから。
あたしが責任を持つのは当然だと思っていた。
だから苦でも何でもなくて、逆にやり甲斐ぐらいに感じていた。
だけど有名になるにつれて、あたしだけではどうしようもない大きな力があたし達を支配するようになった。
このユニットの存在が一体あたしにとって何であるのか。
余りにも大きくなりすぎた存在に、不安ばかり感じてしまう。
あたしにとってここが居場所だから、誰にも取られたくないの。
あたしはその不安とばかり戦っている。
そのうち、あたしを不安にさせることが他にもできた。
ゆかちゃんだった。
ゆかちゃんがあたしを避けるようになったのは気のせいじゃない。
ゆかちゃんは何かに悩んでいて、しかもその原因はあたしに違いない。
今までなら。
きっと有名になる前までなら、あたしはちゃっちゃと本人に問いただしていただろう。
でも今は、一度に二つの大きな不安と戦えるほどの力がない。
「あ〜ちゃんが溜め息なんて珍しいね」
のっちの指摘で初めて自分が溜め息をついていたことに気づく。
「え?今溜め息ついてた?」
「うん。ついとったよ」
「うーわ、最悪じゃ…」
「溜め息の原因は…ゆかちゃん?」
のっちはやっぱりあたしが困っていると、必ず傍に来てくれる。
「ゆかちゃんも色々あるんだって、きっと。
あんまり人と話したくない気分なんじゃないの?」
「色々って何なんよ」
「え…っと、まぁ、色々は色々だよ…プライベートな問題?みたいな」
「…のっちに聞いたあ〜ちゃんが間違いだったわ」
のっちはあたしが思い詰めると、そんなことはくだらないと良い意味でごまかしてくれる。
ありがと、のっち。
でもね、このことはごまかして済むことじゃない。
このユニットはあたし達の関係性で成り立っている。
そしてその関係を修復するのはあたしの役目。
方針も売り方も何もかも今ではあたしが決めることはできないけど、
こういう三人の関係を保ち続ける役目は事務所がどうこう言ったって果たせる訳ない。
あたししか、この役目を果たせない。
だって、あたしは。
このユニットで、あ〜ちゃんは。
あ〜ちゃんは、コントローラー。
つづく
最終更新:2009年08月01日 22:57