「どこもかしこも、カップルばっかだね」
「ほうじゃね〜」
「なんでクリスマスなのに、うちらは働いてるんでしょ?」
「しょうがないじゃろ?ケーキ屋さんでバイトしとるんじゃからw」
今日はクリスマス。
街は幸せそうなカップルが溢れている。
「きっと今恋人がいる人達って、うちらみたいにバイトしてる人に自慢したいんだろうね」
「自慢?」
「そうよ!!『あたしは彼氏とクリスマス過ごすけど、あんたたちはせいぜいケーキ売ってなww』って!!」
「えー?ゆかちゃん・・・それはいくらなんでも、ひがみ過ぎじゃろw?それに、また新しい彼氏出来たんじゃなかったけ?」
「うーん。ためしに付き合ってあげてるけど、そいつ・・・すんげー、つまんないの」
「そうなん?」
「そうなんよ。ちょー、つまんなくて一緒にいても退屈すぎて、いつも眠くなっちゃうのw」
「ふーん。そうなんだw」
「あ〜ちゃんの彼氏はどんな人?」
「えぇ!?彼氏なんていないよ!!」
「え?そうなん?だって、最近あ〜ちゃん一段と可愛くなってるから、てっきり彼氏でも出来たかと思ったんだけど?違うの?」
「違うよ〜。もう、ゆかちゃん早とちりなんだから」
「じゃ、彼氏はいなくても、恋はしとるじゃろ?」
「えっ・・・」
「あっ!!図星?」
ニヤリと笑うゆかちゃん。
「相手は、どんな人なん?」
「こ、恋なんてしとらん!!」
あたしは全力で否定。
本当はしてるけど、相手を悟られたくない。
「あ〜ちゃんは純粋だから、コロっと悪い奴に騙されそうで、ゆかはそれだけが心配なんだよw」
「なにそれ?ゆかちゃん心配しすぎだよww」
笑って誤魔化したけど、あたしの恋の相手は悪い奴なのかな?
のっちはチャラいけど、悪い奴じゃないよね?
それに最近は夜遊びしなくなったし。
このままのっちの事、好きなままで平気だよね?
「あ〜ちゃん♪」
クソ忙しい時間帯にすごく楽しそうな声があたしを呼んだ。
目の前にはなぜか、のっち。
「えっ?どうして来たん?」
「いや〜、近くを通りかかったもんだから寄ってみたのよ」
「なんで来たんよ!!来ちゃダメって前に言ったじゃろ!!」
「あっ?怒った?ごめんね・・・」
「てか、なんでここの場所知っとるん?あ〜ちゃん、教えてないけぇ」
「うん。あ〜ちゃん教えてくれんかったから、あ〜ちゃんの友達に訊いたんよwだって、今日はクリスマスでしょ?特別な日じゃん?あ〜ちゃんと一緒にいたいじゃん?」
「はぁぁ!?な、なに言っとるん!!」
のっちの言っている事が冗談なのか本音なのかわからない。
その言葉を素直に喜んでいいのかわからない。
「バイト何時まで?終わるまで待ってるよ」
「待たんでええよ!!早く帰って」
ほんと、早く帰って。
そうしないと、ゆかちゃんにのっちの存在が知られちゃう。
「うー・・・わかった。先帰るから、一緒に夜ご飯は食べようよ・・・」
まるで飼い主に怒られた犬みたいにシュンとなるのっち。
「・・・わかったけぇ。8時には帰るから。待ってて」
「うん!!」
今度は飼い主に褒められて尻尾を振ってる犬みたいに嬉しそう。
なんだかんだで結局バイトが終わったのが、予定の8時より1時間遅い9時になってしまった。
ヤバイ、1時間も待たせちゃってるよ。
のっち、怒ってるかな・・・。
あたしは売れ残りのクリスマスケーキを持って、急いで自分のアパートまで帰る。
「ただいま・・・」
「あっ!!おっかえりーーー!!!」
ドアを開けるとのっちが出迎えてくれた。
「あ!!それ、ケーキ!?」
「うん。売れ残りのだけど・・・」
「うはwちょー、嬉しいんですけど。後で食べていい?」
「うん。あと・・・遅れてごめんね」
「ううん。あたし待つのは苦じゃないから、全然平気だよwてか、素直に謝るあ〜ちゃんってなんか新鮮ww」
「アホ・・・」
「うはwツンあ〜ちゃんキター!!ぎゃはは」
あたしたちはのっちが用意してくれた晩御飯を一緒に食べた。
のっちの料理は意外とおいしかった。
「今日さ、クリスマスじゃん?あ〜ちゃん、ここであたしとケーキ食べてていいの?」
ケーキをフォークでつつきながらのっちが訊いてきた。
「はっ?どういう事?」
え?なに?ケーキ食べちゃダメなの?
「あ〜ちゃんって付き合ってる人いないの?」
「・・・いないよ」
なんで、急にそんな事訊いてくるの?
「ふーん。でもモテるっしょ?」
「そんなん、知らんけぇ」
なんで、そんなニヤニヤして訊いてくるの?
「好きな奴、いないの?」
「・・・いるよ」
なんで、訊くの・・・。
なんで、あたしも素直に答えちゃうの・・・。
「へー、どんな奴?」
「・・・なに考えてるのかわからん人」
「えー?そんな奴が好きなの?あ〜ちゃん、変わってるねw」
そうだよ。
のっちに言われなくても変わってるよ。
てか、あんたの事なんじゃけど。
「そいつ、良い奴?」
「悪い人じゃないと思う・・・けど、チャラい」
「チャラいって、ダメじゃんw。サイテーな奴でしょ!?あ〜ちゃん、そんな奴やめなよ。コロっと騙されちゃうよ。絶対傷つくよ・・・」
「そんなん・・・のっちに言われたくないけぇ・・・」
「あ・・・ごめん。だってさ、あ〜ちゃんにはちゃんとした人と付き合ってほしいからさ・・・」
なんで?
ほんま、意味分からん。
この前も言ってたけど、ちゃんとした人って誰よ?
あたしはのっちの事好きでいちゃいけないの?
なんで、クリスマスなのにのっちはあたしと一緒にいたいと思ったの?
のっちなら嫌ってほど、色んな人からの誘いがあるはずじゃない?
なんで、あたしを選んだの?
一緒に暮らしてるから?
そんな単純な理由なの?
どうなの?のっち・・・。
訊きたいけど、訊けないよ。
「もー、あ〜ちゃんの話題はおしまいじゃけぇ。ケーキも食べたしお風呂入れてこよっと!!」
あたしはこれ以上この話をしたくないから、席を外した。
のっちはそんなあたしをポカンと見上げてる。
ピンポーン・・・。
クリスマスが終わる2時間前にチャイムが鳴った。
こんな時間に誰?と思いつつ、覗き穴から外を見ると、そこには・・・。
なぜか、ゆかちゃん。
最悪だ。
よりにもよってクリスマスに、ゆかちゃんとのっちを会わせるはめになるなんて、思ってもみなかった。
あぁ・・・ゆかちゃんの辛い姿は見たくなかったのに・・・。
この時、扉を開けなければ少なくとも、あたしはクリスマスに泣かずにすんだかもしれない。
何故ならそれは辛い目に合ったのは、ゆかちゃんじゃなくてあたしだったから。
本気で人を好きになると、その分辛くなるなんて、その時初めて知ったの。
3年経った今、振り返るとその辛さなんて大したことなかったよ。
愛した人が突然目の前から消えた辛さの方が・・・何倍も何十倍も辛いことがわかったから。
最終更新:2009年08月22日 21:04