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目を閉じて横たわる彼女は、本当に綺麗だと思う。
電気を全て消した寝室。呼吸音だけが聞こえる、空間。
その空間にさっきから断続的に降ってくる、光。
それはカーテンの隙間から洩れていて、カーテンが揺れるのと一緒にゆらゆらしながら、ベッドから少し離れた所に座る私と彼女を交互に照らす。
やけに明るい、なぁ。
なんてぼんやりとその光を辿ってみたら。






その先には、また綺麗な光を放つ、瞳、があった。






「何で伝えんの?」
ため息と共に届いたあの子の声。
無機質で甘い声の中には、心配性の色が混ざっていた。
「あ〜ちゃん、何で気付かないんよ」
いつも近くに居って。
いつも見てくれているのは誰なん?






「…あ〜ちゃん?」
「っ!?」
ギシリ、と不意に上がった音に、自分でも過剰だと思う程に反応していた。
静かな呼吸音だけが広がっていた空間に、彼女の低めの声と自分自身の早い鼓動の音が混ざって聞こえた。
「何で起きとるん…?寝とったんじゃないの?」
「ああ…喉渇いたけぇ、ちょっと水飲んで休んでたんよ」
明日も早いよ〜、なんてまだ眠気をまとった声で言う彼女は、いつもより垂れ目で優しく私を見ている。
さっきまで月を見ていたせいか目が暗闇に慣れてないけど、それでも彼女の右手が私に「おいで」ってしているのが見えた。
「ねよ?」
「…うん」
さっきよりも緩くなった口調に引かれるように、そっと。
伸ばされた手に、手を伸ばした。






ねぇ。
二人とも、さ。
もう、気付いとるんじゃろ?



「いざよい、かなぁ?」
後ろから聞こえた声につられてまた、光の先を見た。
まんまるい、形。
「いざよい?」
「十六夜。十五夜お月さん、って言うけど、ほんとはその次の日がいちばんまんまるいお月さんなんだって」
今日だったっけなぁ、なんて。
ふわぁ…って欠伸の音。
それからまた何かむにゃむにゃ聞こえた後、それはすぐに寝息に変わった。
私のお腹に力無く回してくれている腕。
もう一つの腕は枕になって、全身で私を包んでくれている。
背中に感じる体温と毛布の温度と月の光から感じる熱みたいなものに包まれて、幸せだなぁ、なんてふと思う。
…思う、けど。






…私たちは。






「…怖いんよ」
小さく呟いた言葉はあの子にちゃんと届いた。
「そう言ってくれてもね、怖いんよ」
今でも幸せだと思えてるから。
それでもし、進んだ時、って考えたら。
あなたは「大丈夫だ」って言ってくれるけど、それさえも確かなものではないでしょう?
それに。






誰、が、どこ、で。
どう、見ているか、わからんけぇ…。






やけに綺麗な、形。
それは私を抱きしめてくれている彼女とは全く違うもの。
その綺麗な形に少しずつ、雲の影が宿って。
雲の切れ間から、また月の光が現れる。






その前にシャッと、大きく音を立ててカーテンを閉めた。
月の光を、全て遮った。






その形が、現れる前に。
月の光が、光る瞳に見える前に。






END






最終更新:2009年08月22日 21:11